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本稿は,斎藤憲「数学文献とアリストテレス」『アリストテレス全集12』所収の月報,Reviel Netz,The Shaping Deduction in Greek Mathematics, をもとに書いたものです. 0. 私たちはそもそも「オリジナル」を読んでいるのか? (西洋)古典に対して,「原典など読まなくても,翻訳を読めば良い」 「原典を読まなければ,読んだとは言えない」という意見が鋭く対立する場合があるようです.ここでは西洋古典の中でも
0.序 古代ギリシャ人は,現代の私たちが「科学」と呼んでいるものを考えだしました.ここでは,数学にスポットを当て,二千年以上前の数学に対して,今さらどのようなことを研究しているのかということを紹介したいと思います. 数学と,それ以外の科学の大きな違いは,古代の数学においても真であるとされた命題は,基本的に現代でも真であるということです.具体的にいえば,紀元前300年頃に書かれたとされる(※年代には異説があります),エウクレイデス(ユークリッドは英語名)『原論』第Ⅰ巻に収め
本稿はアルキメデス『放物線の求積』における放物線の性質の補足説明のために用意したものです.これだけ読んでも,(多分)一部の方しか楽しめません.古代と現代の曲線の生成についての認識の違いを感じることができると思います. 序. アルキメデスは,放物線の軸と径の長さの比例関係は,失われた『円錐曲線原論』で証明されているといいます.現代的な視点では(原点を頂点とする)放物線はy=ax²(もしくは y²=px)で定義されますので,軸(y)と径(x)の比例関係が証明を必要とすると
序. 「円の正方形化」という言葉をご存じの方はいるでしょうか? 古代ギリシャでは,円と等しい面積の正方形を作図する問題が研究されていました.そしてその問題は曲線や曲面で囲まれた図形の面積や体積に等しい直線図形を作図する問題に発展しました.現在,それらの取り組みは「求積問題」と呼ばれています. 本稿では,古代ギリシャでの求積における最初の大きな成果としての,アルキメデスによる放物線の求積を,世界でもっとも分かりやすく,そして正確にお伝えします! もう一度いいます「世