病院に通わせてもらえない小学生

小学生の頃、インフルエンザの予防注射以外で
病院に行った記憶がない。

風邪をひいても高熱を出しても
大人用の薬を割って飲まされていた。

小さいうちは錠剤が苦手で
なぜ飲み込まないんだ!と母に怒鳴られ
泣きながら口の中で溶かして飲んだ。

6年生の夏休みには、旅行先のアクティビティで
転んで派手に右足首を捻挫した。

右足が使えずうまく歩けなくなったが、
歩けない方が受験勉強に集中するのにちょうどいい、と
病院には行かせてもらえなかった。

父は「パパが治すから」と言って
病院の代わりに庭で歩く練習をさせられた。

腫れた足首が痛くてたまらなくて、
イジメをうけて不登校気味だった学校に、
この時ばかりは早く行きたくなった。

保健室の先生に相談したいと思ったのだ。


20代になってから、父に
なぜ病院に行かせてもらえなかったか聞いた。

「母が難病になって、お金がなかったから」
と言っていた。


そうだろうか。

私は私立の小学校に通っていたし
父は大企業で働いていた。

母は元々専業主婦で収入はなかった。
難病の治療はできることも少なく家で寝ているだけで
治療費は国から補助が得られるようだった。

家のローンはあれど
祖父母宅に居候していて家賃はタダだった。

年に一度引くか引かないかくらいの風邪や
捻挫で病院に行くくらいのお金がないような
経済状況には思えなかった。

本当の理由がなにか知らない。

私の右足首は今も曲がったままだ。

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