本が読めるという幸福
日々、何らかの文字を読む。それがどんな文章であれ、文字を読まない日はおそらくない。Twitter、メール、LINE、ニュース、小説、教科書…etc
説明書から賞味・消費期限まで、あらゆるところに文字はある。
当たり前すぎて気がつかないが、文字の読み書きができるというのは特別なことだ。
日本の識字率は長らく調査されていない。
ほぼ100%だと思い込んでいたが、在留外国人や不登校の増加、家族の介護で十分な学習時間を取ることができない子供、それに識字障害、何かの理由により読み書きを学べなかった人たちもいるから、思った以上に低いかもしれない。
とはいっても、おそらく貧困・紛争地域と比べれば、日本の識字率はまだ良い方ではないかと予測される。
言語学習の4技能のうち、聞く・話すは自然に身につけられるものの、読む・書くは教育によって成し遂げられるということを知ったのは、ある記事によってだった。
アメリカの刑務所で英語の読み書きを教えることになった日本人女性の記事だった。
非英語ネイティブスピーカー(以下ネイティブ)の彼女が、なぜ英語ネイティブに英語を教えられるのか。
その授業を受ける受刑者は、貧困のため満足に教育が受けられなかった人たちだそうだ。
つまり受刑者たちは本を読むことも、手紙を書くこともできない。必要な情報にアクセスができない。
今の時代なら、スマホを向かって話しかければそれはたちまち文字となって現れるが、それを校正することさえ、彼ら・彼女らにはできないのだ。
そうした人たちは当然きちんとした職業に就くことはできない。
頭の良い悪人に捨て駒として利用され、悪に手を染める。
文字の読み書きができない彼ら・彼女らの住む世界はどんなだろうか。
美しい文章に触れ、頭の中に情景が浮かび、その情景に自分が入り込んで平安貴族になることも、フランス人になることも、狼や妖精や魔法使いと会話することも彼ら・彼女らにはできないのだ。
貧困や戦争・紛争のせいで教育を受けることができない人たちがこの世界にはたくさんいる。
それは、単純に将来の選択肢を狭めるだけでなく、わずか数百円で買える日常のささやかな喜びさえも享受できない。
本を読む度に、本が読めることの幸せを噛みしめる。
1人でも多くの子どもたちが読み書きを学ぶことができるよう、願ってやまない。
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