雨の日のランニングは、自分を見つめ直す絶好の機会
10月末。杉並区夜。雨がふりそぼる中、僕の呼吸音が静かに住宅街に響きます。
仕事から帰宅し、妻の美味しいご飯を頂き、その後に着替えて家を出発する。
「面倒だ」心底嫌がる自分の心を封じ込め、OnのCloudsurferを履き、家を出たその場から、僕のランニングは始まります。
5kmを25分程です。
最初の1kmが差し当たりの関門です。
距離感はそんなに感じないのですが、「まだ引き返せるんじゃないか」そんなことを弱い僕の心が考えます。
まだ食事が消化しきれていない、明日の朝走れば良いんじゃないか、疲れている時に走ると体に悪いのではないか。
そうやって、自分に対する言い訳が湯水の様に頭の中で溢れ出す。それが最初の1kmという距離です。1kmという敵です。
2km目に入ると、ようやく覚悟が決まります。
それまで頭と心を支配していた言い訳たちを、「考えても仕方ない」そう思う様になります。
しかし未だに「面倒くささ」は消えません。
いつも2km目を走っている時に、いつかのプロジェクトXか何かの番組で見た、
ひたする宮崎駿が「面倒くさい、面倒くさい」言っているシーンを思い出しています。
2kmを完了し、3km目に入ると、
「こんなに頑張ってまだ2km?!」と愕然とします。
しかしそれも束の間、ランニングへの集中力が増すのも大体これくらいです。
3kmに至る直線の道が、このランニングの中でのクライマックスと言うか、僕の中でのPoint of No Returnになるので、
とにかくそこまでひた向きに走ろう。そう自分に言い聞かせます。
「自分の呼吸と街の空気と同化しよう」
そんなことを考えるくらいには、ランニングに集中し始めています。
この時には、もう頭の中には面倒さは消えかけています。
4km目は、五日市街道を真っすぐに走る、最長の直線区間です。
ここの気持ちは日替わりです。
軽やかに走れる日もあれば、延々と直線が続いている感覚に陥る日もあります。
とにかくここを過ぎれば、終わったも同然。
そう考えてひたすら走り抜けます。
5km目は、最終版。
終わりに向けて、気持ち的にはクールダウンを兼ねながら走っています。
終わると、何とも言えない満足感が僕を包み込みます。
ランニングはランニング前から始まっています。
特に雨ランはスタートするまでの闘いがあります。
そのストレスや苦難、自分との闘いに勝利し、勝者にしか味わえない心地の良い疲労感を全身で感じている。
5kmが終わり、家に戻るまでの5分間、一人で、一人きりでこの充実感、快感に身を委ねています。
結局翌日にはまた走るのですが、毎日自分自身と勝負し、勝利する度に心の底からの満足感を味わえるランニングは、自分を見つめ直す大事な時間です。