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海の日は、定期演奏会の日

私は高校時代、オーケストラ部に所属していた。パートはトランペット。学校も部活も創世記だった(設立して3年ほどの高校だった)ので、部活のレベルがすごい高いわけではない。でもわいわいみんなで演奏することは、とても楽しかったことを覚えている。

特に定期演奏会は。毎年海の日に実施している部活内で一番のイベントだ。

1年生にとって初めて部活で経験する大きなイベント、2年生にとって世代交代の節目、そして3年生にとっては引退の節目になる。

大体年明けから少しずつ選曲をして、プログラムを固めていく感じで進めていく。すでに楽器を経験して、かつそのパートの人員が不足している場合は、入部したての新入生もステージに上がる。私がいたトランペットパートも人が少なかったので、入部して何曲かの楽譜を渡されたことを覚えている。

演奏した曲にはいろんな思い出があるけど、特に思い出深かった曲(メインプログラム)をピックアップしようと思う。

1年生:ハーリ・ヤーノシュ(ゴダーイ作曲)

6曲から構成されている組曲。テーマを一言で言うと、退役軍人であるおじいちゃんのホラ吹き話。ナポレオンをやっつけたとか、王女様と恋仲になったとかそういう感じ。

1楽章ごとが短く、かつ曲調が多岐にわたるので、クラシック初心者も聞きやすいと思う。第2楽章は以前テレビの天気番組で使われていることもあるので、メロディを聴いてわかる人もいるかもしれない。個人的に一番好きなのも第2楽章。

一番長くて美しいのは第3楽章。出だしのビオラソロも美しい。けど、ラッパパートは出番がなかったので、この章は丸々お休みしていた。

そして変わった楽器も使われている。ハンガリーの民族楽器である「チェンバロン」。

弦をバチで叩いて鳴らす楽器なのだけど、日本でも演奏できる人が限定されている。ただし偶然にもプロの奏者の方が学校の近くにお住まいだということが判明したため、客演ソリストとして出演していただいた。

ちなみに、この曲は吹奏楽版にアレンジされたバージョンもある。実は別の高校の吹奏楽部に所属している姉が吹奏楽版を演奏するため、音源を準備していた。そのため、実際に吹き始める前に、全体的な曲の流れは吹奏楽版で追うことができた。

オーケストラと吹奏楽版で、同じメロディでも使用している楽器が少しずつ違うので、聞き比べるのも面白い。(ちなみに吹奏楽版だと前出の第3楽章冒頭のソロはオーボエがやっている模様)


2年生:交響曲第9番 新世界(ドボルザーク作曲)

基本的に「動」の曲が集まった交響曲。「静」といえる第2楽章は、「家路」としても有名。(この楽章はトランペットの出番は少ない。。。)なお第3楽章は映画「告白」(湊かなえ原作)の予告編でも使われていたと記憶している。

1年生の定期演奏会直後から、私と同級生のトランペットパートは2人体制になってしまったけど、春になってなんと新入生が4人入ってくれた。そのためうち2人にステージに上がってもらった。トランペットは1stと2ndのみだけど、ひとりだけで1パートを吹くのは心許なかったので、それぞれ2人で吹いた。ちなみに私は2ndだった。

4楽章構成で、トランペットにとってのピークは、第1楽章と第4楽章。特に第4楽章はクライマックスに頑張らなければならず、キツかったことをよく覚えている。(その後のアンコール「威風堂々」も・・・)

3年生:交響曲第8番 イギリス(ドボルザーク作曲)

2年連続のドボルザーク。こちらは割と明るい曲調の曲だった気がする。引退する年の曲だったので、思い出もひとしお。一番出番が多くて、盛り上げる第4楽章が一番好きだ。

受験へ本格的に参入する時期の演奏会だったので、予備校の授業との両立もすごく大変だった。練習中はそこまで気にならなかったけど、演奏会が近づくにつれて、だんだん「ああこのメンバーで演奏することはもうないんだなあ」という気持ちになってくる。特に本番中はその気持ちがピークなってきた。

演奏が終わった後、泣かないぞ、と決めていたけど、この曲と、アンコール曲(スラブ舞曲)を吹き終わると涙が溢れた。

一緒に演奏した仲間との別れと、受験への不安がないまぜになっていた時期たったので、この曲を聞くたびに、ワクワク感と切ない気持ちが蘇ってきてしまうのだ。


#部活の思い出



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