迷い苦しんだ時に読むべし。夏目漱石の「私の個人主義」を紹介。
どうも、宇宙ゴリラです。本日は、小説家だけでなく、講演の名手としても知られる夏目漱石の作品を紹介したいと思います。漱石の講演の多くは、本になっており、多くの人に楽しまれています。とくに有名なのが、今回紹介する「私の個人主義」という作品です。青空文庫で無料で読むこともできますので興味があれば、是非手に取ってみて下さい。
「私の個人主義」の概要
「私の個人主義」は、1914年に学習院大学で学生に向けて行われた講演を文章にしたものです。当時の漱石は「こころ」を執筆した後であり、小説家として円熟していった時期でもあります。構成は前半と後半に分けることができ、前半は講演に至る流れが記されており、後半には講演が記されています。本記事では、前半の講演に至る流れは、カットして後半の講演の内容について要約していきたいと思います。
「私の個人主義」の要約
♢自分の道を切り開く
「他人の後に従って、それに満足し進んでいけるのなら悪くはない(自己に安心と自信がしっかりと付随しているならば)。しかし、そうでないなら、自分の道は、自分で切り開く必要がある。自分の道を切り開くことができないなら、一生不安に付きまとわれることになる。自分の道を切り開くためには、犠牲を払ってで進むべきである」
漱石は当時、西洋の文化を鵜呑みにして、何も考えずに取り入れる風潮を好ましく思っていませんでした。漱石自身も、文学について学んでいましたが、ただ西洋文学の受け売りを聞くだけでは何も得ることができませんでした。そこで、漱石は覚悟を決めてオリジナルの文学論を探求することで不安が消え、自分の進む道を見つけ出すことができたと話しています。
♢権力と金について
「まず、第一に自己の個性の発展をしようとするのであれば、他人の個性も尊重しなければならない。第二に自己の所有している権力を使用するなら、それに附随している義務を心得なければいけない。第三に自己の金力を示すのであれば、それに伴う責任を重んじる必要がある。これらの背後には当然、人格が影響してくる。だから、人格も磨く必要がある」
この講演が行われた時代背景を考えると、個人主義を主張するのはやや危険な行為でした。実際、本文中でも漱石は
何だか個人主義というとちょっと国家主義の反対で、それを打ち壊すように取られますが、そんな理窟の立たない漫然としたものではないのです。
と発言しています。この時代は、国家主義が強く推し進められていた時代であり、相対する個人主義的な考え方は危険とされていました。しかし、漱石が話す「個人主義」は決して危険な思想ではありません。国民一人一人が、他者を尊重し責任を持って生きることの重要性を説いたものなのです。
「私の個人主義」を簡単にまとめると
「他者の後に従うのではなく、自分で道を切り開く必要がある。個性を発展させるためには他者を尊重し、自分も尊重しなければならない。個性が発展し、権力と金を行使できるようになったら、それに伴う責任と義務を全うしよう」
私の個人主義を読んで
面白いと思える作品を読むと、雷に打たれたような衝撃があったりするのですが、「私の個人主義」を読んだときに、そのような衝撃は感じませんでした。しかし、読み終わってしばらく経つと、ゆっくり、漱石の考えと言葉が自分の中にしみ込んでくるような感覚を味わいました。
特に衝撃だったのは、夏目漱石でも、自分の道を切り開くのに苦労したという事実でした。漱石も作中で、「道を切り開き自己本位に至ったのは三十を過ぎてからだった」と発言しており長い期間、自分の道を切り開く辛さを味わったようです。この事実に衝撃を受けるとともに、僕は多大な勇気を貰いました。
僕は今まさに、自分の道を切り開かんと努力しています。それは、漱石の言葉を借りると、空虚さと鈍痛のさなかにいるということです。逃げたしたくなることや、努力をやめたくなることもありますが、この苦しみの先に、自分の道があると思うと、もう少しだけ頑張れそうな気がします。「私の個人主義」は、僕のように今、自分の道を切り開かんとしている人に読んでもらいたい名作です。間違いなく、あなたの人生に良い影響を与えてくれるはずです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。