9月の読書感想文:ぱりぱり/瀧羽麻子先生
この本の『ぱりぱり』というタイトルを見たとき、ぱりぱりって何?!と思って手にとった。
ぱりぱりって聞いたとき、
①チョコのぱりぱりアイス
②寒い冬の朝、水を張ったバケツの表面にできた薄い氷を触ったときの感覚
③何かが壊れていく音
私はこういう印象をもった。
①②はともかくとして、③のようなちょっとネガディブな印象があったが、この本の表紙は淡い黄色でやわらかい絵がのっている温かみのある本だったので、
印象と違ってやさしい本なのかな?どんな本なんだろう?と興味をもった。
そして瀧羽先生は私にとって初読み作家さん。
どんな言葉選びをされるのだろう?
どんな雰囲気の本なんだろう?
わくわく。
◯◯◯
読み終わったとき、
ミルクティーを飲んだときにじんわりとお腹があったかくなるような、優しい気持ちになれた。
読んだあと、よしっ明日も頑張ろうと思えるような、そんな一冊だった。
連続短編集で読みやすいので、あまり本を読まない方にもおすすめ。
全部読み終わったとき、気持ちが明るくなるステキな本だった。
読書が趣味だというと、おすすめの本を聞かれるけど
いつも何て答えよう?と悩んでいたけど
これからはこの本をおすすめしたいなぁと思う。
◯◯◯
この本は、高校生で詩人デビューしたすみれを巡る周囲の人たちのお話だ。
すみれ視点の話は収録されていないけど、それぞれが語るすみれのことで、人物像が浮かび上がる。
そんなところがまず面白いなぁと思った。
特に印象深い話は、第一話のすみれの妹視点の話だ。
すみれは、人の話はあまりちゃんと聞けないけど、自分の気になったものにはとことん集中できるタイプ。
そんな姉をみて妹の桜は、しっかり者になったと自分を語っている。
そこから語られる姉との思い出。
私も姉がいるので、共感できることがたくさんあった。
私の姉もしっかりしてるタイプではない。
のんびりしてて、おっとりしてる。そして人見知り。
姉が一人でレジに行けないから、6才のときから私が代わりに買い物をしてあげていた。
家族で分担する家事も全然しないし。
なんで私ばっかり洗濯物を干さなあかんねんって思ったこともあった。
だけど、そんな姉でも私にとっては尊敬の姉だ。
絵が上手だし、歌もうまい。写真を撮るのも、ちゃんと勉強して素敵な一枚を撮影する。にこにこしてて、年下の子どもや動物によく好かれる。人間関係も良好。
憧れだし越えたい壁。
思春期の頃はよくぶつかっていた。
桜視点の第一話を読んでいると、その頃の気持ちがぶわ〜〜っと思い出された。
それと同時に、私はやっぱり姉が好きなんだなぁと思った。
小学生のころ、一緒に帰った雨上がりの道路がキラキラしていたこと。
中学生のころは同じ部活に入部して、同期から姉が褒められるたび、内心誇らしかった。
高校生のころは、近くのコンビニで駄菓子を買い、一緒に動画を見ることが楽しかった。
私が大学受験をするときは、ずっと励ましてくれた。
大学生になってからは、たまに姉の可愛い服や持ち物をこっそり借りてはバレて怒られた(笑)
一時期姉のアパートに転がり込んだときは、姉が帰ってくるのを今か今かと楽しみにして、ご飯を食べるのが楽しかった。
お姉ちゃんだからこそムカツク。
私のお姉ちゃんだから大好き。
そんな私の気持ちと同じような話がこの本に書かれていて、すごく読んで良かったなぁと思った。
そして、タイトルの『パリパリ』というのはこの家族だけで通じる言葉だ。
私の家でも、この記事で書いたようにそういう言葉があるので、なんだか微笑ましかった。
◯◯○
その他のお話も、とてもよかった!
意識せずとも人と人は影響しあってて、それがいい方向に変わることもあるんだなぁって、
人のつながりっていいなぁと思える本だった。
ちょっと心が疲れたなぁと思ったときに、ぜひ読んでもらいたい一冊だ。