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今夜も2人でぷかぷか浮かびたい。

夏が終わった。
体感的にはまだまだ暑いけど、夜になって虫の声が聞こえてくると秋がきたなぁと思う。

私は今夜、誰かを呼んでいるようにりんりん鳴く虫の声に耳を傾けながら、今年の夏お世話になった道具を片付けていた。

   ○○○

7月。
今日も太陽に起こされてしまった。

我が家はちょうど朝日が入りやすい位置にあるので、夏は暑さと眩しさでアラームより前に起きてしまう。
寝穢い私は、アラームをかけた時間より先に目が覚めると何だか損をした気分になり、
何とか二度寝を試みるが、暑すぎて寝れる気配がしない。

家に唯一ついてるクーラーの部屋までいくと、そこもまた太陽の光がさんさんと降り注いでいるので、ここでもまた寝ることなんてできず諦めて1日を開始する。

夜は夜で扇風機だけで過ごすので、だいたい4時くらいから寝付きが悪くなり、ようやく深く眠れそうになると、もう太陽が邪魔してくる時間になるのだ。

この状況、何とかしてほしい。

眩しいのは最悪、仕方ない。
冬の暗い雰囲気よりかは、光がある夏の方が好きだし、ベランダにいる植物たちに光は必要だ。

涼しく、快適に寝られるようになればいい。

ただクーラーをガンガンに冷やすと、その分ブランケットにくるまってしまい、朝方に暑くなるし、扇風機は風がずっと当たっていると、なんだかその部分だけ調子が悪くなってる感じがする。

理想としては、ひんや~りした環境ですやすやと眠りたい。

私は、そのためにニトリのNクールがほしいと思っていた。
今の布団は、太陽が顔をだすころ、体と面している部分に熱がこもってじんわり暑くて不快だったからだ。
Nクールや、夏用のカバーであればそれが抑えられるだろう。

ちょうど、5のつく日か0のつく日が、もうすぐくるタイミングだった。
楽天カードを持つ夫は、このタイミングにお願いすると買ってくれることが多い。(※)

※楽天ポイント命の楽天カード民にとって、5か0のつく日に楽天市場での買い物をすると、いつもよりポイントがたくさんつくので、絶好のお買い物日なのである。

太陽の陽がさんさんと射し込む部屋で、ご機嫌にスマホを触る夫に近づく。
(夫にとって、夏は体を黒くできる大切な季節なので、太陽は親友なのだ!)

お願いをすると予想通り、あっさり買ってくれた。
これで快適に寝ることができる。
やったー!と思いながら、仕事に出かけた。

予想外のものが寝室にいた 


仕事終わり、LINEをチェックすると、夫から寝室みてみて♪と届いていた。
これで開放される!とご機嫌で帰宅をする。

寝室を覗くと、
なっ…なんだこれと思わず声がでた。

布団の上に掛けてあったのは、Nクールじゃなく膨らんだ敷き布団のようなもの。

触ってみると、ぽちゃぽちゃと水の音がする。
とりあえず放置して、夫の帰宅を待った。
帰ってきた夫を捕まえると、まぁとりあえず寝てみと言われ、そろそろと寝転がってみる。

ひんやりしてぷかぷかで気持ちいい!
と、乗った瞬間にハッピーな気持ちになった。

そのマット自体は冷たいものではなさそうだけど、クーラーの冷気を吸収していて、ひんやりしたゼリーの上で寝ているみたいだ。

私の嬉しそうな顔を見て、満足げな顔をしている夫だけど、私は夫が想像しているのとは別の理由で喜んでいた。

眠れない夜、ラッコになった気持ちで目をつぶっていたあの時の私


22歳、ひとり暮らしを始めた。

ひとり暮らしに不満はなかったけど、
寝る時間になって布団に入ると、明日への緊張や夜の怖さに眠れなくなる日があった。

明日は会議があるなー。あの資料、もうすぐ締め切りだっけ。あの子の誕生日もうすぐやん、プレゼント何しよう。玄関の鍵締まってなくて誰か入ってきたらどうしよう・・・。

色々な考えが頭を駆け巡り、早く、早く、夢の世界に行きたいと願えど叶わない。

そういうときは、ラッコになったつもりになる。


私はラッコです。ぷかぷか浮くだけです。
ラッコなのでニンゲンのことは答えられません。
たまに貝を食べます。ほんとはお寿司が食べたいです。太陽がぽかぽかして、水の温度がちょうどよくて、サイコーで、眠たくなってきて・・・

という感じで、海のうえでぼんやりしてるところを想像すると、なんとか眠れるのだ。

ラッコになるときに思い出す海


私にとってラッコになることは、ひとりで生きる自分を守るための避難地帯だった。

そんなこと、別に夫には言ってなかったけど
なんだかあの時の自分を分かってもらえたようで、嬉しかったのだ。

  ○○○

水をパンパンに入れることもできるけど、満タンにすると重たくて運べないので、程よく水を入れる。

すると、寝返りをうったとき、耳元で水が動く音がする。

ぽちゃぽちゃと音がする。たまに大きく寝返りをうつと波の音も大きくなる。

1LDKの部屋が、広くて大きな海に変わる。

今夜もまた、ラッコになろう。
自分を守るためじゃなく、楽しく眠るために。
そして明日の朝、日焼けにいそしむ彼に
思いっきりの笑顔でおはようと言おう。

そんなこと考える暇もないくらいに、私は夢の世界に旅立った。










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