ちびたの本棚 読書記録「ホットプレートと震度四」井上荒野
調理道具にまつわる幾篇かの物語が綴られている。どのエピソードも著者の「食」への思いが伝わってくる。
食べることは人の気持ちに直に作用する不思議なことだ。好きなものや美味しいものは気持ちを慰めてくれる。それがほんの少しの量だとしても。いわゆる「ご馳走」を食べれば胃も心も満足するかというと、必ずしもそうではない。
この小説では人と人との絶妙な距離も細やかに描かれている。相手のことを思いやるのであれば、物理的な距離だけではなく、あえて時間という間をおくことが大切だと。
以前、井上荒野さんは「肉の会」という集まりに参加していたと、どこかで読んだ記憶がある。その会の名前はうろ覚えだが、肉好きが旺盛に食べて語り合う集いだと記憶している。
その頃から、井上荒野さんの食べることへの意欲と姿勢が並々ならぬものだなあ、と感じていた。
そういえば、文庫版の「荒野の胃袋」をまだ読んでなかったかも。読まなくちゃ!