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小説と詩を嗜んでみた。

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駄文ですが、お暇な時に。
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#毎週ショートショートnote

親切な暗殺。

親切な暗殺。

スナイパーとして、オレは腕を磨いてきた。
何度も訓練に訓練を重ねた。
動く標的を狙う。
これはなかなか至難の業。
着地の瞬間を射抜くしかない。
動きを見極めるんだ。
ヤツはかなりの手練。
臆病者で察しがいい。
少しの殺気でも気取られてしまう。

気配も殺気も殺すんだ。
無。
無になれ。
ヤツをぶち抜くことだけを考えろ。
必ずヤツは現れる。
動きを読め。ヤツの気配を捉えるんだ。

ーー来た。

さす

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忍者Loveletter。

忍者Loveletter。

放課後。
校舎の物陰からひたすらに視線を送る。視線は熱を帯びてサッカーをしているとある男子へと刺さる。

ーー誰かが見てる気がするってわかるはず!視線ってそういうものだもの!

パシッ。
「いたっ」
不意に頭を叩かれ振り向くと友達のメグミが居た。
「気付かれて振り向かれても、あんた隠れて逃げるでしょ?」
と、図星を容赦なくぶつけてくる親友は続けてこう言った。
「Loveletter書いてみたら?」

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数学ダージリン。

数学ダージリン。

暗い空に紫煙が舞う。
男の仕事は完璧で正確無比だった。
廃ビルの屋上にて『lucky strike』の煙草を燻らす。
これが男のスイッチでもあった。

上着のポケットから携帯灰皿をスマートに取り出し、煙草を消す。
バッグより組立式のライフルを取り出しスピーディーに組む。

ターゲットは向かいのビルの下方にあるオフィスの社長室。
その奥にある高価な花瓶だ。
男は殺し屋では無い。
依頼で人を殺めること

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秋の空、時計。

秋の空、時計。

「ふー」
吐く息と共に宙を舞う紫煙。
ーー女心と秋の空か……。

普通に話していたつもりだったが、急激に気分を害した御様子で彼女は帰って行った。
公園通りに取り残されたオレは、ベンチに座り仕方なく煙草を燻らせる。
携帯灰皿に灰を落として、
オレのテンションも地に落とした。

ーー何がいけなかったんだ?

公園通りを歩いてる最中、突然。
『気付かないんだね!もういい!』

ーーなんかマズイ事でも言っ

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母の言葉。

母の言葉。

「ねーねー!今度の遠足ねー」
台所に立つ母のエプロンに掴みかかり、振り回しながら言う息子。

「なぁに?遠足?何処に行くの?」
「遊園地か動物園、どっちか選べるんだってー!」
料理の手を止めて息子の目線に腰を落とす母。
「どっちに行きたいの?」
「遊園地!!!」
「遠足って何時だっけ?」
「9月11日だよー」
母は目を閉じなにか思い耽るような素振り。
「なるべく動物園にしよっか♡」
優しく諭すよう

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