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お気に入りの庭を作る夢を忘れてはいない~読書から輝きだす小さな世界~
子どものころに住んでいた家は、家の四方が庭に囲まれていた。言い換えると、中庭部分が家部分のようなイメージの作りだった。家から見て前庭にあたる部分には、春から夏にかけてすずらんがさき、香りをかいでは一人楽しんだものである。自分の指先ほどの白い小さな花は、命の恵みをも教えてくれたように感じる。
庭のツユクサは、私に初めて「青」の美しさを教えてくれた。ビニール袋の中に入れた水の中で、青に染まっていく様は、手につかめそうでつかめない世界の入り口があることを教えてくれたようにも思う。
家の中にも植物がたくさんあった。オジギソウや、サボテン、アロエ。心を通わす相手の一つ一つが今になっては、輝かしい思い出である。
思い出のその庭で過ごす最後の日のこと。たまたま学校でもらったお花の種を、うっかり落としてしまったことを今でも私は思い出す。
でも、それが運命のようなものであることを、幼心に感じたのである。なぜだかは、今でもわからないが。
数年たって、かつて住んでいた家に行ってみたいと思ったのも、その花の種がコスモスのように伸びて、自分の背丈くらいになっているんじゃないかと思ったからだった。
それくらい私にとって「庭」というのは、あこがれであり、命の相棒であり、新たな発見の場所なのである。
そんな幼い時の思い出を懐古した一作がこちらである。
庭が舞台のお話というと、大好きなバーネットの秘密の花園を思い出す。そんな淡い優しい気持ちに包まれながらこの本を手にした。主人公のとわ後に十和子は、目が見えない。母からのいわゆる今で言うネグレクトを受けて育つ。波瀾万丈な人生のエッセイのような一冊のようにも感じるし、後半の盲導犬ジョイとの幸せに満ち足りた日常の回顧録にも感じる一冊である。お話の終盤で十和子は、30歳になる。一日一日を生きていくことの大切さを私たちに伝えてくれる。夜空に新しい星座を自分自身で生み出す、そんな人生を私も送りたいと感じた。
大好きなバーネットの「秘密の花園」で感じたやさしさを思い出しながら、読み進めた。
一日一日を過ごしていく中で、十和子のように「新しい星座」を自分で生み出していくような価値観を持ってみたい、と改めて思ったのである。
きっと庭は、その星座を作り出すような場所なのだと思う。自分の手で作り出して、輝きを与え、名前を付けるような気持ちをもって、慈しむ。
自分の生活を振り返ると、初めての庭での植物との出合いから、多くの植物を育ててきた。
食べられるものも多く育てた。じゃがいも、にんじん、レタス、キュウリにトマト。
一mm大の大きさから、マーブルカラーのキンギョソウが育った時には、植物の神秘の世界を感じると同時に、自分だけの「星座」を手にする世界観を感じたのだと、振り返ることができる。
庭。それは私にとって永遠のあこがれの場所である。いつか私だけの庭を自分の手で必ず作り上げたいと思う。
そしてそばには、大好きな本が必ずあるのだと確信している。
庭をテーマに選書をしてみました。
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家守綺譚も思い浮かんだので入れておきます。家の庭のシーンが出てきたように思うのです。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。私だけの庭で夜空に浮かぶ星たちを眺めながら、夏のひとときを過ごせる日が今から、待ち遠しいのです。
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