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シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」

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記事一覧

シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第5回エジプトと冷戦

シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第5回エジプトと冷戦

はじめに

政権を運営していくことになった革命評議会とナセルですが、王政時代の課題は山積したままです。この状況下を脱するためにナセルは冷戦構造を利用し、東西から利益を引き出す外交を展開していきます。しかし、その動きが英仏の逆鱗にふれる事になっていってしまいます。

 当初イギリスは冷戦構造の深まりにつれて、中東への防衛戦略を転換せざるおえなくなっていた。第二次世界大戦で決定的に「大英帝国」は衰退し

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シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第4回 ナセルの覚醒、エジプトの覚醒

シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第4回 ナセルの覚醒、エジプトの覚醒

はじめに

 王政は末期症状を見せており、エジプトには新たな指針が必要とされていました。その選択肢の中には、2011年のエジプト革命で政権を握った「ムスリム同胞団」や共産主義そして汎アラブ主義がありました。当初革命は王政打倒だけを目標にしていましたが、政治の停滞から軍が政権を運営することとなります。その中で頭角を現していた天才ナセルが徐々に力をつけついに大統領になります。これが中東に与えた影響は計

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シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第3回敗戦後のエジプト、王政の末路

シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第3回敗戦後のエジプト、王政の末路

はじめに

中東戦争に敗北したエジプト王国は最早余命いくばくもない状態でした。一方混乱するエジプトを牽引できる政治家や指導者はエジプト政界には存在しませんでした。そのような情勢からついにエジプトは旧態依然とした王政から新たな革命へと脱皮をはたすのです。

エジプト王国   

 この項⽬では、エジプト王国の歴史をエジプトの視点から述べていく。
 エジプト王国の成り⽴ちは 1805 年のムハンマド

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シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第2回 第一次中東戦争とアラブの苦い敗北

シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」第2回 第一次中東戦争とアラブの苦い敗北

はじめに 

 今回は本題の第二次中東戦争の前史的な意味合いで第一次中東戦争を見ていきます。現在のパレスチナ問題の出発点になるこの戦いはアラブ側の敗北で終わります。この戦争が与えた影響はアラブナショナリズムの覚醒のきっかけになったと言ってもいいでしょう。アラブ側の軍隊は腐敗した王政によって貧弱化しており(ヨルダンは除く)その批判が革命へと繋がっていくのです。また、イスラエルにとってこの戦いは国が生

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シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」 第1回 スエズ運河

シリーズ 「アラブナショナリズムとエジプトとスエズ危機」 第1回 スエズ運河

はじめに

 今回連載を始めてみた「シリーズ アラブナショナリズムとスエズ危機」ですが、これは以前自分提供した資料を再編集したものをベースにしています。なぜこれをnoteに公開をし始めた理由は2つあります。

 1つ目は単純に自分が大学生活において中東情勢に深く興味を持ち取り組んでいるのでそのおさらいもかねて掲載をしています。また、そろそろ自分の学んできたことを一度形にして行こうかなと思ったからで

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