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花粉症の対策と養生

国民病とも言える花粉症。日本人における花粉症の有病率は3割とも言われています。
そんな中、花粉症の皆さんに困ったニュースが…
なんと2025年の花粉は過去10年間の平均と比べておよそ1.6倍となる見通しだそうです。
去年の夏が非常に暑かったことにより、今年の花粉は非常に多い予想となっており、花粉症に悩まされている方だけでなく、これまで発症してなかった方も発症する可能性があるため注意が必要です。
そこで今回は、花粉症の原因と対処について解説していきます。
最後の養生だけでも参考になると思うのでぜひご一読ください。


1.花粉症の原因と治療

花粉症は、スギやヒノキなどの花粉が鼻や目の粘膜に付着することで、免疫システムが過剰に反応することによって引き起こされます。
まず体内に侵入してきた花粉を異物と認識することでIge抗体という物質が過剰に作られます。このIge抗体と花粉が結合すると、肥満細胞という細胞からヒスタミンなどのアレルギー誘発物資が分泌され、神経や血管を刺激してアレルギー反応が起こります。
鼻や目の粘膜や血管、神経などを刺激することによりくしゃみや鼻水、鼻詰まり、目の充血、目の痒み、涙などの症状を引き起こします。

西洋医学的な治療としては、花粉症を抑えるためにヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギー物質を抑える抗アレルギー薬が使われます。
例えばアレグラなどの抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが神経や血管に結合するのをブロックすることで、くしゃみや鼻水、目の痒みなどの症状を抑えます。
また、点鼻薬や点眼薬を併用することで炎症を抑えたり血管を収縮させることで、鼻詰まりや痒みを抑えます。


2.中医学的な花粉症の原因

花粉にアレルギー反応があるからといって症状が軽い人から重たい人まで様々です。
中医学的にはその違いは下記のような体質にあると考えます。

(1)肺気虚
五臓の1つである「肺」は、鼻症状と最も関係が深い臓腑です。肺の気が弱ると、バリア機能である衛気が不足することで花粉などの風邪の侵入を許すことになります。
肺気虚タイプの特徴として、アレルギー疾患以外に、声が小さい、動いてもないのに汗をかく、カゼをひきやすい、倦怠感、力のない咳などの症状が見られます。

(2)脾気虚
脾(胃腸)は食べ物を消化して体に必要な気血を生みます。中医学では、脾気が弱って気血を十分に作ることができないと肺気の弱りへと繋がると考えます。アレルギー体質の患者様にお会いするとやはり胃腸が弱っていることが多いと感じます。
脾気虚タイプの特徴として、食欲不振、お腹の張り、軟便・下痢、疲れやすい、舌に歯型がある、苔が厚いなどの症状があります。

(3)腎虚
中医学では、呼吸は肺だけでなく腎によって「納気」されることで成り立っていると考えられます。そのため、腎が弱ることで納気機能が衰えると、吸い込まれた空気は深くまで到達することなく発散されてしまうため、肺と腎が同時に弱っていることがあります。
腎虚タイプの特徴として、足腰の弱りやだるさ、排尿回数が多いまたは少ないなどの症状がみられます。


3.よく使われる漢方薬

(1)玉弊風散(衛益顆粒)
バリア機能を屛風に例えたことが名前の由来となっている代表的な肺気を補う漢方薬です。
バリア機能を強化する生薬である黄耆に加えて、消化管の水はけを良くすることで胃腸を強化する白朮、外邪の侵入を防ぐとともに風邪を発散させる防風の3つの生薬で構成されます。花粉症の症状が出ていない時から予防的に使うことができます。

(2)麗沢通気湯加辛夷
さらさらとした薄い鼻水を伴う急性期から、鼻詰まりが酷くなる慢性期まで用いることができます。薬理実験において、ヒスタミンを抑える働きを持っていることが分かっています。麗沢通気湯加辛夷の中には玉弊風散が含まれており、さらに体を温めながら、湿気を飛ばし、鼻詰まりを解消するような構成になっています。

(3)ホノビエン
余分なものを排出する生薬、鼻詰まりを改善する細辛(サイシン)や辛夷(シンイ)、炎症を緩和する生薬、抗ヒスタミン薬で構成されます。西洋薬と漢方薬を組み合わせた治療のことを中西医結合と言いますが、この商品も西洋薬の即効性と漢方薬による体内のバランスを整える働きにより、それぞれの良さが発揮される商品です。
お客様からは「ホノビエンがないと生きていけない」と仰られることもあるほど人気の商品です。

(4)ホノミビスキン
効能効果に蓄膿症があるように、鼻腔内に留まった鼻汁を排出する働きがあります。鼻詰まりを解消する蒼耳(そうじ)や辛夷(シンイ)といった生薬が含まれます。
鼻炎が続くと副鼻腔炎になりやすい方にお勧めで、ホノビエンと一緒に購入されることが多い商品です。

(5)気上錠
胃内に余分な水分があると目の不調が出る原因になります。胃腸の機能を高めながら余分な水分を排出し、抗炎症作用のある黄連・黄柏・山梔子などの生薬によって目の痒みを抑えます。花粉症の症状が目に出やすい方にお勧めです。


4.花粉症治療におけるポイント

上記の漢方は売れ筋の代表的なものになりますが、実際には体質や気候に合わせて漢方薬を選ぶ必要があります。
特に大事なポイントが気温で、漢方薬は温めるか、冷やすかを見極めることが大前提です。春の花粉症においては、大体気温が18℃を境に寒熱を調節する必要が出てくることが多いのです。
花粉飛散時期の最初の方は良かったのに、途中から調子が悪いという方は気温が上がるにつれて体内で熱が生じている可能性があり、漢方薬を調節する必要があります。
例えばさらさらとした鼻水に使われることで有名な小青竜湯は、暖かくなる頃には効きが悪くなります。ちなみに小青竜湯は長期で飲むべき漢方ではないので、専門家に相談しながら服用することをお勧めします。


5.花粉症を軽くするための養生法

一言に花粉症といっても症状が出る部位や時期などによって対処法も変わってきます。そして根本的には胃腸の弱さや飲食の不摂生が関わることが多いのです。
花粉症に悩まされている方は、薬だけでなく以下の点に気をつけると症状が軽くなるので、ぜひ参考に過ごしてみてください。

(1)味が濃い物を避ける
水分代謝を担う脾胃(胃腸)が弱る原因になり、鼻炎を悪化させることに繋がります。むくみの原因となる甘い物やしょっぱいもの、胃腸の負担になる脂っこいものは控えましょう。また、揚げ物やジャンクフードに含まれるトランス脂肪酸も炎症を悪化させる原因になります。

(2)冷たい物を摂らない
私たちの体の中では、酵素やミトコンドリアが働くことで活動していますが、体温以下では働きが悪くなってしまいます。そのため冷たい物を摂ると消化が上手くできなかったり、冷えた体を温めるのに余分なエネルギーを使うため体を弱らせる原因になります。サラダや生もの、常温の水も体を冷やすので、加熱した料理や体温より暖かい飲み物を召し上がってください。

(3)お酒は控える
お酒は湿熱といって熱を持った余分な水分を溜め込む原因になります。余分な水分は鼻水に、熱は目の痒みの原因になります。またアルコールを代謝する時にアレルギーの原因であるヒスタミンを増やします。お酒を飲んだ次の日に花粉症が悪化したことがある方も多いのではないでしょうか?

(4)お餅に注意
餅はアレルギーの原因となるヒスタミンを多く含みます。また、腹持ちが良いとされますが、それは同時に消化に負担がかかることを意味します。さらに温性の餅米は炎症を助長するため、鼻炎や肌の炎症がある方は控えめにされてください。もち米を使ったおかきや煎餅もこの時期は控える方が花粉症の症状は軽く済みます。

(5)意外と注意が必要なトマト
体にとても良いイメージがあるトマトですが、花粉症の原因となるヒスタミンを多く含み、スギやヒノキの花粉と似たたんぱく質を含むため、花粉症を悪化させる原因になります。特に生は悪化させやすいため、サラダは控えましょう。花粉症の方にトマトの話をすると好んで食べていることがよくあります。


6.まとめ

花粉症に毎年悩まされている方は多いと思いますが、対策としては食生活に気をつけながら、粘膜などを修復するためにしっかりと眠ることが重要です。
それに加えて漢方薬で体を整えるとあまり気にならなくて済んだというお客様がたくさんいらっしゃいます。
漢方薬は体質や気温に合わせて合ったものを選ぶことが最も近道です。ぜひ一度ご相談くださいませ。

国際中医専門員 権藤

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