映画「ブルーアワーにぶっ飛ばす」~なりたい自分になれるのか?の旅
「ブルーアワーにぶっ飛ばす」(2019年)
primeで「もうすぐ見放題が終わります」と上がってきたのでたまたま見たら、予想を超えた心に刺さりまくる映画だった。
夏帆演じる主人公砂田は、都会での仕事生活、結婚生活にかなり荒んでいてキレまくっている。あー、ここからすでに主人公に共感してしまう。
そこに現れる友達がシム・ウンギョン演じる清浦。
「何にもない田舎なんだ、行きたくないんだ」と砂田はキレ気味でありつつも、二人で愛車に乗って茨城の実家への旅へ。
ちょっと運転も怪しいし、日本語上手だけど明らかに韓国人が話すイントネーションの清浦。でもそんな説明ないし…
そして、実家の理解できない父と、耳が遠くなっちゃった?母、引きこもりの兄の挙動不審にますますイライラが募る砂田。さらに、施設に入居している祖母に会いに…
閉塞感の田舎の家、家族に対して自分だけ?がわだかまりと嫌悪が募る砂田、一度出てしまった実家ってこうだよなぁ
でも、シム・ウンギョン演じる清浦は自分を抑えるわけでもなく、家族たちとつながって仲良くなるし、思ったことを素直に言ってもみんなから好かれている。いいなぁ、清浦。
そんなふうに私も出来たらいいのに。(って、きっとみんな思うよね)
その対照的な2人の様子がとてもよく出ていて、夏帆もシム・ウンギョンもうまい。
セリフが刺さりまくった
主人公たちは30歳の設定。そんな年代ははるかに超えた私だが、この刺さりっぷりはいったい何?
止まれないマグロ
のように働き続けたところが砂田と同じだから?
わたしを好きっていう人、あんまり好きじゃない。
ってなんでだろう?恥ずかしながらよくわかる。
で、今どっち?
これはお母さんのセリフで、最後まで見てやっと理解できたんだけど、実は嫌悪していたお母さんこそが砂田のことをそのまま受け入れてくれていたんだね。と気づいてジワる。
スナックのホステスさん曰く。だから笑ってんの?かわいいって言われるかもしんないけど、私それあんま好きじゃない、つーか嫌い。それブスだかんね。癖になるから気ぃつけな。
若いころ、これ言われたら砂田と同じで撃沈だったな…
一生懸命生きてるんだけどねぇ
これはおばあちゃんのセリフ。あんなにリアルなおばあちゃんをどこから連れて来た?
もともとダッセェすよ。ダセェのサイコーじゃないすか、生きてるって感じで。
これは清浦のセリフ。最後の最後、砂田と同じでグッときてしまった。
分かってるよ。
これは渡辺大知演じる夫のセリフ。あ、ちゃんと分ってたんだ…これにもグッときてしまった。
そして、砂田は…。
数々のセリフが心に残るので、箱田優子監督って誰?とググってみたら、映画はこの作品だけで、ドラマは↓の一本だけだった。見なきゃ。
ラストの種明かしからのジワジワ~
ずっと、なんとなーく変なの?よくわからん?と感じていた違和感の理由が最後の最後で分かります。
都会での仕事や生活に疲れてキレまくっていた砂田は、なりたい自分を素直に生きられない不器用な人だ。
のほほーんとした印象の夏帆が、イライラした雰囲気の砂田をとても良く演じていた。今まで見た夏帆のなかで一番好き。
そして、シム・ウンギョンが清浦の役に選ばれた意味が最後に納得できた。
砂田のお父さんとの猫の思い出はひどかったけど、実は砂田は猫アレルギーだったという事実!(お父さんは単に娘を猫に触れさせたくなかっただけだったの?)
イマジナリーフレンドが出てくる映画、ドラマ
実は、清浦は砂田の「子どもの頃の空想上の友達」イマジナリーフレンドのようなものかもしれない。
イマジナリーフレンドが出てくる映画、ドラマって結構ある。なぜだか好きな作品が多い気がする。
「アンという名の少女」
↑ガラス戸に映る自分の姿をケティ・モーリスと名付けていたアン。
ケティのエピソードは原作もアニメも映画も、アンの空想がとてもたくましいので生まれた的などこかおとぎ話の可愛いお話しに描かれてしまいがちだ。このドラマは、アンの子ども時代の孤独と虐待されていたための産物だとしっかり描かれていて素晴らしい。
「秘密の森の、その向こう」
↑これは、私のベスト10(選んだことないけど)に入るほど好きな映画。身近な人を失くした喪失感に寄り添う温かい映画。
ネリーと子どもの頃のママ役は、双子が演じたそう。
「ジョジョ・ラビット」
↑なんとジョジョの空想上の友達はヒトラー。
ヒトラーなのになんともユーモラスで温かい。しかもタイカ・ワイティが監督、脚本、そしてヒトラー役!
スカーレット・ヨハンソンはあまり好きではないが、ジョジョのお母さん役はとても素敵だ。ジョジョの家にかくまわれていたユダヤ人役のトーマシン・マッケンジーもかわいらしくて彼女の作品のなかでいちばん好き。