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『シニアライフの人生設計 自分らしい定年後の生き方』第1章・無料全文公開

9月27日発売の書籍『シニアライフの人生設計 自分らしい定年後の生き方』から、第1章「なぜ第2の人生を考える必要があるのか」を全文公開!

人生100年時代のライフスタイル

 私たち中高年やシニア世代は、いま大きな変革期の真っ只中に生きています。しかし、その変化に対する準備ができている人はほとんどいません。
50歳以上の人たちにセカンドライフ・デザインのためのセミナーを実施しながら、このように感じてしまう私は少しおかしいのでしょうか?

この変化とは、いうまでもなく長寿化(人生100年時代)の進行です。もちろん、この変化は私たち中高年やシニア世代に限って起きていることではなく、若者たちも含め世界の先進国に進行しています。
これまで、私たち中高年やシニア世代にとって寿命が長くなることは、「老いて生きる時間がただ長くなること」のように思われてきました。この常識を考え直すときがもうはじまっているのです。
100歳まで生きることを想定すれば、人生80年時代を念頭に考えていた人生設計を根本的に見直す必要があると思いませんか?
この点について、政府の有識者からなる人生100年時代構想会議から次のように発表されています。

〝人生100年時代においては、人々は、「教育・仕事・引退」という3ステージの単線型の人生ではなく、マルチステージの人生を送るようになる。〟

■「人生100年時代構想会議 中間報告」2017年12月

 有識者のなかには、ロンドンビジネススクールの教授で人材論の専門家リンダ・グラットン氏がいます。彼女はベストセラー書となった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)の共同著者としても有名です。
この本は「これまでのライフスタイル(人生80年時代)」と「人生年100年時代のライフスタイル」がどのように変化するかをわかりやすく書いてある名著です。

私自身ついこのあいだまで「これまでのライフスタイル(人生80年時代)」の人生を歩んできた張本人ですが、それぞれの違いを確認していきましょう。
振り返ると、20世紀は人生を3つのステージに分けることが定着していた時代でした。教育のステージ、仕事のステージ、そして引退のステージです。
この時代のライフスタイルの特徴としては、高校や大学を卒業したあと、1つの企業や組織に長く勤める人たちが多く、自由時間は主に旅行や趣味などの娯楽、そして消費に充ててきました。60~65歳で仕事を引退したあとは年金生活となり、悠々自適に暮らせたら幸せ、というのが一般的な人生として考えられてきました。

一方、人生100年時代では、これまでの3ステージ型のライフスタイルに変わり、新たに登場するのがマルチステージ型のライフスタイルです。
20世紀のように、人々の寿命がそれほど長くはなく、労働市場の変化が比較的少なかった時代には、20代前半までに修めた知識やスキルを応用することで、その後のキャリアを生き抜けたかもしれません。
しかし、労働市場、技術、AI、などが進化するなかで70~80代まで働くようになると、これまでの知識やスキルの応用だけで生き残ることはできません。これらの進化についていくため、人生の移行期では新たな知識やスキルの学び直しが必要となります。
このような学び直しがふつうとなり、生涯に2つ、あるいは3つのキャリアをもつことが珍しくなくなります。かつてのように、高校や大学の高等教育が終了したあと、定年まで1つの企業に勤め続けて引退する人は少なくなりそうです。

すでに現在20代や30代の人たちではよく見かけますが、就職したあとも自身のキャリアやスキルアップのために学び直し、再就職する人が多くなります。このような学び直しを何度もくりかえして再就職する人生設計が珍しいものではなくなるのです。
さらには、仕事を続けながら副業したり、仕事とボランティア活動を並行して行ったりする人も増えていくでしょう。

このように、マルチステージ型ライフスタイルの特徴としては、自由な時間ができると新たな自分発見や自己投資に充てる人が多くなっていきます。しかも70~80代の高齢になっても働ける限り働く人が増え、結果として健康寿命も大幅に延びることが予想されるのです。

「えっ……高齢になっても、ずっと働き続けなければならないの?」と心配する人もいるかもしれません。
高齢になっても働く人たちのなかには、経済的な事情で生活のために働く人(生活就労者)もいますが、生きがいや健康、さらには人生を楽しむために働く人(生きがい就労者)が多くの割合になると予想されます。健康で生きがいや人生を楽しむために生涯働く(ボランティアや社会貢献活動を含む)シニア像こそ、読者の皆さまにもぜひ目指してほしいシニア像です。

ここまでお読みになり、これまでの主なライフスタイル(人生80年時代)と人生100年時代のライフスタイルの違いを理解していただけたことと思います。
私が心配するのは、人生100年時代へ向けて急速に変化が進むなか、これまでの3ステージ型ライフスタイルに染まっている人たちが実に多いことです。このことは私のセミナーの現場でも同じです。多くのお客さまは3ステージ型のライフスタイルをイメージしてセミナーにやってきます。
つまり、寿命が長くなることは、引退後、老いて生きる時間が長くなることだと思ったままの人が多いのです。仮に65歳から70歳くらいで仕事のステージを終えると、引退後のステージが30~35年も残ることとなります。残り30~35年もあると思ったら、自分はこれから何をやりたいのか、なんのために生きるのか、真剣に考える必要があると思いませんか?

このようなことを考えるとき、大きな意味をもつのは、あなたがどのような人間なのか、これまで何を大切に生きてきたのか、そして、それらをもとにこれからどのような人間として生きていきたいのか、ということです。
人生80年時代では、65歳から70歳くらいに、これから自分はどう生きたいのか、新たな移行を考える必要はなかったかもしれません。
しかし、人生が長くなれば経験する変化や移行の機会も多くなります。これまでの年長世代とは異なる視点で「自分は何者か?」「自分が大切にしたいアイデンティティは何か?」を一人ひとりが考える時代なのです。

私の願いとしては、現シニア世代や、これから定年退職を迎える1人でも多くの人たちが、3ステージ型ライフスタイルの呪縛から自らを解放することです。すでにはじまっているマルチステージ型ライフスタイルとの違いや意味を正しく理解し、人生100年時代に向けて準備してほしいと思います。
そのことによって、1人でも多くの人たちの第2の人生に、それぞれの生きる目的や意味が生まれ、活力と生きがいに満ちた、よりよい人生を送ってほしいからです。

時間的なゆとりとお金の安心だけでは満たされない何か

 前節では、人生80年時代と人生100年時代では単純に寿命が延びるだけでなく、ライフスタイルが大きく変わることを確認してきました。また、日本の現シニア世代及び定年退職を迎えようとしている人たちは、これまでの3ステージ型のライフスタイルの呪縛から自らを解放できていない人たちが大変多いこともお伝えしてきました。
この節では、充実した第2の人生を送るために、シニア世代にとって本当に大切なものは何かを別の角度から探っていきます。
40~50代で働き盛り、日々の仕事に忙殺されているビジネスパーソンにとって、退職後に自由な時間を手に入れ、しかも経済的に余裕のある先輩方は、心からうらやましい存在に映ることと思います。
実際に時間的なゆとりと経済的な安心を手に入れている退職組の人たちは、果たして本当に心から満たされ幸せを感じて生きているのでしょうか。

私は仕事柄、多くのシニア世代とお会いする機会があるので、挨拶をする際に相手の状態がなんとなくわかるようになってきました。
60歳以上の人たちに挨拶すると、本当に元気で幸せそうな人は目に自信がみなぎり、元気と活力を感じさせる何かをもっています。さらに、本当にいい顔をしているのです。
一方、ふつうの人たちは全身から伝わってくるものもふつうで、「まあまあ、いまはなんとかやっている」といったメッセージが伝わってきます。
これはあくまでも私の個人的感覚ですが、元気で活力にあふれて幸せそうでいい顔をしている人の割合は、10人に1人いるかいないかでしょうか?
「ふつうになんとなく生きている人たち」が大多数を占めているように感じます。

それでは、元気で活力にあふれ幸せそうな一部の人と、ふつうになんとなく生きている人たちとの違いは、いったいどこにあるのでしょうか。
共通点は何かを探ると、「退職によって人々が共通に失うもの」といった視点から見えてくるものがあります。その視点からの逆説的アプローチとなりますが、「退職後に時間的なゆとりとお金の安心があっても満たされない何か」を探っていきます。

定年退職後、誰もが共通に失うものとしてわかりやすいのは、「きょう行くところ(キョウイク)」や「きょうの用事(キョウヨウ)」がなくなることです。
現役生活のときは毎日会社へ行き、毎日多くの用事(仕事)がありました。しかし、退職によって、自ら何か行動を起こさない限り、この2つがまったくなくなります。
「きょう行く(キョウイク)」と「きょう用(キョウヨウ)」は、発音が「教育」「教養」とまったく同じことに気づきましたか?
一般人にとって大切なキョウイクとキョウヨウといえば、教育と教養を意味します。一方、シニア世代にとって大切なものとなると、きょう行くところや、きょうの用事の話となります。
実は「きょう行くところ」と「きょうの用事」があることは大切です。これがなくなると「社会との関係や人とのつながり」も当然希薄になってしまうからです。
現役時代は日々当たり前のように、職場の同僚や上司、お客さまや取引先とのコミュニケーションがありました。ところが「退職すると名前を呼ばれるのは病院と役所だけだ」と冗談まじりにいう人がいるくらい、外部とのコミュニケーションが減ります。

さらに心配なことは、内閣府が2019年に行った推計調査に基づく、中高年の引きこもりは61万人、40~64歳で若年層を上回る、といった調査結果です。なかでも男性が76・6%と多く、引きこもり状態になったきっかけは「退職」が最も多いと記されていました。
私たちは仕事を通じた人とのつながりや社会との関係性のなかで、自己を認めたり、他者を認めたりします。また、自己を尊重したり、他者を尊重したりしてきました。私たちは個人の存在や価値を認められることで、自己の能力や才能を発揮するものなのです。
自己の可能性や才能を最大限に発揮し、自身の成長や、より高次の目標を達成することが自己実現となります。

すでにお気づきの人もいると思いますが、私たちシニア世代は現役世代の人たちと同様に、社会的欲求、人から認められたい承認欲求、自己実現の欲求をもち続けているのです。アメリカの心理学者アブラハム・マズローの「欲求5段階説」について、第3章3節で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
どのレベルまでの欲求を満たしたいかは人それぞれ異なるでしょう。私が出会ってきた元気で活力に満ちたいい顔をしている人たちは、高次の欲求となる「自我の欲求(承認の欲求)」や「自己実現の欲求」を満たしているように思われます。
私は自分が第2の人生をはじめるようになってから、「マズローの欲求5段階説はすごい!」とあらためて感じるようになりました。現役時代には会社生活や仕事を通じ、「社会的欲求」や「自我の欲求(承認欲求)」が満たされるのは当たり前のことでした。
しかし、退職してこれまで当たり前に満たされていたものを失うと、単に頭でわかるだけでなく、そのことを自らの身をもって強く実感させられたからです。

「時間的なゆとりとお金の安心だけでは満たされない何か」は、人それぞれではないでしょうか?
「満たされない何か」は、人それぞれがセカンドライフに求める「社会的欲求」「自我の欲求(承認欲求)」「自己実現の欲求」と大きな関係がありそうです。
なぜなら、日本で暮らす多くのシニア世代の人たちは、低次の「生命の欲求」や「安全の欲求」をすでに満たされている人がほとんどだからです。

定年退職後、これまでの仕事・職場を離れ、周囲の人から認められるような「承認の場」や「自己実現の場」をすぐに探すことは容易ではありません。
しかし、皆さまが自ら見つけようと行動を起こさない限り、自由になる時間とお金がどれほどたくさんあっても、「承認の場」や「自己実現の場」が向こうからやってくることはないのです。

読者の皆さまには意外だったかもしれませんが、「時間的なゆとりとお金の安心がある悠々自適のセカンドライフ」の実態は、誰もが憧れるほど満たされたものではありません。
しかし、一人ひとりがそのことを正しく認識し、適切な準備と行動を起こすことで、あなたも元気で活力にあふれ、幸せに満ちた第2の人生を手に入れることが可能です。
どうぞ私と一緒に、「自分の半生を振り返り、これからの自分を考える」ことから行動を起こしてみませんか。

*   *   *

第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて9月27日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『シニアライフの人生設計 自分らしい定年後の生き方』

■ペーパーバック版(紙)

■Kindle版(電子書籍)

■書籍情報

自分の5年先、10年先、30年先――
理想の第2の人生、設計できてますか?

第2の人生設計を考えるにあたり、こんなお悩みはありませんか?
・これから定年退職を迎えるにあたり、定年後の生活に不安がある
・人生100年時代にふさわしいシニアライフのプランをつくりたい
・時間的なゆとりとお金の安心だけでは何か満たされない
・自分らしい充実した第2の人生をどう送ればよいかわからない

シニアライフの人生設計にとって大切なことは、自分自身と向き合い、自分にとって何が本当に重要なのかを見極め、それに向かって行動することです。
これまでの人生80年時代の価値観では、退職後の人生を描くのは困難です。そこで本書は、人生100年時代にふさわしいライフスタイルの考え方と、長期的な目標設定の重要性を解説。あなたがこれからどんな挑戦や夢をもつべきか、具体的な指針を与えます。

著者は定年退職後、自らの人生に向き合い、何を目指し、どのように生きていくべきかを深く考える過程で、独自のライフデザインプログラムを開発。ライフデザイン講師としてこれまで延べ1,000人を超える方々に人生設計の指導を行ってきました。
本書では、その経験をもとに、50代以上の方々が自分の人生を再設計し、長期的なビジョンをもって自分らしい「シニアライフ」を生きるための実践的な考え方やツールを提供します。単に頭で「わかる」だけでなく、読者の皆さまも「実践できる」ようまとめました。

人生80年時代から100年時代への移行は、あなたのライフスタイルや考え方に大きなインパクトを与えるものです。本書で紹介する「第2の人生30年計画」などの様々なツールは、あなたのシニアライフをより満ち足りたものにすることを約束してくれる大切な宝物となることでしょう。

【目次】

第1章 なぜ第2の人生を考える必要があるのか
第2章 自分の半生を振り返り、これからの自分を考える
第3章 第2の人生に向けての誘い
第4章 第2の人生をデザインする
第5章 第2の人生の幸せを約束するもの

■著者プロフィール

山口一夫

ライフデザイン講師
主に大学、シニア大学、生涯学習機関にて、「人生100年時代のセカンドライフ・デザイン」「幸福学・あなたの幸福度と幸福スタイルを知る」などをテーマとしたセミナーや講演を中心に活動。ほかにボランティア英語通訳ガイド歴10年(東京SGGクラブ所属)。
大手情報機器メーカーを経て、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)の常務取締役コンサルティング統括部長として上場企業や外資系企業を中心に従事。中央大学商学部卒業、サンフランシスコ大学 経営大学院留学

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