良い1on1のきっかけは、1on1に期待しないことだと思う
しゅんしゅしゅんです。
「ヤフーの1on1」をよみました。
前作より今作のほうが断然いい。1on1への深度と解像度が格段にあがっています。「対話」「傾聴」「コーチング」「マネジメント」といったワードに興味がある方なら、示唆深きこと間違いなしです。ぜひおすすめします。
特に4章の1on1のスクリプト。かなり具体的で実践的なので、上っ面だった1on1の対話への理解がむちゃくちゃ深まりました。
ちなみに、1on1(ワンオンワン)とは、上司と部下との間で行う1対1の対話のことです。週1回30分程度。その対話は、いわゆる「業績面談」のような対話とは違い、そこでは上司は聞き手に徹し、部下の話を傾聴します。つまり1on1の30分は、「部下のための時間」です。
ここ数年ですっかり社会的認知を得たこのコミュニケーション手法ですが、前述のような理想の1on1を行うのはとても難しい、と思ってます。
1on1で難しいと思うことの一つ目は、沈黙に打ち克つことです。
沈黙すると、上司が先回りして発言してしまいます。沈黙に耐えられないからです。部下の沈黙の時間は「ゴールデンタイム」であり、部下の頭の中で思考がぐるぐる回り始めているのです。上司はそれを待たなければなりません。
それでも、先に発言してしまう。
沈黙の責任は、その場を活発にできていない自分にあるような気がするし、自分の発する質問が悪いことにある気もする。つまり自分がイケていない気がする。部下のための時間と言いつつ、自分のための時間になってますね。
自分が1on1を受ける立場になるとわかるのですが、沈黙している間って、たしかに思考がぐるぐる回っていることが多いんですよね。沈黙しているということは、思考がぐるぐる回るようないい対話ができているって証拠だと思ってもいいくらいです。
沈黙を制するものは全てを制しますね。
1on1で難しいと思うことの二つ目は、教育熱心にならないことです。
「ヤフーの1on1」に掲載されているデモスクリプトを見ると、苦笑いしてしまいます。良い例と悪い例で2パターン掲載されているのですが、自分の1on1は間違いなく悪い例に近いからです。(本書はこのデモスクリプトだけでも大いに価値があるので、超おすすめです)
何が悪いかというと、まずは畳み掛けるように質問を投げかけ、部下の発言の良し悪しを即座にジャッジし、主観を述べ始める。上司が先取りして語ってしまうから、部下の考えが深まらないのです。
さらに、部下が自分で考えて次の行動を決めるべきところを、上司が早々に助け船を出してしまう。
教育熱心な善意の管理職ではあるのですが、皮肉なことに教育効果が発揮されない対話になっているのですね。
それでも、熱心に介入してしまう。
お互い忙しいので、早く問題整理、課題特定をしなければと思うし、課題の答えを出してあげないと、上司としての存在意義がないような気がするからです。またもや、部下のための時間と言いつつ、自分のための時間になってますね。
本書内でも、こんな一節があります。
部下のための1on1のはずが、いつのまにか上司の対話技術を披露する場になってしまう危険があります。特にコーチングやカウンセリングを学んだ人にこの傾向は顕著で、良い質問をしようとしたり、本や研修で学んだテクニックをこっそり試したくなる上司も少なくありません。
笑えないですね。
1on1の肝は、プレイヤー時代は自分に向けていたベクトルをいかにメンバーに向けるか。これに尽きそうです。沈黙に負ける、教育熱心に介入しすぎる。この2つの罠をのりこえることができれば、1on1はグッとよくなる気がします。
そこで大切になってくるスタンスは1on1に対して上司側が必要以上にプレッシャーを感じないってことかなと。
対話中の30分だけで、部下が何かに気づき、学びを得ることなんてほぼ無理です。1on1がもやもやで終わっても、1on1後に部下の頭の中では内省が続いているのです。その30分は、深い内省開始のきっかけになればいいのです。
つまり、30分で育成の決着をつけるわけではなく、業務時間のすべてが育成時間であり、1on1はその中のほんの一部の時間である、と考えを改めることですね。
1on1の目的は人材育成であることは間違いないのですが、そこに捉われすぎちゃダメよってことなんですが。なんだかんだ、上司になるくらいなんだから、上司ってのはいい人が多いです。
だから、頑張っちゃうんです。
頑張りすぎませんように。