【読書録】【校正】牟田都子『校正・校閲11の現場』
「やられた!」と思った。
日本エディタースクールの通信講座で校正の勉強をして校正者になる前から「この仕事だけでは食えなくなるかもしれない」という危機感は持っておくべきだろうな、と考えていた。食い扶持はあるにしても「文字単価x円」という働き方はどうしたって天井がある。だからといって(これは個人的な気質/性向だけれども)色んな仕事に手を出したくない。あくまで専業の「職人」でいたい。
だとしたら校正の知識や技術を他の方法で売ることを考えないといけない。ただ大西寿男さんのように執筆活動をしながら教室を開いたり、牟田都子さんのように「素敵な校正者像」を確立するのはレッドオーシャンかつ自分に向いていないし、知識そのものでインフルエンサー化を狙うのは新聞社の校閲部アカウントを相手取らなければならず充実度において勝てっこない。
そこで「他の校正者がどんな環境・道具・思想をもって仕事をしているのか」を取材して発信するハブのような存在になれないか、ということをうっすら考えていた。が、本書『校正・校閲11の現場』であっさりとやられてしまった。しかもめっちゃ素敵。めっちゃ面白い。インタヴューもさることながら、本棚だったり文具だったり同業者が気になるところもしっかりと押さえている。完敗です。おみごと乾杯。
本書にも登場する東京出版サービスセンター、その西村雅彦さん(現在は登録解除)の記事を思い出して再読した。ワークライフバランスを考えながら校正という仕事でこの低賃金ジャパンをサヴァイヴしていくにはどうしたらいいのか。目の前の仕事を大事にすることはもちろん、長期的なヴィジョンもきちんと描いておきたい。今のところ妙案は、ない。