🎮E3などで発表されたゲームが発売されることなく消えてなくなる理由

頻繁にあるわけではありませんが、発表されたゲームがいつまで経っても発売されない、続報もないまま消えてなくなるというケースってありますよね。
あれはいったいどういうことが起きているのか？
ということについて、今回は書きたいと思います。
あまりこういうことについて書かれた記事を見たことがないですし、需要があるのかはわかりませんが、ゲーム開発もビジネスだってことはお分かりいただけるのではないかと思いますw

さてさて、まずは少し前に投稿した下記の記事で紹介しているフロー図を見て頂きたいです。

さまざまな社内の承認フローやチェック体制を通過して前進していくのですが、最速で開発中であることを公表する場合は下記のフロー図だとプリプロで開発したものに対してOKが出て本開発予算が承認され、本格的に開発が開始されたところになります。

このタイミングで公表されることは稀で、実際にはα版からβ版の間あたりに開発中であることが公表されるぐらいの薄い情報発信がされるのが常です。
稀なケースは、シリーズタイトルで安定的に開発することが見通せており(開発チームの力があることが証明済み、大きなゲームメカニクスの変更がない安全性の高いプロジェクト)、クオリティーにも間違いはないものができると想定されているものになります。

例えば私がいた会社が出している鉄拳シリーズなどであれば、早期に発表することはありえます。
もちろん、発売時期等については未定もしくは20XX年とかそういう提示になります。
もちろん、審査会のタイミングでは開発仕切るまでの予算を提示していますから、開発完了時期、発売予定時期も決まっていますが、予期せぬことが起こったり、開発遅延が発生したりすることはありますから、アバウトな公表になります。
また、大手企業のフラグシップコンテンツシリーズであれば、株価への影響なども十分ありうるので、そういった観点からも確度が高まるまでは公表できないというオトナの事情というのもあります。

出典:競合他社のホームページに勝つ方法・対策と、差別化のポイントを解説

そして、さらに上記のような理由だけではなく競合他社の強烈なタイトルと発売日や発売時期が重なるということを避けるために、ギリギリのタイミングで発売週などを戦略的に変更することもあります。

これは社内でのカニバリズムという観点でも同様の判断はあります。
私が担当したタイトルでもこのようなことに苦慮して、決断を下したことがあります。

どうして発表されたタイトルが発売されずに消えるのかという話に戻します。
プリプロでは良い手応えのゲームだったがα版でダメだった、β版でダメだったというケースほとんどありません。
40タイトル程担当してきましたが、少なくとも私は経験したことがありません。
たいていの場合はプリプロ段階で少し怪しいのです。
懸念点が多数あげられていて、条件付きで本開発承認が出たというケースです。
懸念点の数はあまり重要ではなく、どちらかというとコアゲームメカニクスやマネタイズサイクル(基本無料のスマホゲームなどの場合)にクリティカルな懸念がある場合がポイントです。
ちょっと極端なことを言いますと、要は懸念点などあげたらキリがない訳ですし、懸念点などない完璧なものなどどの道、存在しませんから一つずつつ潰していけば良いだけです。

出典:『負のスパイラルのサイン』マンション経営

ただ、開発チームとしての総合能力、開発製品とのスタッフリングの適正、開発期間と予算の整合性などに欠陥があると、潰していくことができないので、ズルズルと問題を抱えたまま進行してしまうのです。
または、課題が課題を呼び負のスパイラルに陥ってしまい、商品コンセプトを満たしたゲームにできないばかりか、クリオティーも担保できない(要は遊んでも面白くない)という事態を招くわけです。

もちろん会社としても、立て直すために適正の高いスタッフを補強したりするわけですが、大手とは言え人的資源には限りがありますからそうは簡単にテコ入れもできません。
また、人員追加するということは予算外の費用がかかることになりますから、追加予算の申請なども必要です。
ただ、こういったことで立て直しに成功するケースもありますが、立て直せない場合に開発中止という判断にいたります。

ここ20年近くは開発マイルストーン毎の評価ROM(プリプロ、α、β版etc...)などがあり、厳密に管理されているのでマスターアップ間際にとんでもないことが露見するといったことはありませんが、PS2時代ですが私が実際に目にしたものでは開発期間が倍になり、予算は15億円まで膨れ上がり、開発人員は200名近くというものがありました。
ここまで来ると発売しないわけにはいかないので、出したわけですが惨憺たる結果で10億円以上の巨額の赤字を出したタイトルもありました。
恐ろしい話です。

このようにプレイヤーの手に届く前に発表はされたが発売されないゲームというのは、だいたいこんな事情によるものです。

出典:任天堂株式会社

公表されているものでミニスーパーファミコンに搭載され話題になったスターフォックス2のように、製品として完成しておりクオリティーも十分だ
が、ハードウェアの切り替えタイミングでお蔵入りしたまま発売されなかったという優等生だけど、世に出されないなんていうタイトルもあったりはしますが、これはSSR級のレアケースです^^

結果的にはかなりの年月を経て、スーパーファミコンミニに収録され発売されたので日の目を浴びましたが^^
ちなみにとてもよくできていて面白かったです♪

今回も最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。