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名刺のデザインの話。/BEE STAFF COMPANY 〜4


今回は名刺のデザインの話を書いてみたいと思います。

社会人のほとんどの方は、名刺を渡したり受け取ったりした経験があるかと思います。

それどころか、名刺を投げたり踏んだり抓ったり破いたり焼いたりしたことがある人もいるかもしれませんし、飲み屋に行って他人の名刺を渡してツケで酒を飲んでる人もいると聞きます。そういうことはマジでやめろよな。

それでも最近は、リモートワークの機会も多くなって初対面の相手と画面越しに「はじめましての挨拶」をするということも珍しくなくなってきました。ちなみに、はじめましてなのにカメラをオフにしている人と交わすその挨拶は結構虚しいです。

もはや名刺を渡すという機会が減っている。そんな世の中ですから「名刺なんか必要ない」と思っている方もいるかもしれません。特にSNS上のやりとりで人間関係を構築している人たちの中には「名刺なんて必要ないもーん」と思っている人が絶対いるはず。


でも、ちょっと待ってほしい。唐突に聞いちゃうんだけど、


名刺の役割ってなんでしょう?


「自分の名前や職業や連絡先を伝える役割を果たすカード」または「飲み屋のおねいさんの出勤日や、また来てね♡というメッセージが書いてある、うっかりポケットに入れて帰ると厄介ごとがやってくるカード」おそらく多くの方は、そう答えることと思います。

その証拠に、実際にビジネス街に出てみたりwebで検索してみるとわかると思うのですが、さまざまな種類のデザインをテンプレートで提供する安価なデザインの名刺作成サービスやお店が昔から多くあります。(もちろんそれが悪いといっているわけではありません)名刺のデザインはデザイナーに頼むものじゃないと思っている人も多いのかもしれません。


でもね、さっきのおねいさんの例じゃないんだけど、
名刺ってコミュニケーションツールなんですよ。


騙されたと思って、自分の持つ名刺のことを考えてみてください。他の人と同じような印象のものを持ちたい?どこでも見るようなものに名前を添えて渡したい?初対面で渡すコミュニケーションツールが没個性なものでOK?自分のイメージと自分が持つ名刺のイメージ合ってる?それって面白い?美味しいの?

「これまでにない新しいことを世の中に提供するサービスを始める企業」とか「これまでにない独創的なプロダクトを生み出す革新的な企業」と標榜している会社の人から渡された名刺が、すっごい普通だったり、悪い意味でデザインが個性的だったり、チープだったりすると、がっかりしません?俺はがっかりしちゃう。だって標榜していることを感じないじゃん。奥歯に挟まったオブラートに包んだような物言いだけども。


名刺は自分(自社)を表すブランドツールでありコミュニケーションツールであると捉えられる人は、名刺の制作は高くても絶対デザイナーに頼んだ方がいい。革新的なことやってる会社が汎用のデザインテンプレート使ったデザインの名刺とか、ほんとにおすすめしない。安物で好機を逃す。ここ、試験に出るから。


というわけで、ようやく本題。

デザイナーはまず、デザインをするために必要な情報をインプットした上でどうデザインするべきなのかを考えるという時間が必要になります。

デザインテンプレートを好き嫌いで選ぶかのように、お洒落っぽいとか格好いいみたいな表層的なことだけでなんとなくデザインしているわけではないのです。それは、名刺のデザインをする場合も同じです。

サイズが小さいものは短時間で作れると錯覚している方も多いのですが、そんなことはありませんし、短時間でできたものは言わずもがなです。

というわけで、
ここからは弊社の名刺を例にして、果たしてどんなことを踏まえて、どんなことを考えてデザインしたのかを書いていこうと思います。


インプットした情報


弊社の社名

株式会社ビースタッフカンパニー(BEE STAFF COMPANY)
花から花へ飛び回り花を咲かせる(人と人、企業と企業を飛び回り、社会に幸せをもたらす)蜂を由来とする社名。

弊社のブランドロゴ/ブランドカラー

特別に調色したイエローとブラック。封筒など他のステーショナリーとの統一イメージを担保する前提。

弊社はどんな会社なのか
広告の企画や制作、グラフィックデザインをメインに行う会社。
個人商店から大企業、海外の企業に至るまで、BtoBやBtoCを問わず幅広く仕事をしている会社。銀座にある会社。ディレクターとデザイナーの集団であり、職域の違う制作者との協業が多い会社。

弊社はどんな規模なのか
10人に満たない零細企業。平均年齢28歳(デザインした当時)

名刺を渡す相手はどんな方々なのか
主に一般企業の方々や広告業界の方々。日本人外国人を問わない。

名刺を渡した相手に感じてほしいこと
普通の会社じゃないということ。面白そうな会社だということ。クリエイティブ力があり誠実で信頼できる会社であるということ。大胆かつ繊細。
制作者の仕事は会社名ではなく個人についてくる(つまり制作者の本質はタレント商売である)という思想。


インプット情報から導き出した方向性


一般的な名刺のデザインに留まらないこと
デザインレイアウトは他であまり見かけないものにする。ただし、奇を衒い過ぎてデザインの賞味期限が短いものにならないようにする。フォントは明朝系とゴシック系の両方を使用することで、「会社と個人」「大胆かつ繊細」を表現する。手に取った瞬間にクリエイティブな会社だということが直感的に伝わるよう、上質な手触りの厚手の紙を選定する。

ブランドロゴとブランドカラーを印象的に使うこと

地色にイエローを使い文字要素をブラックに。2色のみで他の色は一切使わず、シンプルでグラフィックデザイナーらしさを表現する。

名前を印象的に見せること
個人名には、会社名や肩書きを添えない。個人の名前で仕事をするという決意を表現する。

企業の規模に見合ったデザインにすること
個人(フリーランス)の名刺にも大企業の名刺に見えないデザイン。
大企業のように印刷枚数の多さや人数の多さから運用コストをそれほど考える必要がない。コストダウンを考えるよりもクリエイティビティを優先した仕様とする。

両面使いにすること
日本語表記と英語表記の必要性を踏まえると、それなりの情報量になること、そして上記全ての要件を満たすために両面使いの名刺とする。また、両面使いの名刺として渡す時の所作も考える。



というわけで、こんな名刺になりました。
インプットした情報から導き出した方向性と照らし合わせてご覧ください。


上:表面 下:裏面


弊社の人間と名刺交換したことがある人はもしかしたら気づいているかもしれませんが、多分気づいていないと思うので書いちゃうと、最初に裏面を見せてから手渡す時に表面に返しつつ名乗るという所作で名刺を手渡しています。個人の名前が印象に残るように。知らなかったでしょ。


「新しい会社やお店をつくる」
「会社の名刺のデザインを一新したい」
「ブランドイメージをきちんと構築していきたい」
「自分だけの名刺を作りたい」
「飲み屋のおねいさんに渡して褒められたい」などなど、

ちょっとデザインの相談に乗ってくれって人からのご連絡をお待ちしております。





















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上田 豪
あそぶかねのために使います