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パン職人の修造101 江川と修造シリーズ リーベンアンドブロートができるまで



パン屋開業の為に修造は江川と一緒に色々な土地を探した。

「安くて交通の便が良くて人が通いやすい、広くて落ち着ける場所を。そこはきっと花が咲き乱れてみんなパンを食べながらほっと一息つける所。そんな場所を探そう」


リーベンアンドブロートができるまで


2人は東南駅の近くのアイリス不動産の小島百年子(こじまもとこ)と一緒に車でファミレスやカフェなどの居抜き物件や空き地を探した。



なかなかしっくりくる物件には当たらない。
遠すぎる、高すぎる、広すぎる、狭すぎるなど理由は様々。


休みの日に何軒も見に行ったり、ネットで不動産屋の出している物件情報を漁った。



「そろそろ決めたいところですね」
「はい」
小島にも毎回物件を紹介して貰って申し訳ない。



アイリス不動産のネームが車体の横に入ったカローラに乗って物件を何件か見た後、3人が幹線道路沿いを走っていると、白い鳥が車について来た。
何気なく江川がその鳥を目で追っているとその鳥は左に曲がってひと気のない駐車場へ入って行った。

「すみません、今のところに戻って貰っても良いですか?」江川は小島に頼んで戻って貰った。
鳥は飛んでいってしまった様だ。

3人はその駐車場に車を停めた。

そこは木々に囲まれた広い駐車場の奥に空き店舗らしい建物があって、築年数はそんなに古くない様だったが壁の色は燻んでいて雑草が建物のぐるりを囲んでいる。

「長い事使われてないみたいですね」

「ここって空き物件ですか?」修造が小島に聞いた。「調べてみます」そう言ってアイリス不動産に電話をした。

「ちょっとお待ちくださいね」
そう言われて2人は建物の方へ歩いて行った。


駐車場の向こうの小道を歩いて暗い空き店舗の中を目を凝らして見た。カフェかレストランだったのか?

そんな感じのスペースがある。

そこに机と椅子を置いて、その奥はパン棚が沢山置けそうだ。

その左のドアの奥は工場が作れそうかな?

2人は建物の周りを回った。この窓の奥が工房で、2階には休憩室に事務所ができそうだ。などと色々な話がどんどん進んでいった。

一周して戻ると小島が※「ここ、元レストランで子供さんが相続したらしいんですが、話し合いによっては売却しても良いそうですよ」と言った。

すぐに場所を押さえて貰った。

これからは不動産屋を通じて売主との交渉が始まる。「詳しいことはまた決まり次第お知らせします。それと、、、」

「はい」

「もし借入金で購入されるなら見積書が必要になりますから知り合いの所で心当たりがあったら頼んでみて下さい」

「わ、分かりました」



その何日か後に不動産屋に敷地と建物の図面を貰う。

それを元に、無料見積もりの工務店を探して内装はああでもないこうでもないと相談して見積もりを書いて貰った。

その後,基嶋機械の後藤に連絡して駅前の喫茶アメリカンのテーブルに図面を広げる。


厨房を少しいじってオーブンやミキサーを置くスペースを作るとなるとそれは何センチでとか、特に中古にするか新品にするかとか何と何がいるのか2パターンの見積もりを書いてもらうことに決めた。

後藤は張り切って「とうとうここまで来ましたね!開店してお客さんがパンを買ってる所を想像してワクワクしますね」と白い歯を見せて言った。

「はい。よろしくお願いします」

「一応新品の方の資金計画書を出して通らなければ一緒に考えましょう」

「はい」

基嶋機械のベテラン営業マンの後藤は一緒に考えましょうと言ったが、もうちゃんと中古も押さえてある、だが資金によっては全部新品にしたり一部を中古にしても良い。



次に修造は後藤の車で店舗の外観を見に行った。

「経費を浮かす為に細かい補強は自分でやりますのでいい配置を一緒に考えて下さいね」

後藤はおでこをつけて窓の中の暗い厨房を見ながら「あそこにオーブンを置いてその隣がドゥコンとラック。そこにパイローラーを置きましょう!ミキサーはこっち」と指差して興奮気味に言った。

その後もあちこち見て回った。木が鬱蒼と駐車場の日当たりの良いところに伸び放題だ。庭師を呼んで木を剪定したりここに花壇を作りたいと相談したりと。。まだまだ色々やることはある。



ーーーー



興善フーズの五十嵐にも開店当時に要りそうなものの見積もりを書いて貰って、なんだか見積もりが分厚くなって来た。。

不動産屋には売主との手付けの日にちを決めたいので資金繰りが決まったら教えてくれと言われている。なので不動産屋にも正式な土地の測量図と売却金額の乗った書類を貰わなくては。

修造は小島に連絡した「あの、土地代っていくらぐらいなんですか?」
「いくらなら買って貰えますか?」
などと言う腹の探り合いをする。
土地の相場は都心から離れているし駅からも遠いので1200万〜1500万と言われる。結局いくらお金を借りれるかまだわからないと言う話になる。

修造は後藤から※新創業融資制度というのがあると教えて貰った。無担保・無保証人で融資が受けられる。ただし自分の持ち金が創業資金総額の10分の1以上の自己資金を持っていなければいけない。それと、勤めている企業と同じ業種を始める者に限る。などの取り決めがある。


色んな見積もりや創業計画書、申し込み書類を持って金融公庫に行く。受付の人に個人か法人かと言われて、逆に相談した。そして後々の事を考えて、途中で代表を代わるなら株式会社をと勧められ、そうする事にした。その時に名前を決めなくちゃいけないので色々考えるが、結局生活とパンの関連性を考えて株式会社リーベンアンドブロート(Leben und Brot生活とパン)にする。

株式会社にするならするで法務局に行って用紙を貰い、登録するのに書類を作る。しかし会社の概要とか定款とか、、やっぱここは司法書士に頼まなければ俺には無理だ、、そう思い、法務局の近くの束根{たばね)司法書士を訪ねて、今はこんな感じだとか相談した。会社ができて金融機関に書類を出して、後戻りはできない感じが強くなる。もうこうなったら全てを前向きに進めないと。。修造は足元にジワジワ押し寄せる不安を蹴飛ばして振り払った。

つづく


※新創業融資制度 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html 後藤が勧めた制度

日本政策金融公庫 国民生活事業より。新たに事業を始めるとか事業開始後税務申告を2期終えていない人に無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」条件をクリアしないと受けることはできない。



※今時は建物を相続しても解体費用に二の足を踏んでこのような空き物件があることがあるので辛抱強く居抜きや空き家を探してみるといい物件が見つかる可能性がある。


パン職人の修造 江川と修造シリーズはとうとう100話を超えました。
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