パン職人の修造107 江川と修造シリーズ リーブロプレオープン
さて、撮影が始まった。
マウンテン山田と桐田が駐車場の入り口から駐車場が広いとか花が咲いてて綺麗とか説明しながら建物に近づいて来る。
きっとスタジオではコメンテーターなんかが見ている画面に「パンの世界大会の覇者のお店リーベンアンドブロート」とか画面に大写しにされるのだろう。
マウンテン達がやっとこっちに辿り着いた。
修造と江川が入り口に立っている。
「はい!こちらが世界一の男!田所修造シェフと助手の江川卓也さんです!シェフ、いい店ですね〜」マウンテンが話しかけた。
「どうも」修造は前で手を組んで丁寧に頭を下げた。
「早速店内を見てみたいと思います」マウンテンと桐田が順にパンを見ていると「修造さん」と販売員の中谷がこっそり言ってきた「これ」
見ると自分の造作した棚の端が外れて落ちかけている。
修造は声を出さずに思い切り目を見張った。
中谷が力を込めて棚が落ちないように持っていたので慌てて自分が後ろ手で持つ。
身体をカメラの方に向けたまま立っていると、桐田とマウンテンが店内を一周してカフェの所に座った。
そこに用意したパンの乗ったトレーを修造が持っていく事になっていたらしく、スタッフが渡しに来た。仕方ない!修造はディレクターの四角に目配せして棚を少しだけグラグラして見せた。
今度は四角が慌てて代わりに持ってこっそり言った「シェフ出番です」
手が離れた修造は急いでトレーを持って2人にパンの説明をしに行った。
「このお店のこだわりは何ですか?」
「この店でお勧めしたいのはドイツのパンと前にいた店のパン、大会で作ったパンなどが並んでいます、これはブレッツエル、そして自分がNNテレビさんの番組に出てる時に考えたスパイシーなカレーパン、そして」と言って振り向くと江川が黒いパンにチーズを格子状に乗せたパンとゼリー寄せを用意しているので、修造がパンを開くとさっと江川がゼリー寄せをカットして素早く間にはさんだ。
「どうぞ」と言ってテーブルの2人に出すと「おーっ」と声が出た「これは何でんのシェフ」
「珍しいパンですね?ゼリー寄せ?」
「カフェ専用のパンなのですが、これは何種類もの野菜、昆布と鰹の出汁を使ったゼリー寄せのタルティーヌです」
「あ!ほんまや!出汁の味がするわ」
「パンも美味しいです、この黒いのは何ですの?」
「こちらは竹墨を使っています、焼きたての薄いパンに急いでチェダーチーズを乗せています」
「へえ〜変わっててほんで美味しいなあ」
「本当にどれも美味しかったですわシェフ」
とそこで一旦カットになったので四角の所に急いで戻り、麺棒を持ってきてつっかえ棒にして棚を支えた。
「ふ〜重かった」四角が額の汗を拭った。
「すみません四角さん」自分で作った棚が外れるなんて恥ずかしい。
「いえいえ、音が立てられなかったんだから仕方ないですよ」
「後で自分で直しておきます」と麺棒の横にパン箱を差し込んで棚を支えた。
「さ、次は江川さんの番なので先に撮っていきましょう。江川さんお願いします」
江川も2人に修造の作ったパンについて詳しく説明した。受け売りでは無い自分の言葉で説明している、そんな江川を店員に紛れてお手伝いに来ていた小手川パン粉が微笑ましく見ている。
「パン粉ちゃん」江川がパン粉を呼んだ「実はパン粉ちゃんにも駅前のチラシ配りや今日のお手伝いもかって出て貰いました」
「あ!意外なところにパン粉ちゃんやん」マウンテンはさっき挨拶したのに知らなかった感じで言った。
「こんにちは〜パン粉で〜す。最近のパン粉のお気に入りはリーブロなんですが、江川職人とはテンションが合うんです」
「パン粉ちゃんから見てこのお店はどう?」
「頑張ってパン作って、お店作って、お客さんが喜んで、素晴らしいじゃないですかあ。特にこのお店の凄いところは修造シェフと江川さんって世界大会にでてこの店でもタッグを組んでるんです、そのパンをここに来るだけで食べられるなんてなかなか無いと思います、今日お勧めしたいのはドイツで修行してきたパンとパンロンドのパン、世界大会の3つの流れが楽しめる所なんです。それって修造さんが江川さんの為に考えて、修造さんと江川さんのパン作りの歴史を辿ったものなんです」
「へええ〜」桐田とマウンテンはパン粉のリーブロへの思い入れに対して感嘆の声を上げた。
長尺だったがパン粉が熱く語ったのをカメラでバッチリ撮っていた。
さて
撮影も終わった頃、工房の中からボールや麺棒が落ちた様な音が聞こえてきた。
ガラガラバーン!
「なんだ?」修造が見に行くとオーブンの前で西森と大坂が摑み合いの喧嘩をしている
「やめてやめて!どうしたんだ一体」
「こいつがパンを焼くタイミングが遅くて」
「お前が速いんだ!まだ発酵してないだろ!」
その理由で掴み合いの喧嘩になるのか?
「とにかく落ち着いて」
「もういいです!こいつとは仕事できません」西森が2階に上がった、きっと帰る為に荷物をとりに行ったんだろう。
「私見てきますから」立花が追いかけて行った。
つづく
パン職人の修造 江川と修造シリーズ 1〜55話はこちら
パン職人の修造 江川と修造シリーズ 56〜100話はこちら
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