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パン職人の修造80 江川と修造シリーズ 江川 Preparation for departure
江川は早速ユニフオームを広げて大喜びだった。
「わあ〜!かっこいい」
「さあ、では行きましょうか」後藤が白い歯を見せて張り切って言った。
「え?どこへ?」
「写真撮影です」
いくつかの企業がスポンサーとなることで資金面で選手も助かるし、企業側も認知の拡大、自社の製品の知名度の向上やイメージアップができる。企業共有の写真を撮りに行く事になった。
実際勤め人の選手には資金面の心配までしていては集中力が削げる。
「私がお連れします」と言って、後藤は修造と江川、大木を車に乗せてスタジオに向かっていた。
「私が大会が終わってもお付き合いしますのでなんでも相談して下さいね」
「だってさ、修造!大船に乗った気でいろよ」と大木が言った。
急接近してきた後藤になんだか背中がこそばゆいが、やはり助かる。世間知らずの修造は直球を投げた「見返りに何かするんですか?」
大木が「ほら、あるだろ?スポーツ選手の肩や腕のところに企業名が付けてあるだろ?あんな感じだよ」と、また振り向いて言った。
「あぁ!はい!あれ!」
「カタログや業界新聞のうちのスペースにシェフとうちの機械を載せるんです」
何も知らないのでこちらのペースに乗せやすいかもしれないと後藤は心の中でテンションが上がった。
「それと、次の展示会ではうちのブースでデモンストレーションをして下さいね」
「あのオーブンやらが沢山並んでる所で?」
「はい、実際に基嶋のミキサーやドウコンを使ってパン作りをして頂きます」
「後藤君、そういうのは大会が終わってからにしてね」と大木に釘を刺されたので笑って誤魔化した。
「凄い、僕達の知らない別世界」と、後部座席で黙って聞いていた江川が大人の世界を垣間見てちょっと心躍った。
ーーーー
スタジオに着くと早速さっきの大会指定のユニフォームに着替え、3人で並んだ。
「色んなポーズするんですか?こう?」
などと江川が張り切っているが修造は内心嫌がっていた。
本当は写真撮影は苦手だが仕方ない。。
黙って突っ立っている修造にカメラマンが穏やかに声をかけた。
「右の後ろの方、もう少し隣の方に寄って下さい。はい!笑って下さーい」
笑ってと言われてどんな笑い方をすれば良いんだろう?
何度も撮り直すので大木が振り向いて修造の顔を見た。
「おい、笑えって言われてるだろ?」
「はあ」
口角を上げてみた。
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ぎこちな過ぎる。
「修造さん、こうですよ」
江川がにっこりとして見せた。
「えーと」
強い目力に更に力が入り、口の両端を上げた。
こわ
カメラマンが困っていたので江川が「そうだ!大地ちゃんを思い出したら?」とアドバイスしてきた。
あの可愛い大地を。。
修造の顔が急に綻んだのでやっと良いのが撮れた。
「江川ナイスアシスト」と大木がほっとして言った。
「次はお一人ずつ撮りますね」
「えっまだあるの?」
「良い写真が撮れないとずっと撮り直しになりますよ」
さっさと撮り終えた江川が言った。
「う、うん」
「もう少し笑って下さい」
こういう事の苦手な修造は何度もカメラマンに言われていた。
「もう少し斜に構えてカッコいいポーズも撮りましょう」
「え」
もう言われるがままに指定の格好をするしか早くこの場から逃れるすべは無い。
「腕を組んで」
「もっと笑って」
色んなポーズを撮るカメラマンとなすがままの修造を見ながら後藤は考えていた。
この人優勝してもしなくても結局店を持つんだろうな。今からうちのいい中古を探しておこう。まだそんなに使ってないものを会社の者が何処かで見かけたら俺に言う様に言っておこう。どのぐらいの規模なのかな。一等地に狭い店を構えるのか、郊外に広い店を持つのか。やっぱパンロンドを拠点に考えるのかな。今ガツガツ聞くと大木シェフに叱られるな。それにしても随分この2人を可愛がってるな。息子みたいにしてる。
それと
江川を見た。
こちらの助手の少年もそのうち名前が知れ渡っていくだろう。デジタルタトゥーの意味合いとは逆に名誉なこともネットにあげたら中々消えないもんだ。
今月はこの2人の特集をうちの取材として業界新聞やホームページに載せる予定だし。
後藤はにっこり笑って「江川さん、手伝います」と声をかけ、受け取った新品のユニフォームをさっき開いた筋目の通りに畳んで袋に入れ直した。
「ありがとう。ねぇ後藤さんの仕事って何する人なの?」
「私の会社はパンやケーキ、ピザを作るのに必要な機械を作っているんです。パンロンドにも窯やホイロ、ドゥコン、ミキサー、パイローラー、※モルダーがあるでしょう?」
「はい!あります!」
「私の仕事はそれらの新製品を皆さんに広めて買っていただく事なんです。今回江川さんともお知り合いになれたので、今後何かあったら基嶋機械の後藤をよろしくお願いします」
「僕がいつか自分でパンの機械を買う日がくるのかしら。。想像もできないです」
まだ貯金もないのに大それた買い物は考えも及ばない。
「なので修造さんがもしもパン屋さんをやったら僕もついて行くつもりです」
「そうなんですね、私とはずっと仲良くして下さいね」
後藤は笑顔を見せた。
つづく
パン職人の修造 noteマガジン1話〜 江川と修造シリーズ
江川くんがパンロンドに面接に来て初めての面接を受けました。
面接をしたのは、、、
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