「男の身だしなみ」入門 第4回 ビジネスシューズ編:『THE21』寄稿
※本記事は『THE21』 9月号(2015年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。
「足元を見る」はビジネスの常識?
ビジネスシューズはローテーションで履くこと!
ビジネスパーソンを底辺から支えているのが靴。そこには、その人の他人や物事に対する考え方の本質が顕著に表われます。だからでしょうか、人は意識的そして無意識的に、初対面で相手の足元を必ず見て、一緒にビジネスをしたらどうなるかを即座に判断します。どんなに仕事ができたとしても、靴の汚いビジネスパーソンとは一緒に仕事しないという人々を私は何人も知っています。これは世界共通の見解。とくに欧米諸国では常識中の常識です。
「ドレスシューズ」と呼ばれるビジネス用の正式な靴を、常にしっかり磨かれた綺麗な状態で履き人に会うのは、相手への本気の姿勢の表現であり礼儀。それを物語るように、NYの街中ではビジネスパーソンが靴屋で靴を磨いてもらっている光景が日常的に見られます。
以前、「仕事の靴は一足を履き続け、ダメになったら新しいものを購入する」というビジネスパーソンに会ったことがあります。非常に優秀な方だったのですが、出会った瞬間からなぜか違和感をぬぐい去れずにいたところ、それを裏づけるかのようなこの靴の扱い方を知り、仕事で接する相手への姿勢がうかがい取れたのでした。
靴は、自分の身体を一日中支えてくれる重要なもの。そしてシャツなどとは違い、消耗品ではありません。良いものを手に入れ、丁寧に手入れをしながら長く大事に身につけていくことで味も愛着も出てくるアイテムです。それを使い捨てだと考える人、大事にできない人は、きっとご自身も大事にできていないでしょうし、当然、人を大事にできるわけがないことは明らかです。
では、どうしたらよいか? 新品の靴を常に履く必要はありません。仕事の靴は数足揃え、同じ靴を2日続けて絶対に履かない。一回履いたら汚れを落とし、シューキーパーをはめて2日は休ませます。そうすることで一足にかかる負担が少なくなり、その靴を履ける期間がずっと長くなります。少し奮発した額の靴を購入して大切に履いたほうが、一足を履きつぶすより、仕事の結果に与える効果もコスト的にも、自己投資としてずっと良いのです。
そして、正式なビジネス靴のように光沢のあるレザーを使っているものは、しっかり磨いて綺麗に光らせておきましょう。足元をしっかり手入れすることは、自分を見つめ直すことにもなります。綺麗に手入れされた、艶のある靴を履いていることこそ、上質な大人のビジネスパーソンの証ですね。
靴の管理ポイント!
● 2日続けて同じ靴は履かない(1回履くと、靴の中にコップ1杯分以上の水をこぼしたのと同じ状態に。しっかり乾かしてからでないと、すぐに形が崩れて壊れてしまう)
● 履いたあと2日は間を空ける
● 履いたあとは埃を払い、シューキーパーを使用して形を整えつつ休ませる。丁寧にクリームを塗り靴墨で磨いて仕上げる
NG集
ポイント1 先の尖りすぎた靴
チャラチャラしているように見えます。
ポイント2 おやじ靴
脱ぎ履きしやすさ、履き心地重視の靴(おやじ靴)はNG(運動しに行くわけではありません)
ポイント3 かかとの擦り減り、中敷きの汚れ
靴は常に綺麗に手入れをしながら確認し、メンテナンスが必要な部分はひどくなる前に修理に出す。日本では、接待でお座敷に上がることがあります。靴の外側だけでなく、中敷きの状態も確認。思いの外見られています。
写真撮影/まるやゆういち