“無条件の愛”を教えてくれたのはとあるバーにいたイケおじだった
最近、「結局無条件の愛って何なんだよ、人間である以上、見返りのない愛なんて持てるわけねえだろ」と勝手に不貞腐れていた。
“私はどんな人にも無条件の愛を持てる人間でありたい”
それを人生の指標としているのに、なかなかそうなれない自分に腹が立っていた。
そんな私に、無条件の愛をサラッと教えてくれた人がいる。
バーにいた知らんイケおじである。
ボロボロに傷ついたその日、ふらっと立ち寄ったバーにそのイケおじはいた
ボロボロに心が傷ついていたその日、どうしても一人になりたくなかった私は、自分へのご褒美に美味しいお酒を飲もうという選択をした。
少し前に訪れた時は大繁盛していたバー。
その日の客入りは、私ともう一人のたった二人だけだった。
ガヤガヤした雰囲気が苦手な私は、「静かな空間でゆっくり飲める!ラッキー!」と思いながらカウンターに腰掛ける。
しばらく飲んでいると、一人で飲んでいたイケおじに声をかけられた。
「もしよかったらこのウイスキー一杯どうですか?」
「え!いいんですか?ではお言葉に甘えて…」
(いやったぁぁぁぁ!!!!タダ酒えええええ!)
と思いつつせっかくなので頂くことに。
(あれ、これってあれだよね、ご馳走してもらったからには話しかけられるパターンのやつだよね…寂しかったし話相手くらいなら…)
と身構えていたのに、自分の席に戻り、静かに自分の酒を飲むオジ。
特に話しかけてくる様子もないので、「すみません、ありがとうございます、いただきます」と声をかけてウイスキーをいただく。
しばらくすると、次は爽やか系バーテンダーに声をかけられるのである。
「あちらのお客様からです」
はっ!!!出た!!!!映画で見たやつ!!!!
正直ちょっとテンションあがった。
「あちらのお客さま、明日ワクチン接種で飲めないみたいで…代わりにとおっしゃっているのですが、もしご無理でなければ…」
とのこと。せっかくなのでいただくことに。
(え?2杯もご馳走してもらっちゃったぞこれ、こういう時ってお返しとか礼儀とかあるのだろうか…さすがに何も返さないのは申し訳ない…)
と思いつつ、Google先生を開き、バーでの礼儀を調べていると…
オジ、そそくさと帰る。
え!?!???!???!??ちょ、まって!!!!
帰り際に咄嗟にお礼を言ったら
「いえいえ。」
と一言だけ。
スマートすぎた。
マジモンのイケおじだ。
何も受け取らずに帰ったイケおじ
お酒を2杯もご馳走してくださったのに、話しかけてきたり近づいてきたりもせず、私のお礼にも「いえいえ」と一言だけ返し帰っていったオジ。
もしかしたらこの時、「あなたの笑顔が見たかったから☆キラッ」とか言われてたら私の受け取り方も違ったのかもしれない。
ほんとうに、何も受け取らずに、見ず知らずの女に、ただ酒を2杯も奢って帰っていっただけ。
自分がそうしたいから、誰かに、そうする。
ただそれだけ。理由はない。
もしかしたらそれが無条件の、無性の愛なのかもしれない。
無条件の愛って、私が思っている以上にシンプルで簡単なものなのかも。
無条件の愛への近道を教えてくれたのは、バーで出会った知らんスマートイケおじでした。