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ワタミで月175時間の残業代未払い!残業代請求の社会的意義を熱く語ります🧡

※いつものようにこの記事は、内容自体は全文無料です。


2020/9/15、元参議院議員の渡邉美樹氏が代表取締役会長及びCEOをつとめる「ワタミ株式会社」に対して、高崎労働基準監督署から残業代未払いに関する労働基準法37条違反の是正勧告が出されました。

労基署に申告したAさんは「ワタミの宅食」で正社員として勤務していましたが、長時間労働によって精神疾患に罹患して現在休職中です。報道によればAさんの長時間残業は、過労死ラインの2倍となる月175時間に及んでいたとのことで、悪質極まるワタミの実態が明らかになったと言ってよいと思います。

本記事では、個別具体的なワタミのケースということではなく、残業代請求の社会的意義について熱く語っていきます。

☆お給料は1分単位で払いましょう

まずは、こちらの記事のおさらいから。

✅問1 残業代は、1分単位で請求できる。〇か×か?

✅問2 残業のやらせ過ぎは犯罪である。〇か×か?

覚えていますね?正解は両方とも「〇」です。

労働基準法第24条  
1 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。…(以下略)


「全額」とありますよね。30分とか15分未満を切り捨てたら「全額」になりませんから、そういう扱いは違法なのです。違反者に対しては罰則規定もあります。犯罪行為です。

もちろん、労働者に有利に切り上げて計算することはまったく問題ありません。この問題に限らず、労働法はすべて、労働者を有利に扱うならば違法にはならないと考えてよろしいです。

☆残業させたら犯罪?

これまたあまり知られていない事実ですが、原則は、会社が労働者に残業させることは犯罪行為であり処罰対象です!

労働基準法第32条  
1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法第35条  
1 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。


これらに違反すると6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法第119条)。ですから、1日8時間を超えて働かせたり、1週間7日間まるまる出勤させたりすることは、懲役刑まであるれっきとした犯罪行為なのです!

ちょっと専門的な話になりますが、この違法残業については一労働者に対して一日一罪が成立し、罰金の上限額は刑法の併合罪の規定に基づき青天井で加算されます。例えば、100人の従業員が100日間違法残業をすれば、罰金の上限額は30万円×100×100ですから、なんと30億円!労働基準法は本当は恐ろしい法律なのです。

にもかかわらず、ちっともその恐ろしさが発揮されておらず、どこの企業でも当たり前のように長時間労働が行われている実態があります。残業代を1分単位で満額きちんと支給している企業は極めてマレですし、ひどいところになると残業代そのものをまったく支給していないのに労働者を長時間酷使しています。ワタミのように。

☆骨抜き労働基準法?

では、上記のような法律があるのに、なぜ世の中に残業があるのでしょうか?

実は、長くなるので条文そのものは引用しませんが、労働基準法の33条や36条に、例外的に残業させてもよい場合についての規定があります。

例えば、「災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合」や、労使(労働者と使用者)で適法に協定を結んだ場合(これを労働基準法36条に定める協定なので「サブロク協定」と言うことがあります)には、企業は刑罰を受けることなく、労働者に法定時間外労働、法定休日労働をさせることができるというわけです。そして、ほとんどの企業にサブロク協定は存在するのです。

ですから、例外が「原則」になってしまっているわけですね😭

☆厚生労働大臣が定めた基準

とはいえ、「労使で協議すれば残業させてよい」では、事実上は企業に逆らえない労働者側の不利に、それこそ「無制限に残業させてよい」みたいな取り決めになってしまいかねません。

そこで労働基準法36条2項には、

「厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。」

と定められており、実際に基準が公表されています。

厚生労働大臣が定めた「時間外労働に関する基準」によれば、例えば「1年間の残業時間は計360時間まで」となっています。

1年間で360時間ということは月に30時間、1日当たり約1.5時間平均です。これしか残業させちゃいけないって、ご存知でしたか?

もっとも、残念ながらこの基準には強制力がありません。実際には、制限を遥かに超える残業が横行していることはご承知のとおりです。ワタミや電通のように。

☆残業に対しては割増賃金を支払わないといけません!

法は、法定時間外労働、法定休日労働、深夜早朝労働(以下この記事では、これらをひっくるめて「残業」と呼びます)のそれぞれを労働者にさせた場合には、所定の率による割増賃金を支払うことを企業(使用者)に求めています。

例えば有名なところでは、

1日8時間を超えて働かせたら、その分の時給は1.25倍にしないといけません。

ですから、時給1000円の仕事を1日に10時間こなせば、8時間分は8000円ですが残りの2時間分は時給1250円以上でないといけないので、2時間で2500円、10時間の合計給与は10500円になります。あなたの会社やバイト先、ちゃんとこのルール遵守してますか?

あと、いわゆる深夜労働の規定もあります。

✅深夜22時~早朝5時までの時給も1.25倍にしないといけません。

上記2つの規定は重畳適用されます。例えば、13時~24時、休憩1時間で働けば(休憩は深夜ではなかったとします)、13時~22時については休憩を除くと実働8時間なのでこの部分は8000円、そして22時~24時は、8時間を超えてかつ深夜労働ですから25%増しがダブルで50%増し(1.5倍)、つまり時給1500円となるので、2時間で3000円。合計で11000円もらえます。

大丈夫ですね?

☆法の趣旨を踏まえよ!

労働基準法は、なぜこのような割増賃金を要求しているのでしょうか。

割増賃金は、企業にとっては「制裁」、労働者にとっては「補償」の意味があります。法は、このような割増賃金を設定することで、残業を抑制しようとしているわけです。

つまりまともな企業であれば、一人の人間に1日に8時間残業(つまり計16時間労働)させて1.25倍とか1.50倍以上の賃金を払うよりも、もう一人雇って別々に8時間ずつだけ働かせるほうがリーズナブルであるという経営判断を下すはずです。

ですから、労働者に超長時間労働をさせる会社というのは、まともな経営判断ができない会社か、ハナから残業代など支払う気のない悪質極まるブラック企業かいずれかでしかあり得ないわけです。ワタミは後者です。

割増賃金の未払いも犯罪です。6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法第119条)。

☆付加金

さらに労働基準法114条には、裁判所は企業に「付加金」の支払いを命じることができる、とも規定されています。

簡単に言えば、未払い残業代が500万円であっても、裁判で取り戻すと裁判所が2倍の1000万円の支払いを命じてくれる場合があるというわけです。まさに「制裁金」です。使用者の立場にしてみれば、判決が出る前に、任意に支払ったほうが半額で済むわけですから、これは労働者にとってとても強力なルールです。

この「付加金」という名の制裁金制度は、日本の法体系の中では非常に珍しい制度と言え、それだけ労働者が厚く保護されているということにはなります。ただし、「裁判所は…付加金の支払を命ずることができる。」なのであって、「命じなければならない」とはなっていない点がアキレス腱です。ちなみに船員法116条では、付加金は義務化されています。船員法でできることがどうして労働基準法でできないのか。自公政権の本気度を疑いたくなります。

☆サービス残業をしてはいけない理由

以上見てきたように、法は幾重にも規制をかけることで、長時間労働を抑制しようとしています。

しかし、ここで注意しないといけないことは、労働者側が残業代をきちんと会社に請求し、会社にきちんと払わせることで初めて、法が予定する長時間労働の抑制規定が機能するということです。訴訟をしなければ付加金の規定などまったく無意味ですし、労働者が残業代未払の状況に甘んじていては、会社も長時間労働を抑制しようとはまったく考えません。

法は、自ら助くる者のみを助くのです。労働者は自らに与えられた権利を知り、それを行使することが重要です。でなければ、世の中からブラック企業がなくなることはありません。

以前にも書いたとおり、ブラック企業の多くは超長時間労働を労働者に強いています。超長時間労働の有無が、ブラック企業かそうでないかの1つの分水嶺であるとも言えます。

法を遵守しないブラック企業を野放しにすると、法を遵守しているまともな企業にとっては不利な条件での競合を強いられますから、経営が苦しくなります。何か対処しなければ、まともな企業ほど倒産に追い込まれ、ブラック企業だけが生き残れるという、不正義極まる状況になってしまうのです。

ですから社会正義の実現のためにも、ブラック企業は徹底的に糾弾して叩き潰さないといけません。存続を許してはいけない存在です。

残業代請求は、あなた一人が得をするというだけの話ではないし、ましてや、がめついとかそこまでするかといった謂れのない誹謗中傷を受けるようなことでは決してありません。

1分単位で未払い残業代をきちんと請求し、任意に払われないのであれば臆することなく提訴すること。それこそが、ブラック企業を殲滅する第一歩なのです。社会正義を実現するために極めて重要なことです。

そうやってブラック企業の存在自体を許さない社会状況にもっていくことが、労働者の命を守ることにもなります。わが国では、労災として認定があるものだけでも、年に約100人もの人がブラック企業で自殺(未遂含む)を図っています。あなたの残業代請求が、彼ら彼女らの命を救うことに繋がります。第2の高橋まつりさんを出さないためにも必要なことなのです。

☆まとめ 残業代請求で社会正義を実現しよう!

ここまでを踏まえて、改めて、

✅ワタミが月175時間もの残業をさせた。

✅しかも残業代を払っていなかった。

✅従業員は超長時間労働のせいで精神疾患による休業に追い込まれた。

という事案を見てあなたは何を感じるでしょうか。

抑えようのない、フツフツと燃え滾る限度のない怒り💢を共有していただけたら幸甚でございます。

あなたや大切な人の命と健康、暮らしを守り、以って社会正義を実現するために、これからも労働法に興味・関心を持っていただけたら私も嬉しいです。

長くて難しい文章を最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。コペル&アヤでした!🧡またねー!😊💕


結論!

🌹1分単位での残業代請求こそが、社会正義を実現する第一歩!


<併せて読みたい>

私の原点。元電通社員、高橋まつりさんと労働法。

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※「ブラック企業」という言葉について

ロクでもないものを指して「ブラック○○」と表現するのは黒人差別である、とする見解があります。確かに一定の説得力がある見解です。熟慮しましたが、当記事ではブラック企業という言葉を採用しました。このことについては、本記事は既に長くなっておりますので、別に記事を設けて近いうちにご説明したいと思います。コペル&アヤは、黒人差別だけでなくあらゆる差別の解消を切に希求するものです。下記作品を参考に貼らせていただきます。


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