ヴォーグ パリ展
現在も刊行されているフランス最古のファッション誌。ヴォーグ・パリ(Vogue Paris)創刊されてから100年が経ちました。
パリのガリエラ宮で開催されている「Vogue Paris 1920~2020」展があまりに素晴らしかったので紹介させてください。
場所はガリエラ宮。パリにあるネオルネッサンス様式の建物で1977年以降パリのファッション博物館として使用されています。
今はコロナ禍ということもあり、チケットは全てオンラインでの先行予約が必要でした。人気が高く私は二日ほど待ちましたが、逆に入場制限していることでゆったり見れたのが良かったです。
入ってすぐに100年分(400枚)のヴォーグの表紙の門が迎えてくれます。
1920代最初の頃のものはイラストでモデルは写っていません。見出しなどもなくバーンと一枚のファッション画で構成されています。
もう芸術作品と呼べるほどものばかり。30年代に入ってくるとモデルの写真が主流となってきます。
カメラの技術もあってのことでしょうが、どのモデルもポーズが大人しく、どこか彫刻のようなイメージがあります。
時代順を進んでいくと心躍るお楽しみが待ち受けています。
それは知ってるモデル、自分の好きな顔を探して行くこと。50年代くらいからちらほら見た事ある顔、また有名な表紙が現われ、ワクワクし通し。
会場に来ている方は幅広い年代に渡っていましたが。どの年代で立ち止まるかが分かれていて、それを見るのも楽しかったですね。
そして素晴らしいのがこの表紙の門の裏側です。
全ての号の裏側にその代表的ページが紹介されていました。このへんで興奮しすぎて鳥肌立ちっぱなし。ファッション記事が多かったですが、教養やマナーのページ、デザイナーのインタビューも。
雑誌の誌面でなく、実際に撮影に使われた衣装も見ることができました。
シックなボウタイの背中には華やかなゴールドの刺繍のこのコスチュームは30年代のもの。保存のクォリティが完璧で全く古く感じさせなかったのに驚き。
中でも多くの方が囲んでいたのがこのブース。
ディオールの1947年春夏のニュールックが展示されていました。ファッションが好きな人ならみんな知ってますよね!な作品。あんまり大きなファッションイベントでない時には、レプリカが展示されていたりするのですがこれは本物でした。
まるで美術館で教科書に載ってる有名な絵画を見るよう。
またこのヴォーグ展の良いところはショーケースをできるだけ壁にくっつけないように展示しているので、横から、背後から衣装を見られます。これは服好きには嬉しいところ。雑誌では大抵正面かしか見れないものがじっくり観察できました。
お次はクレージュ1965、キター!こんな有名なもの。それも帽子も靴もセットで来た!
長年、このクレージュの帽子はどういうものなんだろう?とずっと謎でしたが、立体で観察できてよく分かりました。
お次はシャネル!
ココシャネル時代でのものではないですが、表紙になったものと一緒に展示されていました。これも帽子、バッグ、アクセサリーも一緒に。若い女性が熱心にメモを取っていたのが印象的。
そう、若い女性たちが多く集まっていたブースがこちら、親子2代でスーパーモデル、シンディクロフォードの娘のカイア ガーバーのコスチューム。
写真からの想像を上回るこのボリューム、艶やかなフーシャピンク。実物を目にすると、これを着こなせるモデルの凄さが分かります。そういった意味では一番迫力があった展示でした。
デザイナー別ということではサンローランデザインものもが最多。実物と写真で一つのブースができるほど充実。ヴォーグと相性の良かったデザイナーと推測されます。
このヴォーグ展はファッションだけではありません。その当時、当時の人気のあったモデルやセレブリティの写真も多く見せてくれました。
小枝みたいと言われたツィギー。当時の記録で168センチ41キロとあったので、モデルとしては小柄だったのが分かります。
ジェーン・バーキン。彼女の写真の所は老若男女問わず、人だかりが出来ていて、当時のフォトシューティング(撮影風景)の動画を公開していました。これは人気のはずですね。
今回のヴォーグ展の顔にもなったカトリーヌ・ドヌーヴ コーナー。
彼女だけは表紙を集めた特別な展示が。どの写真が一番良いかを言い合っている老夫婦もいて、思わず『私も混ぜて欲しい』思ったくらいです。
最後は1990年代からのスーパーモデルの出番。
どれも見た顔ばかりでさらに嬉しくなります。
そしてケイト・モス。
表紙の登場回数歴代2位が彼女(1位はかなり昔の知らない人でした)。90年代初頭から今まで約30年現役で活躍をしているのは本当にすごい。ヴォーグ展のトリを飾っていました。
戦争により、ドイツに編集室を一時的に移したり、変則的な刊行となったりしても1世紀に渡る美文化を紡いできたヴォーグ。美しさだけでなく、時代によってしなやかに形を変えて生き抜いてきた強さまで感じさせてくれました。
Vouge Paris 1920-2020
Musee Galliera
2020 1 月30日まで
おまけ。
会場となったガリエラ宮(Palais Galliera)についてもう少し詳しく話しますと、元々は1890年代ガリエラ公爵夫人が、自分の美術品を集め建てた館でした。
彼女の死後、パリ市にその美術品と建物を一緒に寄付をして、モードの博物館となりました。つまり、当時の衣装やアクセサリーなどもたくさん保管されているということです。
ヴォーグ展の地下で行われていたのが、そのお宝も活かしたモードの歴史常設展。
18世紀から現代まで服飾の流れを順に追って、見せてくれます。
こんな見事なクオリティで200年もキープできてるのに驚きますが、やっぱり面白くなってくるのは60年代くらいから。
この当時のものは色も形も大胆で素材も面白い。ちょっとSFチックなのは、未来がまだ不透明だった時代だからなのでしょうか。
80年代以降のアバンギャルドにギャルソン、ヨージが入っていて嬉しい。
でも、私が一番興奮したのはこれ。本物を初めて見ました。
ヴィヴィアン・ウエストウッドが1976年開いたブティック セディショナリーズのモヘアセーター。当時のパンク達がボンテージパンツの上にピタピタで着ていたあのモヘアセーターが!パンクのシンボルの一つでもある安全ピンをセーターの真ん中に!
すごいもの持ってるなあ、もうこれはさっき見たヴォーグ展でお腹っぱい、と思ったけど、そこからおかわり3杯した、気分。
ごちそうさまでした。
おまけのおまけ。
ルネ・グリュオーの原画も間近で見れます。
美しいものは心を満たしてくれます。実際に目で見る、ということが今まで以上に大切ということがよくわかったヴォーグ展でした。
1日も早くこの非日常からみんなが抜け出せて、一緒に出かけようよ!と言えるようになりたいです。