「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」 〜 国立新美術館
12月4日、国立新美術館「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」を鑑賞。
会期が終わるころにやっと備忘録として note に雑感をまとめました。
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東京ミッドタウンへ立ち寄ってから国立新美術館へ行こうと六本木駅で下車。
買い物を終え国立新美術館方面へ向かう途中にはバーニーズ ニューヨーク 六本木店がある。やはりウィンドウディスプレイは見ておきたいとショーウィンドウに近づく。
通行人を立ち止まらせる華やかでインパクトあるホリデーシーズンのディスプレイ! 編み物で表現された物語の世界をガラスに顔をくっつけて目をキラキラさせて見入った。
イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
Yves Saint Laurent, Across the Style
イヴ・サンローランの作品を纏った マネキン110体が展示された空間を観るだけでも、きっとパリコレの歴史を垣間見られるだろう、ぐらいの気持ちで訪れた。
アルジェリアで生まれたイヴ・サンローランの写真などが展示された Chapter 0 ある才能の誕生 では、彼の手による数々の優れたデザイン画やスケッチ、唯一残した絵本「おてんばルル」の原画からわくわくするような若々しい生命の躍動が放たれていて、そこで既にイヴ・サンローランの世界へトリップ、そしてイヴ・サンローランによるクリスチャン・ディオールの1958年春夏「トラペーズ・ライン」オートクチュールコレクションの「品行方正」シャツ・ドレスの清楚でエレガントで初々しいフォルムに特に魅了された。
次々と展開されるテーマに沿った作品展示、中でも Chapter 2 イヴ・サンローランのスタイルアイコニックな作品 の展示では、紳士服からヒントを得て作られたタキシードやジャンプスーツ、サファリ・ルック、トレンチコート、ピーコート、パンツスーツの装いのマネキンたちが、生命を吹きこまれてランウェイを闊歩しているように見えてくるから不思議。
今、モデルたちがそれぞれ好きな作品を思い思いにコーディネートして装ったショーを開いたとしても古めかしさはないだろう。まさしく“ファッションは廃れる。だがスタイルは永遠だ”という彼の名言の証明だ。
そして「ココ・シャネルは女性に自由を与え、イヴ・サンローランは女性に力を与えた」という彼のパートナー、ピエール・ベルジェの賛辞に納得させられる展示がさらに続く。
スクリーンで上映されるフィルムがまた面白い。モデルたちが作品を纏い、ランウェイを闊歩する数々のショーのドキュメンタリーフィルムを観ながら、服はニンゲンが装ってこそ命を吹き込まれるものであり、「服装は生き方である」という言葉を思い出した。
Chapter 9 アーティストへのオマージュ
唯一の写真撮影可の展示コーナー。
画家や作家など多くのアーティストたちと交流し、彼らの才能へ敬意を払った作品、特にピカソ、マティス、ブラック、ファン・ゴッホ、ボナールへのオマージュ作品がずらりと並ぶ。
大人気の展覧会。
写真撮影をする人、作品に近づいて真剣に観る人・・・
Chapter 11 イヴ・サンローランと日本
イヴ・サンローランと日本の関係を資料を通して紐解く展示で展覧会は終わる。
当然ながらイヴ・サンローランの洋服を買ったことなんてない。そりゃそうだ、高嶺のラグジュアリーブランド、持っていたのはせいぜいハンカチぐらい。
それでも彼が創り出したスタイルは日本でもコピーされ、ちょうど70年代前半に大学生だった私もパンツスーツやカクテル・ドレス(50歳から洋裁を習い始めた母の仕立て)はよく着ていたことを懐かしく思い出し、お茶でもしようと一人で1階のカフェで、カフェオレを注文した。
ほっと一息ついてから溜池山王駅へと向かい、帰宅。
電車の中で、ふと同時代の日本人デザイナーたちのことが脳裏に浮かんだ。
高田賢三とコシノジュンコ、二人はイヴ・サンローランより3歳年下。
ネットで検索していたら、「高田賢三自伝・夢の回想録」が亡くなる前に出版されていて、早速図書館で借りてきて、一気に読み終えた。
誠実で素直に記された賢三さんの歩まれた人生を読み終えると、イヴ・サンローランと彼の最愛のパートナーであるピエール・ベルジェのこと、パリモードのこと、60年代末から70年代の変革期のあの時代のこと、パリ五月革命がもたらした大きな価値観の転換といったことが、一本の映画のように繋がった。
1980年代だったか、西武百貨店にKENZOのショップが出来たとき、ソニアリキエル、ヒロココシノもあり、彼らは私の大好きなデザイナーになった。40年ぐらい前に買ったKENZOの服を今も一着だけ残している。フォークロア調の数色のストライプのギャザースカートは、複雑な切り替えでとても美しい流れのデザイン。
手に取り布に触れ、これを着ていたころの思い出に暫し浸る。
イヴ・サンローラン展から広がったあの時代への追憶。
色々な人生を 識ることで私たちは豊かになれる。
これだから展覧会めぐりはやめられない。
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