夫婦エッセイ : ランチジャーのお弁当と課長の愛妻弁当
あるお正月休み明け、奥さんは毎日お弁当を作ってくれるのだが、その日
奥さん
「あなた、お餅が沢山余っちゃてるの。今日のお弁当、お餅でもいい?」
僕
「お餅? いいけど、お餅はくっつかないか?」
奥さん
「ランチジャーのご飯の所に入れればくっつかないの。私のお父さん、お餅が大好きでよくお弁当に持って行ったの。」
会社のお昼休み、社員食堂のテーブルに着いて、
ランチジャーのお弁当を出すと、超愛妻家で有名な
僕の上司の課長が僕の前の席に座った。
課長
「鈴原くんも愛妻弁当か、僕もだよ。鈴原くん、社員食堂の中をよく見回して見るといい。世の中には結婚しているのに奥さんにお弁当を作ってもらえない男がこんなにいるんだ。悲惨な光景だよ。」
課長はそういうと可愛いお弁当袋に入ったお弁当を
テーブルの上に置いた。そして嬉しそうに微笑みながらお弁当箱を取り出し蓋を開けた。
僕
「課長、ご飯の上に桜でんぶがハート型にのっていますね。」
課長
「妻は毎日必ずハート型の物を1つは弁当に入れてくれるんだ。」
課長はそう言うと、手を合わせて、頂きます、と言って、嬉しそうに美味しそうに奥様に作ってもらった愛妻弁当を食べ始めた。
ランチジャーのご飯の所を開けると、僕が大好きな
磯辺焼きのお餅が入っていた。僕が食べ始めると
課長
「鈴原くんの愛妻弁当は餅か!? でも餅はくっつかないか?」
僕
「ランチジャーのご飯の所に入れておくとくっつかないんです。」
課長
「ランチジャーか・・ 僕も餅は好物なんだ。」
課長はそう言うと、磯辺焼きを食べている僕を羨ましそうに見ていた。
磯辺焼きを食べ終わると、ラップに包まれた安倍川餅が出て来た。僕はデザート感覚で食べ始めた。
すると、
課長
「僕も安倍川餅は好物なんだ・・」
と言って、僕が安倍川餅を食べているのを見ていた
翌朝
奥さん
「あなた、お弁当、もう1日お餅でもいい?
その代わり、あなたの大好きなお汁粉にするから。」
僕
「お汁粉?」
奥さん
「ランチジャーの汁物の所に温かい餡を入れておくから、ご飯の所のお餅にかけて食べてね。」
お昼休み、社員食堂に行くと、課長がランチジャーから餅を取り出して、嬉しそうに美味しそうに食べていた。
僕はテーブルにつくと、奥さんに言われた通り
ご飯の所に入っているお餅に餡をかけてお汁粉にして食べ始めた。
すると、
課長
「鈴原くんの今日の愛妻弁当は汁粉か!?
確かにそうやると汁粉になるな。僕も汁粉は好物なんだ。まあ、僕は粒あんよりもこし餡の方が好きだけどね。」
その次の日の朝
奥さん
「あなた、2日もお弁当をお餅にしてごめんなさいね。今日のお弁当は、あなたが好きなカツカレーにしたから。おかずの容器にある豚かつをご飯にのせて、汁物の容器に入っているカレーをかけて食べてね。」
お昼休み、社員食堂に行くと、課長がランチジャーで嬉しそうに美味しそうにこし餡のお汁粉を食べていた。
僕がランチジャーでカツカレーを作って食べ始めると、課長が
課長
「鈴原くんの今日の愛妻弁当はカツカレーか!?
ランチジャーはオーソドックスにカレーが1番あうかもしれんな。鈴原くんは、カレーと一緒に福神漬けとらっきょの甘酢漬けも食べるのか!? 僕はカレーには福神漬けのみだと思うね。らっきょは邪道だよ。」
課長はその後、僕がカツカレーを食べるのを羨ましそうに見ていた。
僕は、明日の課長の愛妻弁当はカツカレーになると思った。
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