『我が家の新しい読書論』8-3
ESくん
またDo As Infinityだ.
EMちゃん
ずっと聴いてるよね。ずっと寝転がって本を読んでもいるし。まぁ、
Do Asは私たちの好みでもあるから聴こえてくるのは構わないんだけど、ち
ょっとは私たちと遊んで欲しいわね。
ESくん
特に『陽の当たる坂道』と『冒険者たち』と『深い森』でしょ。もうしば
らくは仕方がないよ、しばらくそっとして、あとで温泉にでも連れ出そう。
EMちゃん
そうね、だからしばらく巣籠りするつもりだったのか、食料と飲み物、そ
れと紀伊国屋書店で大量に本を買い込んでたわね。柳宗悦の『民藝図鑑』、
森茉莉の『貧乏贅沢のお洒落帖』『幸福はただ私の部屋の中だけに』、若松
英輔の『悲しみの秘儀』、片岡一竹の『ゼロから始めるジャック・ラカン』、町田康の『きれぎれ』『記憶の盆踊り』、村上龍の『愛と幻想のファシズム』
等々ね。
ESくん
古巣には寄れたんだ。それはそれは、過去と未来へ向かって読書旅行中っ
て感じかな。まあでも、渓太くんらしい選書だし仕事もしていてちょっと安
心したよ。新しいノートも書いてるみたいだし、案外楽しんでるんじゃない。
EMちゃん
たしかにVR の旅行みたい。逆にお節介で選書をしてあげるとしたら、レ
ベッカ・ソルニットの『迷うことについて』かしらね。
ESくん
ネガティブ・ケイパビリティ(消極的能力)ね。いたずらに事実や合理
を追い求めないで、不確実な状況や謎や疑いのうちに留まっている能力。
あの状態もそういうことなのかもね。
EMちゃん
そうね、横になって心臓を休めながら、本を多読しているわけだから。
ESくん
最近さ、みんなで議論した「本は不動の二番手」の事をよく考えるん
だよね。読書論を銘打っているけど、自分たちにとっても、本と読書は
決して一番手ではないって結論した話し。
EMちゃん
あったあった、みんなで何が自分の一番なのか言い合った奴ね。私は
候補があり過ぎて決められなかった(笑)
ESくん
そうそう、2位は確かに本と読書のような気がするんだけど、1位を
決めるのって難しいよね。現代病かも。でもボクは、ファッションかな。
EMちゃん
その視点でみるとしたら、渓太くんがいまずっと本を読み続けている
のは1位の席が空いたからと言うこともできるわね。1位がlessになった
から、次の1位を探して本を読んでいる。空になったから、移ろってる。
ESくん
2位の本と読書はいつでもそばにあるから、1位が空席になっても支
障がでないと。まぁ、ちょっとやつれた気もするけど。じゃあ、ボクも
お節介で、EMちゃんの選書につなげて、馴染みのこの一冊からゆるく。
EMちゃん
やられた、引用がうまいわ。コップカップグラスは私たちのシンボル
だし。ちな、ESくんは割れたグラスのイメージ(笑) 続けて。
網口渓太
だから新しいことを始めたくなる。始末、ビギニングとエンディング
はつながっていると。この本ほんといいよね。
ESくん
おぉ、渓太くんおはよう。そうなのよ、この続きも最高なんだけど、
「言語を習得した有機体S1は世界を言語によって観念化して、いたる
ところに類似の出来事の反復を読み取り」ってフレーズやばくない?
網口渓太
家の奥に触れられていてヤバいね(笑) 読書を面白がれる人とそうで
ない人の分岐点もこの辺りの解釈の違いにあるんだろうね。
EMちゃん
ハイ温かい紅茶。やだこのまま読書論の研究会始める? ところで渓
太くんはずっと何のメモをまとめてるの。
網口渓太
そうだねいい機会だしやろうか。メモはね、松岡さんの講義をまとめ
てる。だからふたりの引用の抜群のタイミングに驚きを隠せない(笑)
ESくん
30代も賭けるんだね。「思考のプロセスにおいて異端者たれ」か。今日はゆっくりするつもりだったけど、やりますか。おやつ持ってくるわ。
EMちゃん
講義ってミメーシスのやつ?
網口渓太
そうそう、網家はこの講義を背景にして生まれているからね。再確認
を込めて。二番目は本と読書、そして一番大事なのはこの家の活動だか
ら。その再確認も込めて。