ESくん
今日の輪読の箇所を予習してたんだけど、そうしたら『夫婦茶碗』の筒井康隆先生の解説を思い出してさ。ここなんだけど最高なんよ、ちょっと見て。
「遠まわしに自分を褒めてる感じ」、確かに文学作品の解説を読むときに
毎回ちょっとそう思ってたかもって。違和感が言語化されてすごいスーッと
した。
EMちゃん
今度から絶対解説をこの目で読んでしまうわ。流石は『悪魔の辞典』ね。
網口渓太
自分が書いた作品の解説を、自分が好きな作家が、自分と似た部分と重ね
て書いてくれたら、嬉しいやろうね。町田さんは筒井さんの作品好きやしね。
EMちゃん
そうだそうだ! ブルータスの「危険な読書」の特別編集号で町田康さん
が「筒井康隆と私」ってタイトルで、筒井さんの評論を書かれてたわ。私も、マチコーのファンだから。
ESくん
なるほど。解説文の「恥ずかしい」が別の意味に思えてきたよ(笑)
網口渓太
「うしろめたさ」的なね。じゃあ、ぼちぼち始めましょうか。今日は179
ページの2行目からです。
どうだろう、どこか気になった箇所ある?
ESくん
そうだね、ボクは秩序があってカオスがあるという二元論に納まらない対
話をしたいから、感想の前にちょっと別の著書の引用を重ねさせてもらうね。
あぁ、セール面白れぇ。集団を統治するためには、交通標識とか文字とか、コードと意味の関係が共有されている必要があるということを再確認してる。と同時に、「あるがままの多」を可視化する手段や方法がないのも同様に。
網口渓太
ディオニュソス(マニア「熱狂」とオルギア「騒擾」の神)もスサノオも荒ぶる神は原初から隠されていると。この前の斎藤環さんと佐藤優さんが話されていたトラウマの話もそうだよね、創作話をつくることで自分たちのコンプレックスを乗り越えようとした(→)。現代の日本人なんて、秩序を壊すもの、ルール違反がとにかく許せないみたいだから、自分と直接関係のない人物の問題にまで顔を突っ込んで、何かが生まれる可能性を秘めたかもしれないノイズまで取り除いてしまっているかもしれないね。
EMちゃん
芸能人とかイメージが商品の職業の炎上の様子は象徴的ね。集中砲火を浴
びている姿は、まさに贖罪の羊(スケープゴート)よ。渡部さん……、宮迫
さん……。
ESくん
止めなさい(笑) イメージの酔いからは、覚めていたいよね。続けるよ。
網口渓太
なるほどね。ESくんの興味は、理解ができる意味のあるものを片端から
集めるパラノ的なやり方ではなく、理解ができない意味がないものとその場
でなってしまうスキゾ的な物事の成り立たせ方の方だね。
ESくん
コードが大事なのはわかる。社会を成り立たせるためにも必ず必要。でも、社会以前に人間(本来)がベースだと思うから、身体のものさしでみていると、パラノに蓄えるよりも、スキゾに逃れていきたい気分ではあるよね。
EMちゃん
コードを共有できていたら、共通点とか見つかってさ、筒井先生の「遠ま
わしに自分を褒める」みたいに、ノリが合って楽しくて楽ってイメージが浮
かぶけど。そっか、もしかしたら世間はそんな軽い空気すら、「仕事してな
いで遊んでる」みたいなルール違反を感じとって取り締まるんじゃない。
ESくん
わざわざ残念な方になりにいってんじゃん(笑) でもそんな感じするわ。
網口渓太
社会が窮屈であるからこそ、本や著者や読書の存在が、避難場所になるの
かもしれないね。そこでは違う世界を作れるから。じゃあ、続きを読もう。
人の数があってこその市場の活性化だけど(→11-1)、人数が増えると
お上のわからないが増えるから、そうならないように監視をしたりルールを
設定して、取り締まりを強くする。確かにまるで誰かひとりの為だけの世界
って感じはするかもしんない。
ESくん
「ポスト・トゥルース」ね。『one-piece』のイムさまみたいな。
EMちゃん
「SFプロトタイピング」もある意味「やらせ」みたいなものよね。でも、似て非なる印象なんだよな。正義も悪も「ウソ」を使う。
網口渓太
ルフィーは海賊だけどいいやつみたいに、矛盾している方が本来って感じ
がするよね。ついでに次のページも読んでしまおう。
ESくん
「いじめ」な。クセのある子とか、気になる子とか、いわゆる例外の子供
っていじめの対象になりがちだけど、あれもコードの理解の有無が関係する
のね。柔軟な子供の頭でも駄目なのか!
EMちゃん
「いじめ」と「いじり」の線引きも難しいよね。下手くそとか、話下手と
か、コードの読みのズレが笑いになる事もあれば、陰湿になる事もある。
網口渓太
みんな初めは下手で当然なのにね。
EMちゃん
あっ、そういえば京子さんもそんな話ししてたな。
ウワサは「元をたどれど根っこ無し、火の無い所に煙立つ」って的を得す
ぎじゃない?
ESくん
筒井先生の解説はどこか「真実」を語っているような鋭さが好みだったけ
ど、スキャンダルていうのは確かに。でも、ウワサが絶えないって事は、や
っぱりみんなも、よくわからないものを摂取せずにはいられないって事でし
ょう。
網口渓太
スキャンダラスでクセがあるといえば、マチコー先生はまさにプロトタイ
プだよね。いやぁ、かなり広がったね。じゃあちょっとここいらで、いくつ
かキーポイントを立てて、まとめようか。コードの編集、モードの編集。