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【なにげに文士劇2024】リレーエッセイ

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筆一本で世にはばかる文士(作家)とその仲間が集結! 130年以上の歴史を持つ文士劇、大阪では実に66年ぶりの旗揚げ公演となる『放課後』。出演者の想いをお届けします!
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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#7【木下昌輝】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#7【木下昌輝】

芝居の教訓:行間を読め文:木下昌輝

 30年前のリベンジができる。
 文士劇のお話を朝井まかてさんからいただいた時、そう思ったのだった。

 30年前、私は20歳を目前にした青年だった。暇を持て余した私は面白い短期バイトはないかと、バイト情報誌・フロムエーをめくっていると「ヒーロー着ぐるみショー」の募集を見つけたのだ。
 演目はセーラームーン(と仮面ライダー)。興味本位だけで申し込むとなぜか採用

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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#6【村角太洋】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#6【村角太洋】

超えた先にあるもの文:村角太洋

 最近まで恐れの日々であった。

 11月16日に1ステージだけ上演される祭典のような舞台、なにげに文士劇「放課後」(原作:東野圭吾)の脚本・演出を担当することになった。
 文士劇とは作家による芝居のこと。
 役者として舞台に立たれるのは、文章と言葉を巧みに操るワードマジシャンたちである。

 さて、ここで、私の今回のポジションを思い出していただきたい。
 私、脚

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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#5【小林龍之】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#5【小林龍之】

芝居心の火に焼かれ文:小林龍之

  今回の文士劇の出演者に私がただ一人の編集者として参加しているのはなぜなのか。それは自分から出たいと言って手をあげたからです。

 最初はそんなつもりはありませんでした。編集者はあくまでも作家の裏方です。初めてこの話を聞いた時は、某先生にお願いしている書き下ろし新作がますます遅れてしまうのではと考え、どちらかと言えば賛同できない気持ちでいたのです。

 一方、日

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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#4【百々典孝】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#4【百々典孝】

西の作家たちがつくってくれたいい流れ文:百々典孝

 出版業界を盛り上げる。業界関係者たちよりもまず作家たちが動いた。
しかも勢いに乗っている西日本の作家たちが。

 7月17日に一穂ミチさんの『ツミデミック』が第171回直木賞を受賞され関西の作家の直木賞受賞者がまた一人増えた。

 その日は紀伊國屋書店梅田本店で【関西版元合同フェア】を7月5日~22日まで開催していた。関西版元合同フェアとは関西

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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#3【澤田瞳子】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#3【澤田瞳子】

記憶の行き先文:澤田瞳子

 ――えらいことになった。
 最近ほぼ毎日、そう呟いている。言わずと知れた「なにげに文士劇」のことだ。

 今から二十七年前、東京・よみうりホールで日本推理作家協会五十周年記念文士劇「ぼくらの愛した二十面相」が一度だけ上演された。小説を愛する大学生だった私に、四十三人もの作家による舞台は憧れだったが、チケットは何と十分で完売となった。幸いその後BS放送にて舞台の様子が放

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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#2【一穂ミチ】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#2【一穂ミチ】

私信文:一穂ミチ

 文士劇、というものにお誘いいただき、「文士」の部分にも「劇」の部分にもまったく自信がないのだけれど、おもしろそうなので「やります!」と軽率に答えた。去年九月の決起集会では「なるべく台詞のすくない役を……」「木の役を……」と志願するメンバー続出で親近感しかなかった。演目って『与作』でしたっけ。

 そのすぐ後、旅先でトレッキング中に足を挫いてしまった。不幸中の幸いというべきか最

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なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#1【朝井まかて】

なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#1【朝井まかて】

作家たちの「放課後」 
文:朝井まかて

文士劇? 作家による素人芝居のことです。
 
楽しそう! はい、楽しいです。アホですねえ。はい、アホです。
 
きっかけは、先輩作家・葉室麟さんのお墓参りに遡る。あの日、東山彰良さんと澤田瞳子さん、そこに髙樹のぶ子さんも加わってくださって墓前で献杯し、場所を移してお茶を飲んでいた。なぜそんな話になったのか記憶が曖昧だけれども、ふと文士劇やりたいなあと呟くと

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