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アメリカの小学校のブックフェア。期待するのは本を読むことだけではない

子どもたちの学校で、ブックフェアが開催されている。

毎年秋のこの時期に、学校の図書室が1週間だけ本屋さんに変わるのである。家庭によって方針はさまざまだと思うけれど、多くの子どもがお小遣いをもらってきて、その範囲内で好きな本を買う。

このブックフェアは、学校と出版社との契約のもとで行われている。売上げの一部が学校の運営資金として還元される仕組みになっている。その資金で、新しい本や教室の備品などを購入することができる。

つまり、このブックフェアは学校のファンドレイジングの一環である。

それだけではない。

出版社は本が売れる。学校は生徒に本を読むことを促す教育目的と運営資金を作り出す財政目的の両方をいっぺんに叶えられる。生徒は本を読むことが促される。

三者ともにメリットが得られるこのシステム。賢いと思う。

このブックフェアを盛り上げるために、学校は様々な工夫をしている。

例えば、何週間も前から、ブックフェアに出される本のカタログを数回に分けて配布する。子どもたちは、そのカタログを繰り返し眺めながら、これがほしいとか、やっぱりあれがほしいなどと気持ちを高めていくのだ。

また、ブックフェアが開催される週の半ばに、キャラクター・デーなるものが設定されている。子どもたちは、本の中の自分の好きなキャラクターに扮して学校へ行くのである。

まるで、ハロウィーンの再来かのような光景になる。その日、スクールバスのバス停には、『アナと雪の女王』のアナが2人に、エルサが1人いたし、『ウォーリーを探せ』のウォーリー、それにスパイダーマンがいた。コスチュームって着るだけで楽しいし、特別な気分になる。

それから、クラスごとに、ブックフェアで本を見てまわる時間と本を買う時間が、それぞれ1回ずつ、週のスケジュールの中に組み込まれる。買う・買わないは自由だと言いながらも、子どもたちの気持ちを盛り上げて、それとなく親へもやんわりとプレッシャーをかけながら、買う方向へと誘導している(ように感じる)。

これらの試みは、少なくとも我が家に対しては功を奏している。わたしは、子どもたち(小1と小2)に15ドルずつ支給し、しっかり吟味して、本当にほしいものを買うように言い聞かせた。

間違っても、表紙の絵だけで選んだり、おまけのおもちゃ目当てに買わないこと。中身を少し読んでみて、続きをもっと読みたいと思える本を買うこと。

ブックフェアの目的は、本に親しみ、もっと本を読もうということだと思う。我が家でもそうだ。

でも、それと同じくらいの重みで、お買い物のレッスンでもある。

普段、子どもたちにとっての買い物とは、「これがほしい」という気持ちを強く表現して、親を説得することだ。でも、いま彼らは現金を手にしている。親を説得する必要などない。

その代わりになにをしているかというと。

彼らは、ほしいものをピックアップし、それぞれがいくらするのかを書き出し、自分の満足度を最大化するためにはどういう組み合わせにすべきかを考えている。

普段、「これ買って」という前に値段を確認したことなんて一度もないくせに、お金を使う自由を手にした途端、値段が気になっている。お金は有限だもんね。

果たして、満足のいく買い物ができるだろうか。見ものである。

(おしまい)


読んでくださってありがとうございます。

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