子どもに作文指導をしたら、全部わたしがnoteで学んだことだった
子どもたちの学校が休みになったので、朝から先生役を務めていた。
朝ごはんの後に子どもたちをテーブルへ集合させ、一日の予定をみんなで決めた。本来は学校があるはずの日なので、遊ぶばかりではなくて、ちゃんと学習の時間も盛り込んだ。
そのうちの一つが作文。息子の提案で、パラグラフ・ライティングなるものをやってみることにした。最近、学校で習ったらしい。
要は、序論、本論、結論の基本スタイルで文章を書く。学校では、テンプレートを使うらしい。検索すると、全く同じものが見つかった。
その名も、ハンバーガー・ライティング・テンプレート。作文をするにも、ハンバーガーの形をイメージさせるところが、さすがアメリカだ。
さて、何について書こうかね。わたしも一緒に考えるつもりでいたら、息子は「Scorpions(サソリ)!」と即答した。
サソリ?唐突すぎて面食らう。子どもの発想って独特だ。わたしには、逆立ちしても思いつかない。
変なところで感心している間に、息子はテキパキと情報集めを始めた。学校で一連のプロセスを経験しただけあって、なにをすべきか迷いがない。材料を集めてから、文章構成を考えるらしい。
その間に、困っている娘にヒントを出す。娘は、かわいい猫ちゃんについて書きたいらしい。こうやって、こうやって…とやり方を教えると、こちらもすぐに作業に取りかかった。
順調に見えたこの作文の課題。だが、ここから息子の試練が続く。そして、壁にぶつかった息子を救出するための、ママによる作文講座が始まった。
①どう書いたらいいかわからない
しばらく静寂が続いた後に、息子に呼ばれた。
「ママー、どうやって書いたらいいかわからない」
息子は、情報を集めながらメモを作っていた。それを覗いてみると、ぎっしり文字が詰まっている。サソリの種類の数、生息地域、大きさなど、様々な情報が並ぶ。
溢れる情報。これをどうやってまとめたらいいの?というのが質問である。わかるよ。大人でもそうなるもん。
わたしは、息子に尋ねた。
「いま調べたことから、どんなことが言えそう?」
息子は、うーん、と唸る。いくつか挙げた中に、こんな答えがあった。
"Scorpions are interesting."
いいね。それ、いただき。サソリっておもしろいやつだぜ、ってことね。
こうやって、まずは、言いたいことを一言でばしっと言ってみる。それができたら、あとは、この一言を軸に情報をまとめていけばいい。
「おもしろいと思った情報をなんでもいいから挙げてごらん」というと、さっきのメモを片手に、すらすらと3つ出てきた。
ほら、構成はこれでできた。あとは書くだけだ!
②書きたくない
ここで息子は自らの致命的なミスに気づく。
情報収集に全エネルギーの8割近くをつぎ込んでしまい、書く作業を前にへたりこんだ。疲れたらしい。時間と力の配分を誤ってしまったのだ。
「もう書くのいやだ」
おいおい、まだ一文字も書いてないのにそれはないだろう。そんなセリフは書いてから言うもんだ。
息子は、体をくねらせながらうだうだと言い続ける。
でも、わたしは、こんな中途半端でおしまいにするつもりはなかった。これじゃ、次に作文をするときも、同じことを繰り返すだろう。
わたしは、きっぱりと言った。
「書きたいか書きたくないか、自分に問うのをやめなさい。どっちにしても、書くってもう決まってるんだから」
8歳児を相手に、こういう教え方が正しいのかはわからない。でも、これは、わたしが毎日書く中で学んだ鉄則なのだ。うだうだ考えずにとにかく書け。
わたしが折れないと観念したのか、息子はしぶしぶ鉛筆を持ち直した。
③途中で手が止まる
なんとか最初の一文を書いたら、続きが出てきたようだ。
でも、すぐに手が止まった。
「ねえ、creatureのスペルを教えて」
わたしは即答した。
「後でまとめて教えてあげる。スペルが間違っていても、文法が変でも全然かまわないから、とりあえず最後までぶわーって書いてごらん」
大事なことは、最後まで一気に走りぬくことだ。言葉の表現や文の繋がりが多少不自然でもかまわない。後で直せばいい。まずは大筋を仕上げる。枝葉を見るのはその後で。
言えばすぐできるほど簡単ではない。それは承知の上。でも、息子は、それなりの時間がかかったものの、なんとか最後のピリオドまで書き上げた。
わたしは立ち上がって拍手した。全力で褒めたたえた。
「やったやん!最後まで書けたやん!」
大事なことは最後まで書くってことなんだよ、息子。ママは、長い間、それができなくて苦しんでいたからよくわかる。書き終えたということには、それだけで意味があるんだよ。
思わず、言葉に力が入る。今日の作文講座で、一番言いたかったポイントはこれかもしれない。
おまけの教訓
その後、息子の作文を読ませてもらった。どれどれ…
最初から読み進めていくと、さっきの構成は大幅カットされて、かなり省エネな内容になっていた。サソリのおもしろさを伝えるファクトは、一つ削られて、2つになっていた。しかも、せっかくあんなに細かく調べていたのに、それをなかったことにするかのような超絶簡潔な言いぶりである。
残った気力と集中力をもって書き終えるには、こうするしかなかったのだろう。言いたいことはいろいろ思いつくが、とにかく目をつぶる。
でも、最後の一文にはどうしても目がつぶれなかった。
それが、これ。
”Scorpions are important.”
散々、サソリのおもしろさを語ってきたくせに、結論が本論とずれている。念のため、冒頭に戻ってもう一度さっと読み直したけれど、サソリの重要性なんて一ミリも触れられていない。
息子を呼んで、最後の教えを授ける。
本論で触れていないことを結論に持ってこない。
息子は、燃え尽きた顔でコクリと頷いた。
これにて、本日の講座は終了。息子よ、よくやった。
(おしまい)
読んでくださってありがとうございます。
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