アメリカにいても、栗が食べたい!
秋の味覚といえば栗だ。
さつま芋やかぼちゃもあるけれど、わたしにとっては断然栗だ。
焼き栗、甘栗、栗ご飯、栗あんみつ、モンブラン……。書きながらヨダレが出ていないか心配になる。
わたしはアメリカに住んでいるのだけど、ここでは栗は馴染みの食べものではない。いまが旬のはずだけど、普通のスーパーに生栗を置いているのは見たことがない。買うなら、アジア系スーパーに行かないと手に入らない。
先日、娘のお友達のおうちに遊びにいったとき、庭に栗の木が生えていた。イガイガにくるまったままの栗がごろごろ落ちていたので、わたしは「栗だ!」と目を輝かせて、お友達のママさんに聞いた。
「栗、お宅で食べるの?」
すると、彼女は首を横に振りながら言った。
「食べないわ。これ、子どもが踏んづけると痛いから困るのよね」
完全に害悪扱いである。食べるつもりなどハナからなかったらしい。
なんてもったいない。こんなに実がごろごろ成っているのに。その木をうちに譲ってほしい。
ちなみに、アメリカでもヨーロッパ系の一部の人々は、クリスマスに栗をオーブンで焼いて食べるそうだ。”how to cook chestnuts”(栗の調理方法)で検索すると、最初にヒットするのは、このロースト栗(焼き栗)である。
ほかにもある。最近発見したのだけど、普通のスーパーでも剥き栗のパックを売っている。アジア系の食べものの棚に陳列されているわけではなく、よくある通常のおやつに混じって売られている。だから、たぶんだけど、アジア系の人に限らず、ぽりぽりと甘栗をつまむ人が一定程度いるのだろう。
その辺の事情を夫(アメリカ人)に聞いてみると、
「誰が食べてるんだろうね。知らない」
と、つれない返事が返ってきた。栗にはまったく興味がないらしい。美味しいのに。
とは言うものの、わたしもわざわざ生栗を買ってきて調理するのは面倒くさくて、いつも食べたくなると剥き栗のパックを買ってしのいでいた。小さなパックにちょろっとしか入っていない栗を、ちびちびと何回にも分けて、ありがたがって食べていた。
でも、今年は違う。なんでか、生栗をどっさり買って、自分で調理してみようという気になった。思いっきり栗が食べたい。食欲が、面倒くささに打ち勝ったのだ。
思い立ったが吉日。アジア系スーパーで生栗を買ってきて、その足で、いざ調理方法を検索した。すると、耳よりな情報が目に飛びこんできた。
栗は、冷蔵庫の野菜室に数日入れておくと、甘みが増す。
ほう。そうなんだ。わたしは、買ってきた栗を紙袋に包み、それを丸ごとビニール袋に入れ、野菜室に入れた。思わぬ足止めだが、美味しく食べるには忍耐が必要だ。
3日たち、満を持して栗を冷蔵庫から取り出した。すぐ調理したいところだが、レシピによると、まず水に浸けろという。30分くらい。またもや忍耐。
30分のタイマーが鳴り、いざ、とキッチンへ乗り込む。だが、鍋に入れる前に、今度は栗の頭の部分に十字の切込みを入れろという。一つ一つ手に取り、はさみで縦横に切り目を入れていく。地味で面倒なひと手間だ。でも、この切込みによって、調理後の皮むきが楽になる。急がば回れ。ここでも忍耐。
そして、やっと栗を圧力鍋に放り込み、かぶるくらいの水を入れ、火にかけた。圧がかかったら約10分加熱し、火を止める。安全ピンが下がったら、栗を取り出し、粗熱をとって、皮を剥く。
気持ちいいくらいにべろんと剥ける。あんなに硬かった皮が、さけるチーズみたいに柔らかくしなって剥がれる。中の渋皮も、ゆで卵の薄皮みたいにあっさり取れる。
わお。剥いた栗を味見してみると、温かくてホクホクしている。自然の優しい甘さがなんともいえない。うんまい。ぱくぱくが止まらない。
結論。アメリカでも、忍耐さえあれば甘くて美味しい栗がガッツリ食べられるよ!
読んでくださってありがとうございました。
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