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牧場でえと シロクマ文芸部

白い靴の彼女は、ふわりとした白いスカートを合わせていた。
牧場の階段を下りるときも跳ねるように軽やかなので、子羊かよと僕は思う。彼女は喜びを全身で表すタイプの人間だ。
「みのり」
「ん?」
濃厚みるくソフトクリームをとろけそうな顔で食べる彼女。
「別れるのやめよう」
忙しいという理由だけで、恋人関係をやめようとしていた。
僕はなんて浅はかな男なんだ。

みのりの姿を一瞬見失い、僕はひやりとする。
見ると、彼女はその場にへたり込み顔を覆っていた。
「最後だからと思って…」
「うん」
「めいっぱい楽しもうって」
「うん。ごめん」
落っこちたアイスは拾い、謝りながらゴミ箱に入れた。
買い直そうとすると、みのりはかぶりを振った。

僕たちは靴を脱ぎ、芝生に寝ころんだ。
鳥や羊、子どもたち。笑い声がやわらかく聞こえる。
みずみずしい空に、ソフトクリームのかたちをした雲がふたつ、浮かんでいた。
「あ。あのおっきいの、わたしのね」
僕はみのりの笑顔をずっと見ていたいと、細胞で感じた。

(おわり)

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藤家 秋
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