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ダイエットについて前編

最初はむしろ痩せていた

私の数少ない自慢の一つにスリムな身体が挙げられる。
大学卒業当時の私は身長176cm体重58kg肥満度数18.72・・・いや男なのだから単に貧弱な身体じゃないかこれ。
まぁ要するに太ったことは人生で過去一度たりとも無い。
その後すぐに結婚して体重60kgに。
若干幸せ太りしたが別に気にするほどでもなかった。

出張先にいた肥満の悪魔

30歳になった時に社内異動で平日出張営業メインの職場に変わった。
ここは肥満の悪魔に唆され、上司含めみんなお世辞にもスリムとは言えないお腹まわりに。
その理由がわかった時には私も肥満の悪魔に唆され、堕ちていた。
デブは伝染するのだ。

出張先では問答無用で朝昼晩と外食外食外食。
私もせっかく出張で来たのだからという言い訳に己の快楽欲求を満たした。

朝はビジネスホテルの豪華なビュッフェで腹ごなし。
昼は営業での話のネタを仕入れる為にご当地グルメ本を片手に美味い店を発掘しては、家で1歳児と格闘しながら質素な昼食をとる嫁に見て「これ素敵!美味しそう!インスタ映え!」といらない女子力を見せつける為にオシャレなランチ画像をラインで送っては多大なる不興を買う。
そして夜は上司や取引先とビールだハイボールだ御当地日本酒がなんだと飲みに明け暮れる日々。十四代美味しかったなぁ。
移動手段も車に新幹線に飛行機なので、運動なんてこれっぽっちもしなかった。

見事一年で5kg太り、腹囲は10cm程肥えた。
会社の健康診断で腹囲を図られた時に、えっ一年で嘘ぉ…という私の心の声を測ってくれた看護師のおばちゃんがリアルで代弁してくれた。
同感だけどみんなの前でそんな事言うなよ。
他人からすれば身長176cmに対して体重65kgの身体は別に普通も普通なのだが、私にとっては一大事。

たった一年で、ここまで太ったのは人生で初めてなのだ。

嫁からはそのお腹やばいんじゃないのとニヤニヤしながら出張先からのシャレオツランチ画像への嫌味を込めてぷにぷにと腹を摘まれ。
会社のプーさん体型の元上司に男は恰幅の良さが大事だぞ、と肥満の悪魔に唆された腹まわりをむしろ褒められ。
そしてBoAよろしくタイトなズボンにねじ込む私という肥満のボディは現実的には無理なので、今まで履けていたスーツズボンを何着も捨てる羽目に。

屈辱。

貧弱だけどスリムなのが数少ない私の美点だったのに、このままだとその美点すら失われてしまう。
そして将来、上司たちと同じく出張営業部と書いて肥満デブと読むリアルプーさんヨロシク不愉快な仲間たちのメンバーに私もなるのか……。
そんな不愉快な未来が見えた時、私は出張先にいる肥満の悪魔と戦うと心に誓った。

筋肉教への入信

とは言うものの、一生ダイエットとは無縁だと信じていた迷える小太りな私はとりあえず本屋に走った。
そこで筋肉教の教祖テストステロン様の本と出会う。
聖書にはこう書いてあった。

筋肉は全てを解決する

この文言に私は心を打たれた。
筋肉さえ手に入れば肥満の悪魔を討ち滅ぼすことはおろか、例え取引先にキツイ事を言われても、「いや自分ここにいる誰よりも強いですけど?何なら実力行使しましょうか?」など心の中で呟ける程のメンタルすら手に入れられるはず!
そんな愉快な未来が見えた私は数少ない自分の美点と決別し、筋肉教に入信する事にしたのだ。


すみません続きます。


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