営業の現実と理想の狭間で感じた葛藤と決意
A社は車で30分ほどかかる田舎の事務所にありました。S会社は都会の駅ビルにあったので、そのギャップに少し戸惑いました。S会社のようにキラキラしたオフィスで働くことを理想としていた私にとって、A社の雰囲気は少し地味に感じたんです…wA社は建設会社が母体で、それがオフィスの雰囲気にも影響していたのかもしれません。従業員は社長、デザイナー、営業、そして建設会社と兼務している事務員が1人。それ以外は外部委託で業務を進めていました。
私が担当することになったのは、A社が出版しているタウン誌の営業でした。もともとは他社(K社)が発行していた紙媒体を引き継いだもので、無料のフリーペーパーとして地域に配布されていました。業界も右も左もわからないまま、私は新規オープンの店舗や、集客に苦しんでいるお店など、さまざまな業種の営業を担当することになり、最初に任されたのは無料掲載の記事の営業。新しく開店したお店に訪問し、無料で記事を掲載させてもらう提案をするというものでした。
無料掲載でも私の給料は発生しているわけで、読者にとって有益な情報を届けることが大切だと感じていました。だから、自分なりに「このお店は人におすすめしたい」と思えるところを一生懸命探し、営業していました。仕事が終わった後も、Yと一緒にいるときでさえパソコンに向かって必死に取り組んでいた記憶があります。編集ソフトの使い方を覚えたり、営業活動をしたり、とにかく頑張っていました。それが形になって、記事として完成したときは本当に嬉しかったです。無料枠であっても、自分の言葉でお店の魅力を伝えることができる。それが私にとってはとてもやりがいのある仕事でした。
でも、半年ほど経った頃から、少しずつ不信感が芽生え始めました。新規のお店に営業に行くと、必ずと言っていいほど「A社って、もともとK社のところでしょ?やらない」とか、「掲載後のフォローが全然ない。どうなったかもわからなかったよ」と言われるようになったんです。そんな声を聞くたびに、私はすごく悲しい気持ちになりました。人との関係があってこそ成り立つ仕事だと思っていたので、こうした批判を受けるのは辛かったんです。
A社が忙しいのは理解していましたが、次第に気づいたのは、問題は単に人手不足だけではなく、むしろその時働いていた人たちの考え方や、少しいい加減な部分にあるのかもしれないということでした。お客様に対してのアフターフォローが疎かになっていたり、責任感が薄れているのを感じることが多かったんです。そんな中で私は、どんなに頑張っても、こうしたいい加減さが続く環境では信頼を取り戻すのは難しいのではないか、と感じ始めました。
小さな田舎の町で、こんな悪い評判が広まると、仕事を続ける上でかなりのハードルになってしまう…。そう感じるようになり、次第に私はA社を辞めることを真剣に考えるようになりました。当時、まだ半年です(笑)
続く…