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静か夜とろけて季節めぐる【詩】

夜の手に曳かれて攫われて
  我は今
     転落する

うつらうつらと
零れゆくひとひら
それは祝祭の血飛沫を上げ
回帰する抑圧に渦巻かれる

落葉は更なる憑座よりましの落葉を呼んでいる

紅に散り敷かれ靡く一面の水鏡は
寂しく鳴く奥山の鹿に踏み分けられて
     砕け散る

亡霊となりゆらり揺らいで
花燈はなあかりを白く鎮める霜に震え
石階いしばしを寂寞に濡らす雪に沈み
死装束を纏いて水晶の繭に凍てつき眠る

夜の靄の如く我を封じ込め
垂氷たるひの喪屋が立ち並ぶ
群青の霊園は
あなたのなかで口溶けて
とろけて
溶け合って
さやに奏でる
華やぎの潜音ひそね
棺に罅入れる
夏の空気の懐かしき便り

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曲田尚生
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