郁香

如何にも前へ進めぬから,後ろを振り返って後退りをしてみる.そんな人生.

郁香

如何にも前へ進めぬから,後ろを振り返って後退りをしてみる.そんな人生.

最近の記事

病院に行きたくない

胃液を吐いた. 正確には血の混じった,透明な液体だった. 決して体調が万全とは云えない.然うだろう. 何しろ半ば自らが望んだ死への道のりなのだから. 慢性的な頭痛に狼狽えたり,胃酸の具合で吐瀉したり,然う云った具合に自身の不調が表面化された時に,口角が上がるのを自覚する.驚くことなかれ,事実私は路上で蹲りながらそれは嬉しそうな笑みを浮かべるのだ.そもそも,やはり生存本能は強大だ.私が幾らその良く回る上っ面の口先で死にたい死にたいと希死念慮を吹聴しようにも,いざ死ぬとなれば

    • 学問よ進め

      今年のイグノーベル賞(Ig Nobel Prize)が発表されましたね.なんと今年も日本人が.ほぼ毎年,日本人が何かしらの部門でイグノーベル賞をかっさらっている. いや,実に嬉しいことではないかと思うのですよ.正直な話,これはノーベル賞を取ることよりもすさまじいのではないか. そう思わせるのは,イギリスや日本に代表されるような奇人と皮肉を愛する私の賢しげさ(実際に賢しいかはこの際アジェンダではない)故ではなくって,アカデミアにおいて実用性や権威主義の一切を含まないある種のフ

      • 特例法,再び

        性同一性障害と診断され,手術を受けずに戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう申し立てた当事者に対して広島高等裁判所が変更を認める決定を出した2024/7/10の裁判.報道各社が一斉に発表するとTLは予想通り賛否両論の様相を呈したのであるが,思いのほか多く見受けられたのはmtf当事者からの反対の声と司法・立法を同一視した懸念の声であった. これまでの背景 性同一性障害者の戸籍上の性別変更に関する法律”性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律”(以後,特例法)はこの性

        • 地方国立大3年次編入学試験

          2024年度で地方国立大学(M大学)の三年次編入試験を受け,入学して早くも3ヶ月が経過したわけですが,Twitter等で随分と編入試験の詳細を聞かれることがありましたから,少なからず需要はあるのだろうと,筆を執ることにしました. さて,正直な話,私自身は遊び惚けたり1日天井を見つめて動かなかったりする日もあったが為に,十分な準備と心構えをもってして試験に及んだ覚えはなく,名門の国立名古屋大学とDo志社大学に落ちに落ちて今この大学に拾われた(引っかかった)だけですから,あまり

          発作

          夏になると和食が如何にも恋しくなってくる. いつだって和食というのは著しく美味しいものだ.短期留学先のオーストラリアのハッシュドポテトも,フィッシュアンドチップスも,カンガルーの肉も,パスタだって,そしてフィッシュアンドチップスなどと云う帝国主義がブリテン島からせっせと「輸出」した料理の何よりも,羽田空港で食べたサバの味噌煮定食(生卵付き,¥980)が感極まるほどに美味であったのは言うまでもない. しかしながら,如何にも和食に恋い焦がれ無償に食べたいと思わせるのは夏なのだ.

          喫猫

          猫を吸おう. 近年は分煙だ禁煙だなどと声高に叫ばれていて,いや私は愛煙者ではないから,別にそんなことは如何ってことはないのだが,そう,そんなこの令和6年に私はソリューションを提起するのである.猫を吸おう. 第一,あの毛でモサモサした腹に顔を埋めずにいられるものか.猫アレルギーだったり,犬派だったり,猫が嫌いな人もいるだろうからこればかりは仕方がないけれど,やっぱり猫好きとしては猫を吸わずにはいられないのである. この衝動感を丁度良く言い表すのであればキュートアグレッション

          謹賀新年

          新年を孤独に迎えた. いや,正確には孤独ではなくって,神田明神の参道で,多くの他人に囲まれて, 「ハッピーニューイヤー!!!!」 なんて,明日を,新年を祝う朗らかな歓声に包まれて. 「あぁ,明日が怖い」 なんて呟きながら,この世を離れられないでいる私は,そんな利己的な希死念慮とは裏腹に,この賑々しい神田明神に独りで参拝に来たのだ. 二礼ニ拍手一礼. 何を如何願ったかなんて,もうわからない. ただ, 「あぁ如何にかしてくださいな」 と,随分と抽象的に漠とした呻めきを,明日を

          無為徒食

          ヘアアイロンの設定を180℃にして,縮毛したての少し軽くなった髪の毛を抑えるように巻いてみる.上手くカールが付かなくて,ああ,もう如何にもうまくいかない. 数日ばかりそんな具合だから,これにはもう何やってもダメっすわ,とばかりにげんなりしながらアイラインを引いてみる. おしゃれは自分のため,なんてそれらしい言い方をしておきながらどっかで褒めてほしい気がして,その浅ましさと無駄な期待に嫌気がさした.鮮やかな追憶と鈍い痛みを,寂寞でかき消すと,もうそれは濁り酒のような緩慢な甘