謹賀新年
新年を孤独に迎えた.
いや,正確には孤独ではなくって,神田明神の参道で,多くの他人に囲まれて,
「ハッピーニューイヤー!!!!」
なんて,明日を,新年を祝う朗らかな歓声に包まれて.
「あぁ,明日が怖い」
なんて呟きながら,この世を離れられないでいる私は,そんな利己的な希死念慮とは裏腹に,この賑々しい神田明神に独りで参拝に来たのだ.
二礼ニ拍手一礼.
何を如何願ったかなんて,もうわからない.
ただ,
「あぁ如何にかしてくださいな」
と,随分と抽象的に漠とした呻めきを,明日を願ったかもしれない.
東京の夜は如何にも眩しくって,人々はこの2024年を嫌に明朗な顔をして歓迎していた.nictの日本標準時のサイトを開いてみると0.1秒遅れている.私だけ,0.1秒,世界から置いてかれて,孤独に2024年を迎えてしまったような心地がした.
破滅思考に身を染めて,それがまるで俗に云う厨二病の様に,自分を肯定する為に自己否定を繰り返してここまで酔生夢死を決め込んできた.あゝ素敵じゃないか.私は前を見ずに前へと進む.それが例え破滅だとしても,奈落だとしても,差し迫った希死念慮へ微笑み,手を取って,口付けを交わして踊るのだ.
時計を見るともう午前1時.参拝を終えて,日本酒を立ち飲みしながら放浪していたらこんな時間だ.まだ早い様だから,hubに立ち寄ってカクテルを煽った.新年におおよそ似つかわしく無い焦燥感とアルコールが身を蝕んで行く.
酩酊っていい言葉だな.ヘベレケ,よりもなんだか頭の働かない如何にもならない感じが漢字フタ文字に詰め込まれている.このまま死ねたらそれはもう幸福だろう.
現在時計は午前2時前を指し示している.
よし,電車に乗ろう.これから初日の出を見に行くんだ.人生で初めての経験が,この歳になって,改めて鮮やかに見える.
「初日の出、見よう!」と誘ってくれた友人の,あの朗らかに笑う彼女の顔が脳裏に浮かんだ.寒いだろうから,待たせてはいけないな.