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帰るたびに実家が縮んでいく【かな Part1】

作:谷口

帰るたび実家が縮んでいく。私は何一つ大きくなっていないのに。

 今年に入って実家を訪れるのは2回目だった。1回目は従姉妹のあけみ姉ちゃんの結婚式に、そして今日が2回目。12時過ぎの便で神戸を出て実家に着いたのは21時。毎回移動だけでくたくたになる。もう少し駅増やしてもらえませんかね、JR北海道さん。実家に帰ると親戚一同が集まっていて、私はこんな時にでも人見知りを発揮してしまった。「かなちゃんかい?大きくなったね!」話しかけてきたおばちゃんはもちろん見覚えがあるし話したこともあるけど、名前は知らない、でも住んでるところは知ってる“釧路のおばちゃん”だった。「お久しぶりです。…」以降言葉が出なかった。釧路のおばちゃん伝いに私の帰省はどんどん広まり、対面より早く母の耳に伝わった。母は台所にいた。また少し、小さくなった気がする。「遅かったね、やっぱり神戸は遠いわ。」少し嫌味混じりに母が言った。おかえりの一言が聞きたかった。

 北海道のド田舎の高校を卒業して私は神戸の大学へ進学した。縁もゆかりもない土地だったけど、私はこのド田舎を出られるならどこだってよかった。高校の中で私の成績は悪くはなく、指定校推薦の枠が空いていた大学を選んだ。母は猛反対だった。長女だと言うこともあり、我が子を巣立たせるのが初めてだったので無理もない。父は進学を賛成してくれた。母を納得させるために思ってもない目標を捏造したわたしを「かなならできるよ、頑張れ。」と叶うはずもないのに応援してくれた。それ以降、なんとなく実家に帰るのはばつが悪かった。
 大学で教育学部を出たにも関わらず、私は卒業後、神戸でOLになった。先生なんてなりたくなかったし、なろうと思って大学を選んでない。この選択もまた、母を苛つかせた。でもいつだって父は「かななら何にでもなれる。応援するよ、どんなことでも。」と、私の味方をしてくれた。応援されるたび、喉の奥に針が刺さるように苦しかった。

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Part1は以上です!

こんにちは!げんまいの中の人小出です!
谷口にこれを読ませてもらった時、先日北海道に戻った谷口のリアルな感情も含まれているのではないかなと思いました。

おかえりの一言が聞きたかった、というところは、母親に味方でいて欲しいという子供っぽい発想、外の世界から逃げ帰ってきたような気持ち的な余裕のなさが現れていて、実家に帰った時ならではの感情が描かれていてとても好きな一文です!
意地を張ってしまうけど、自分自身に情けなさを感じている主人公にはどこか共感してしまいます、、

それでは!次回Part2もお楽しみに!

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