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ごみ“まで”買わない世の中を。お祭りからリユース食器を広げる「ecotone」

京都市では、世界の平均気温を1.5℃までに抑えて、「将来の世代が夢を描ける豊かな京都」を実現するため、2050年までに二酸化炭素を出さない社会・経済活動への転換を目指しています。そのためには、市民の皆様一人ひとりの生活が、二酸化炭素を出さない、脱炭素なライフスタイルに変わっていくことがとても大事です。でも、脱炭素なライフスタイルって言われてもよくわからないし、めんどくさそう……と思われる方も多いのではないでしょうか。
連載「こんな取組が始まっています。あなたも参加しませんか?」では、参加することで日々の生活がちょっと脱炭素に近づいていくような、身近な取組をご紹介します。

今回は、特定非営利活動法人 地域環境デザイン研究所ecotone(エコトーン)の代表理事 太田 航平(おおたこうへい)さんに、大量生産・大量消費・大量廃棄から転換する取組や今後の展望についてお伺いしました。

活動の原点は、目の当たりにしたごみの山

祇園祭ごみゼロに取り組む以前の写真
祇園祭ごみゼロに取り組む以前の写真

ーー地域環境デザイン研究所 ecotone(エコトーン)(以下、ecotone)について教えてください。

ecotoneは、2001年に設立した特定非営利活動法人です。大量生産・大量消費・大量廃棄のいわゆる「20世紀型の産業構造」から、持続可能な地域社会へシフトするための支援と、そのための仕組みづくりや選択肢づくりを事業の一つとして行っています。具体的には「リユース食器システム」を開発し、リユース食器のレンタル・洗浄、スタッフコーディネートなどを含めた環境対策パッケージを提供しています。年間400を超えるお祭りやイベントでの取組を行い、中でも祇園祭からごみを減らすプロジェクト「祇園祭ごみゼロ大作戦」の企画・運営は大きな注目をいただいています。

ーー環境活動に取り組もうと思ったきっかけは。

高校時代、阪神淡路大震災をきっかけにボランティアセンターへ足を運ぶことになり、そこで野外フェスの資源回収ボランティアを知りました。当時は、イベントで出た資源を分別する習慣がなく、また、ライブ後の会場は足の踏み場もない程の散乱ごみが溢れかえっていました。「自分のごみは自分で片付けたらいいのに」「ごみの出ない仕組みを作ればいいのに!」という憤りを抱きましたね。

ーーその経験が活動の原点になっているんですね。

その後も環境活動を続けるうちに、高校2年生の時に京都で開催された「第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)」でプレゼンをする機会を得ました。私は東京出身なので、その時はじめて京都という場所を訪れて。縁を感じ、京都の大学へ進学することを決めました。

大学に進学してからは、国際的な交渉事が決まるプロセスを知りたい、議論に加わりたいという想いから、WTO (世界貿易機関)の閣僚会議や世界銀行の総会などにも参加しました。しかし、環境に関する政策を作ったり変えようと思うと、多くの調整が必要で、時間がかかることがわかりました。

それならもっと身近な環境問題の解決に取り組み、モデルケースを作った方が良いと考え、地域のお祭りやイベントなどに注目するようになりました。

リユース食器の導入で、祇園祭のごみを削減

「祇園祭ごみゼロ大作戦」の様子

ーー「リユース食器」の開発のきっかけや普及の背景について教えてください。

安全面や衛生面に配慮した過度な包装紙や使い捨てパッケージは、ごみを増やす原因です。何度も洗って使える食器を普及させることで、ごみの量を減らせるのではないかと考え、「リユース食器」というネーミング含め検討し、その食器を活用した環境対策パッケージを社会実験を繰り返し開発しました。その後、各地の野外ライブや地域のお祭りなどで導入いただき、徐々に認知が広がっていたものの、なかなか一般には浸透しませんでした。

そこで、祇園祭にリユース食器を導入しごみの削減につながれば、全国のお祭りにこの取組を普及できるのではないか。そんな想いから、2014年に「祇園祭ごみゼロ大作戦」をさまざまな方々の協力を得てスタートさせました。

ーー祇園祭ほど大きな祭りで、どのようにごみを減らしていったのでしょうか。

当時、祇園祭では1200ヶ所のごみ箱を設置していました。しかし、全てのごみ箱を管理しきれず、ごみであふれ返っていました。また、道路は散乱ごみだらけでした。

そこで、リユース食器の導入と資源の分別・回収を同時に行うため、オリジナルのエコステーションを設置。また、2000名を超えボランティアスタッフのみなさんの協力のもと、1200ヶ所のごみ箱から50ヶ所のエコステーションに置き換えたのです。その結果、2013年に約57トンあったごみは、2019年に約32トンまで削減することができました。

今年で「祇園祭ごみゼロ大作戦」は9年目ですが、大阪の天神祭で同じような取組を始めたり、他の自治体の方が参考にしたいと、祇園祭のボランティアに参加されたり。お問い合わせも増えていることから、全国のお祭りに良い影響が広がっていると感じています。

マナーやモラルに訴えても、人は環境問題に関心を抱かない

太田氏

ーー様々な環境活動に取り組む中で、大切にしている価値観はありますか。

設立当初から、「市民の立場から取り組む」ことを大事にしています。市民に向けて事業者の立場から言いたいことを言ってしまうと、クレームやトラブルに発展することもあります。私たちは、事業者や行政とのパートナーシップのもと、ハブとなって、市民の立場から課題解決に取り組む役割が重要だと思っています。

ーーなるほど。20年以上にわたり環境活動をされてきた太田さんから見て、世の中の環境に対する意識や向き合い方は変わっているでしょうか。

設立当初は、環境産業の市場自体が小さく、苦労も多かったです。今は環境問題について学校でも教えるようになって、とくに若い世代は環境意識が高い傾向にあります。

また、国際的にはSDGsの大きな目標から、事業者も環境配慮を前提に事業構築をしないと成り立たない状況になっているので、社会全体が良い方向に進んでいると思います。

ーー社会も変化しつつあるんですね。最後に、みんながもっと環境に対する意識を向けるには、どんな工夫が必要か教えてください。

環境問題に目を向けてもらおうと、「ごみを減らそう」「資源を大切にしよう」とマナーやモラルに訴えかけるだけでは、なかなか人は動かないし変わりません。一人ひとりの意識を変えるには、「人を動かす理由」をデザインすることが重要です。

2000年の平安神宮の初詣には、「露店で買った食品についたトレイの汚れを落とす道具を、ごみ箱の横に設置したら、お客さんはどのような行為をとるか?」という社会実験を行いました。初詣の1日目は、ごみ箱の横にごみの汚れを落とす道具と、案内係を配置しました。すると、95%の人が道具を使って汚れを落としたんです。2日目は案内係を配置しませんでしたが、それでも84%の人が汚れを落としました。

ーー人の目を気にする、という心理が働くからでしょうか。

そうですね。この実験では道具と案内係を設置し、汚れた使い捨てプラスチック容器は、汚れを落とせばリサイクルが可能なことから「汚れを自分で落とす」 という行動を促す仕組みをデザインしました。マナーやモラルに訴えても、具体的な行動にはつながりにくい。なぜなら、人の判断基準は善悪ではなく、損得勘定であることが多いからです。「よいことをしたい」「人の目を気にする」などといった損得に訴えかけるような「人を動かす理由」を複数デザインできれば、一人ひとりが環境問題に目を向け、動くきっかけが増えると思います。

引き続き、ecotoneでは過度な包装や使い捨てパッケージが本当に必要なのかを考え、消費選択のあり方を変えたいと思います。消費行動の最適化を図り、ごみ“まで”買わないでいい世の中を作っていけたら良いですね。

関連リンク

・特定非営利活動法人 地域環境デザイン研究所ecotone

http://www.ecotone.jp/

・祇園祭ごみゼロ大作戦

https://www.gion-gomizero.jp/


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