![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50146021/rectangle_large_type_2_b458bc38b4d716ca9306aa1f7f0b0266.jpg?width=1200)
あなたの考えは誰が作る? 【大衆の心理を操るインターネット戦術】
私たちは、日々、得た情報をもとに考え、行動している。
しかし、もしその情報が誰かの意図により、受け手が特定の行動をとるよう仕向けるために作成されており、受け手がそのことに気づかないまま行動したとしても、受け手自身の意思で行動したといえるのだろうか。
この記事では、イギリスとアメリカで過激化する警察への抗議運動と、大衆の心理を操るインターネット戦術の関係性について考察する。
イギリス・アメリカで高まる警察への反発
イギリスやアメリカで、警察への反発が高まっている。
アメリカ人の友人のインスタグラムで
All cops are Derek Chauvin. (すべての警察はデレク・ショーヴィンだ)
とシェアされているのを目にした。
これは、4月11日に米ミソネタ州で黒人男性が警察官に射殺された事件に応じるものだ。
デレク・ショーヴィンとは、昨年、黒人男性のジョージフロイドを逮捕する際に殺害したアメリカの白人元警察官のことだ。
ジョージフロイド殺害事件は「Black Lives Matter(黒人差別廃止運動)」や「Defund the police (警察予算を打ち切れというスローガン)」の発端になった。
また、イギリスでは「Kill the Bill」と呼ばれる、警察のデモ規制権限の拡大などの法案に対する大規模な抗議デモが各地で行われ、一部暴徒化するなどしている。
この抗議の対象となる法案は、昨年の人種差別に対する抗議で銅像が破壊されるなどしたことを受け、市民や警官を守り、治安を維持する為のものとされている。
これに対し、一部市民は「抗議する自由」をめぐり、デモを始めたというわけだ。
3月初めに、ロンドン南部にて30代の女性が警官から暴行を受け殺害されるという事件があったことも、人々の警察不信を大きく増長させる一因となった。
私自身、「Kill the Bill」デモを、通りがかりに偶然見かけた。
デモ隊の中には、「Polices are all OO!」と、怒りに任せて警察を全否定する言葉を叫ぶ者もいた。
市民が権利のために声を上げることは大事なことだが、これらの事例で気になるのは、数件の事件を引き金に、警察そのものを全否定する過激な意見が多く発せられている点だ。
もちろん、市民がむやみに警察に殺害されるなど許されざる事態であり、改善されるべきである。
公務員である警察がそのような事件を起こしたことに対し、人々が怒り、抗議するのも当たり前だ。
しかし問題なのは、人々の怒りが、彼らの知りえないところで、外部の思惑によって増長されている可能性がある点だ。
大衆の心理を操るインターネット戦術
The Sunday Guardian の Antonia Filmer は、この「Kill the Bill」抗議運動が、ロシアと中国により、インターネットプラットフォームを通じて煽られている可能性を指摘している。
2020年に英首相が「ロシアは、西側を分裂させ、弱体化させようとしている」と発言し、ロシアのサイバー攻撃に対する警戒心をあらわにしている点においても、Filmer の指摘は信憑性がある。
サイバー攻撃という言葉を聞いても、自分たちの生活とは無関係の、どこか遠い場所で起こっているようなイメージを持つ人は多いかもしれない。
しかし、SNS上の「いいね」や検索履歴などを含む、私たち一人一人の個人データが、知らないうちに個人心理プロファイルとして誰かに収集され、利用されることは、この時代、大いにあり得ることなのだ。
Facebook や Instagram、YouTube などの SNS を利用していると、いつの間にか自分好みの情報ばかりが流れてくる、偏った情報プラットフォームになっていることに気付いたことのある人は多いかもしれない。
これらの SNS や Google・Yahoo などの検索エンジンの提供するアルゴリズムは、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能を持ち、結果的に、利用者には彼らが見たい情報しか見えなくなる。
この現象は「フィルターバブル」と呼ばれる。
他の人と同じインターネットを見ているつもりでも、実際には「フィルター」を介してパーソナライズされた世界を見ている。
このような状態は、人々に「周りの大半が自分と同じ意見である」と錯覚させ、過激な思想にのめり込んでゆくのを助長するリスクがある。
このインターネットプラットフォームの仕組みを、政治利用する動きがある。
その代表例が、2016年のアメリカ大統領選挙におけるトランプ勝利、Brexit(EU離脱)、そして2020年の Black Lives Matter である。
トランプ当選や Brexit において勝者側が利用したコンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が、膨大な量の個人データを使い、ターゲットを絞り、フェイクニュースやプロパガンダを流すことで、オンラインコミュニティに思想を浸透させる手法を用いていたことが、内部告発された。
また、The Gurdian の Carole Cadwalladr は、ロシア情報機関が偽の Black Lives Matterミームを作った証拠がfacebook上にあると主張している。
(※ミームとは、インターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として拡がっていく行動・コンセプト・メディアのこと。)
まとめ
私たちが目にしている情報は、誰かの意図に基づいて作成されている。
そして、その意図とは、人々の「恐怖・憎悪」を駆り立て、「混乱・分裂」を促進させることかもしれないのだ。
情報に操られ、思想を乗っ取られないようにするために、誰が、何のためにその情報を流しているのかを、客観的・多角的に考えることが重要になっている。
参考
https://www.gov.uk/government/collections/the-police-crime-sentencing-and-courts-bill
https://www.bbc.com/japanese/56629141
https://www.sundayguardianlive.com/news/china-russia-use-social-media-fuel-protests-uk
https://www.kyoeikasai.co.jp/kpa/agent/monosiri2019-26.htm
Netflixドキュメンタリー「The Great Hack」