ガンジー横須賀

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僕の出会った狂人達❸

アルゼンチンタンゴのステップを踏みながら「おはよう」と陽気に挨拶をしてくる おん年75歳のY原さん、通称アルゼンチンタンゴおじさんが存在する。 現在僕はゴミ清掃員として働いているのだが、僕はそのアルゼンチンタンゴおじさんにえらい気に入られている。 何故かは知らないが昔から僕は自分がそう願っても思ってなくても独特な癖を持った人が勝手に寄ってきてしまう特性をしている。 これは何世代も前の祖先が何か僕にそういった人達を引き寄せる才能みたいな、ありがた迷惑なものを与えたのかもしれない

    • ガンジー横須賀の又聞き怪談

      この話は、僕が実家に帰省した際母から聞いた話です。 母が息子を捕まえてわざわざ嘘の話を言うはずもないので信憑性が高い話です。 この話を聞いた時、驚愕と喪失が止まらない感覚を今でも覚えています。 それは祖母の話でした。 祖母は介護老人ホームに預けられているのですが、僕が久しぶりに帰省したので祖母に会いに行こうと言うと、母は頑なに止めたのです。 何故なのかと問うてもわざわざ行くことはない! と言うのです そこまで止められると行きたくなるのが人間の性分というもの 僕は母を半ば強

      • 僕が出会った狂人達❷

        東京へ上京してから初めてやったアルバイトは渋谷の円山町にある、とあるラブホテルの深夜の清掃員だった。 居酒屋とかコンビニとかデリバリーとかいわゆるポピュラーなアルバイトをしようと思ったのだが、せっかく東京に来たのだからど真ん中の荒れ狂った日々欲望渦巻く男女の恋恋慕を目の当たりにし 世の中の影の部分を見てみたいという訳の分からない理由だった 履歴書の志望動機にもそのまま書いた記憶がある 今思えば本音が過ぎて気が狂っているとしか思えないが、何故か僕はラブホテルの清掃員として採用に

        • ガン横の僕が出会った狂人達

          今から15年前当時25歳の僕は茨城の方で環境パトロールという仕事をやっていた 環境パトロールとはなんぞや?! 仕事内容は役所から委託された街の様々な行事の手伝い(アナゴの稚魚の放流)、民家で起こった珍事件(屋根裏に侵入したハクビシンをバルサンで追い込む)、道で死んでいるカラス、猫の死骸の回収、ゴミ収集、山に捨てられた不法投棄の回収、道路に凍結剤をひたすらばら撒いていくなど、いわば役人がやりたくない仕事をこちら側に押しつけてそれを我々が受け持つという、今でいう便利屋みたいな仕事

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        • 怪談
          1本
        • ノンフィクション
          2本
        • 短編集
          11本
        • 僕が出会った狂人達
          2本

        記事

          実録ガン横職質日記Part 2

          何故かパトカーの中は快適だった それもそのはずパトカーはハイクラスのトヨタクラウン、後部座席のシートの弾力が極楽を誘う ずっとこのパトカーに乗車していたい気分にさせる これなら又捕まってもいいかなんて馬鹿な話は後にして パトカーが中野にある警察署に到着した 署に連行されるとまず自分の持ち物を全て警官にあずける すると薄ぐらいどんよりとした壁、机と椅子二つある部屋、いわゆる取調室みたいなところに入れられて、警官2人に詰問される 「正直に言ってください、あれはあなたの自転車で

          実録ガン横職質日記Part 2

          実録ガン横職質日記Part 1

          齢40独身アルバイト生活地獄 何かの間違いかもう40年も生きてしまった 太宰治だったらもうとっくに死んでいる年月だ 世間的にはすっかり大人の年齢だ わたしもすっかり大人だと思って生きている だからなるべく世の為人の為になるよう迷惑をかけずに生きているつもりである しかしながら40年経った今でもそれは定期的に思いも寄らない時に、魔が刺したように、通例の儀式のようにわたしに行われる行事がある それは職質だ、今まで職質を受けた数は数知れず、到底10本の指の数では足りず、阿修羅観音の

          実録ガン横職質日記Part 1

          ガン横の2、3分程度で読める短編ミステリー「困惑させる子供」後編

          茂雄は以前全校生徒1300人程いるマンモス小学校に在籍し、ひとクラス40人の生徒を受け持っていた それが今では1クラス3人足らずの廃校寸前の小学校に赴任しこのクラスを受け持つ事になるなんて思いもよらなかった そのクラスで給食費が盗まれるという事件 なんとやりがいのない事件だ、昔は40人の生徒を操り支配していた茂雄 3人などちょろいもんだ 茂雄は唇を舐め、戦闘態勢に入った 「よーし!ホームルームを始める前にみんなに大事な話がある、みんな目を瞑れ〜」 さぁショータイムの始まり

          ガン横の2、3分程度で読める短編ミステリー「困惑させる子供」後編

          2.3分で読めるミステリー短編「困惑させる子供」の校閲

          カタンカタントントンカチャ 大田原茂雄は今日使う資料をバックに詰め家を後にした 海風が顔にあたり少しばかりの潮の匂いが茂雄の鼻をついた 高潮が断崖絶壁に打ち付け飛沫をあげ無数の海鳥が舞っている 道中茂雄はもうすぐ卒業式だなと感慨にふけりながら徒歩20分のところにある小学校へ到着した 職員室で授業の待機をしていると、同職の南先生が不敵な笑みを浮かべながら茂雄に歩み寄って来た 「あなたの生徒が給食費を盗んだみたいよ」 茂雄は驚愕した よりによって私の生徒にそんなことする子供な

          2.3分で読めるミステリー短編「困惑させる子供」の校閲

          ガン横の10秒で読める超短編「断捨離の悪夢」

          人間は何もすることがなくなると片付けをしたくなる生き物である あー暇だ暇だやることがひとつもありゃしねぇ こういう時は断捨離しかねぇな 洋服もいらない、飯もいらない、ドアもいらない、窓もいらない、もう風呂もいらねぇか トイレもなんだかいらなくなってきたな もう夫も捨てちゃおう そして何もなくなっちゃった 捨てる女

          ガン横の10秒で読める超短編「断捨離の悪夢」

          ガン横3分程度で読める短編「昼休み」後編

          「うちのチャーハン異次元に飛ばしてるんです」 何回頭で反芻しても聞いたことのない言葉だ 「うちの旦那未だにオシッコ便器の外に飛ばしてるんですよ!」 これは何回か聞いたことある 「うちの息子マラソン大会まだ序盤なのに最初から飛ばしてるんですよ!」 これは何度も聞いたことある 「うちの彼氏自分が悪いくせにさも相手が悪いかのようにガン飛ばすんですよ!」 これはあまり聞かないがなんとなくあるような気がする 「うちの達磨自分でクルクル回りながら赤の部分飛ばすんですよ!」

          ガン横3分程度で読める短編「昼休み」後編

          奇妙短編「昼休み」

          暑い 暑い うだるような暑さだ 本当にジリジリと音を立てているかのような陽が頭上から放射線を僕のアタマに容赦なく当ててくる。 ハンカチで何度となく額を拭くも、毛穴からは滝のような汗が容赦なく首元まで垂れてくる。 誰か僕の首元で滝行ならぬ汗行でもしに来ないかと思ってしまう。 朝からNHK集金作業で散々住民にうやむやにされること10件、暑さのせいもあり精神的にも肉体的にも僕は参っていた。 さぁもう一件だ! 僕は意識を無理やり仕事モードに切り替えようとしたが、腹の虫が胃の奥の方から

          奇妙短編「昼休み」

          宮沢賢治雨にも負けず風回転寿司

          「蟹にもマケズ」 蟹にもまけず、トロにもまけず、サバにもサーモンにも負けぬ、丈夫なツブツブをもち 味はなく 決してイカらず いつも静かに回っている 1日五、六食分握らされ トロと少々のカニの間にはさまれ あらゆる寿司ネタを 自分をネタだと思わずに よく回りよく乾き そして忘れられ ホールカウンターの寿司職人の 小さな手のひらにわさびを付け 東に食べ残しのイクラあればもったいないから洗わないでといい 西にまだ何も手を

          宮沢賢治雨にも負けず風回転寿司

          ガン横の2.3分程で読める短編恋愛小説最終章2

          妻が死の直前に書いた手紙にケンジは目を落とした。 「あなた・・・ これがわたしがあなたに送る最後の手紙になります 今まであなたに言ってなかったことを洗いざらい言います」 ケンジはこの手紙の序章を見て息を呑み込んだ 「おい、おめー」 おい、おめー?ケンジは一瞬自分の目を疑った 「いい大人が何も出来ねぇってどういうことだよ、なんでトイレの漂白剤を食器に入れちゃうんだよ、なんとなくこれは危険だとか分かるだろ、なんでわたしがこんなこと事細かく注意書きしなきゃなんねーんだよ」

          ガン横の2.3分程で読める短編恋愛小説最終章2

          ガン横の2.3分程で読める短編恋愛小説最終章

          ケンジは妻が残したきめ細かい美しい字体のメモ書きを丹念に見回した。 そこにはケンジが一人で生きる為に必要な事柄が丁寧に綴られていた。 冷蔵庫には「冷蔵庫の扉は押すのではなく引けば開きます」 キッチンには「右のコンロは火力が強いので中華に向いています。左のコンロは弱火なので煮物に向いています。最もあなたは料理などしないでしょうけど万が一料理をする事があったら参考にしてください。後、火をつけたら必ず消してくださいね」 そんなこと分かってるわ!バカにするのにも程があるわ! と悪態を

          ガン横の2.3分程で読める短編恋愛小説最終章

          ガン横の2.3分程で読める短編恋愛小説後編2

          ケンジはドアノブを回し扉を開いた。 薄暗い玄関には乱雑になったケンジの靴と整頓された亡き妻の靴が並んでいた。 妻の靴は今にも外の世界に飛び出していきそうな気配を漂わせ凛としていた。 どうせなら自分の靴も直してくれたらいいのにと悪態をつきそうになったが誰にも届かない悪態ほど無味なものはないと逡巡しやめた。 なんの活気もない薄暗い伽藍堂とした廊下を軋ませながら歩き、ケンジは妻の部屋へと赴いた。 部屋の南側にある鏡台に化粧セットが綺麗にならべられていた。 ケンジは妻の遺影と遺骨を鏡

          ガン横の2.3分程で読める短編恋愛小説後編2

          2.3分程で読める短編小説後編

          西日の残滓がケンジのもつ妻の骨壺を照らしていた。 鼻の奥につんと来る冬の匂いとともに悲しみが混じり合い目頭に熱いものが込み上げてきた。 葬儀での仮面お酌の振る舞いで仮面が溶けドロドロになった悲しみのダムが決壊し 齢60にもなる男が玄関前にへたり込みおんおんおんと奇怪な声をあげケンジは赤ん坊のように泣きじゃくった おんおんおんおん おんおんおんおん おんおんおんおーん おんおんおーんおーん おんおーんおーんおーん おーんおーんおーんおーん おーんおーんおんおんおんおーん その

          2.3分程で読める短編小説後編