宮沢賢治雨にも負けず風回転寿司
「蟹にもマケズ」
蟹にもまけず、トロにもまけず、サバにもサーモンにも負けぬ、丈夫なツブツブをもち
味はなく
決してイカらず
いつも静かに回っている
1日五、六食分握らされ
トロと少々のカニの間にはさまれ
あらゆる寿司ネタを
自分をネタだと思わずに
よく回りよく乾き
そして忘れられ
ホールカウンターの寿司職人の
小さな手のひらにわさびを付け
東に食べ残しのイクラあればもったいないから洗わないでといい
西にまだ何も手を付けてないアナゴあればどうせなら我とネタかえてもいいといい
南に生物が嫌いな女性あれば我なら食べられるんじゃないの?といい
北に我の姿を見て気持ち悪いと言う子供あれば恐がらなくていいといい
ネタが日照りの時は涙をながし
マグロが取れない夏はオロオロ回り
皆に普通だねとよばれ
誉められもせず
食もされず
そういう数の子に
わたしは
なりたい・・・