絵本『ごきげんな らいおん』にみる 友だちと親友の違い
この絵本は幼い子どもに読み聞かせても、思春期真っ只中の子どもが読んでも、それぞれの視点で楽しめる内容になっています。
大人が読んでも奥深く、人間関係について考えさせられます。
どうなったら友だち関係といえるのか?
仲が良ければ友だちなのか?
信頼するってどういうことか?
友だちと親友の違いについて、それぞれ人によって感覚は違ってくると思います。
友だち関係、恋愛関係、親子関係にも通じる「信頼」について、深堀りの材料になってくれそうな絵本です。
私はAさんのことを親友だと思っているけど、果たしてAさんは私のことをどう思っているのだろう?
BさんはCさんのことを仲が良い友だちだと思っていますが、CさんはBさんに対して密かに恋心を抱いていたり・・・。
Dさんは我が子を愛情たっぷりに育てたつもりでいますが、果たして子どもの方はどう思っているでしょうか?
人間関係は目に見えないものだけに、悩ましい問題です。
この絵本では日頃檻の中にいるライオンが、開いていた扉から出て日頃仲良くしている街の人たちに会いに行くことで、街の人たちとの関係性が明るみになります。
ライオンが仲が良いと思っていた人たちは、檻から出たライオンを目の前にすると、途端に恐怖で悲鳴を上げ逃げ出します。
友だちだと思っていた街の人たちと、檻の外でも仲良く出来ると思っていたライオンは、その反応が不思議に思えてきました。
立場や状況が変われば、相手との関係性も変わってしまうのか?
絵本の中では、飼育員の息子のフランソワの登場で、物語は好転していきます。
フランソワは檻の外にいるライオンに対してもいつものように「やあ、ごきげんな らいおんくん」と挨拶してくれて、隔てる檻がないので撫でてもくれました。
そしてフランソワはライオンと、ライオンの檻がある公園まで一緒に並んで帰ってくれました。
それ以来、ライオンはフランソワが会いに来てくれるのが一番嬉しいし、一番の友だちだと思うようになりました。
人間生きている間に、幾度となく突き当たる悩ましい問題。
立場や状況の変化など、様々な理由で変わってしまう人間関係や人の気持ち。
その時々で色んな感情を持つこともあるだろうし、悲しい経験をすることもあるかも知れません。
それは幼い子どもだって例外ではないはずで、だからこそごきげんならいおんの心情に寄り添うことができるのだと思います。
ごきげんならいおんにとって、フランソワが救いであり癒しになりました。
真の友情に支えられて、その後もライオンは檻の中から街の人々との交流を楽しみ、幸せに暮らします。
果たして、めでたしめでたしと思えるでしょうか?
読む度に考えさせられる絵本です。