
成功のための5つのルール〜STARBUCKS COFFEE・CEO ハワード・シュルツ氏〜
シャローム♡今週の『がんちゃんのイスラエル便り』は
ユダヤ人にフォーカスして”成功のためのルール”を紐解く第2弾!
ハワード・シュルツ/ジョアンヌ・ゴードン『スターバックス再生物語 Onward』(徳間書店、2011年)の内容に沿って
”STARBUCKS COFFEE”元CEOのハワード・シュルツ氏についてお送りします。
ユダヤ人は世界人口の僅か0.2 %(約1,300-1,700万人)にも関わらず、世界の大富豪の35%を占めている、という事実があります。
...誰もが知る秀でたユダヤ人といえば、映画監督のスティーブン・スピルバーグ、Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Googleのラリー・ペイジ、Bloombergのマイケル・ブルーム・バーグ...など枚挙にいとまがない。
成功=富を築くこと と考えた時に
他の民族が知り得ない”成功の哲学”があるはず。
・第1弾はこちら『成功のための6つのルール〜ユダヤ人とダイヤモンド〜』
https://note.com/ganganganchan/n/nb139985aa009/edit
・ユダヤ人国家”イスラエル”の基本情報は『入門編』をご覧くださいませ。
https://note.com/ganganganchan/n/ne96a3a839618
STARBUCKS COFFEEのはじまり
今や日本でも、”スタバ”の愛称で親しまれるSTARBUCKS COFFEE(以下スターバックスで略)は
1971年にアメリカのシアトルにて、サンフランシスコ大学の同級生3人で立ち上げられました。
その後、ユダヤ人のハワード・シュルツ(以下ハワード氏で略)によって世界規模の企業に育てられるのです。
【シアトルのスターバックス1号店】
当時、インスタントコーヒーが主流だったアメリカでは珍しく、香り高いコーヒー豆を販売したことでたちまち評判になった。
写真:本書
①自分の選択を信じる
ハワード氏がスターバックスに出会ったのは1982年、当時28歳でした。
スウェーデンの家庭用品会社のアメリカ支店長として忙しい日々を送っていたハワード氏は、コーヒーメーカーの販売が異常に多いスターバックスの存在を知り、
実際に店舗に足を運び衝撃を受けます。
スターバックスが”コーヒーの伝道者的役割を果たしている”ことに気づき、未来へ限りない可能性を感じるのです。
『スターバックスの素晴らしさをもっと広めたい』という熱に取りつかれたハワード氏は、高給の職を辞めて、経営陣に入社を懇願。
一度は断られたものの、彼の熱意に動かされた経営陣に認められ
晴れて、マーケティング・マネージャーとしてスターバックスの仲間入りを果たすのです。
ー「人生は全ての選択の総和である」とアルベール・カミュ(フランスの哲学者)は述べている。大きかろうと小さかろうと自分の行動が、自分の未来をつくる。
その過程で、他の人を勇気づけることができればさらに望ましい。
引用:本書
写真:本書
②感性を磨く
ハワード氏が入社後、最初に取り組んだのは
"コーヒーを通じた感動体験の創出(スターバックスエクスペリエンス)”でした。
きっかけは、イタリアに訪れた際に大きく感銘を受けたこと。
ーバリスタの熟練した技、人と人とのつながり、淹れたてのコーヒーの温かい香りと心を浮き立たせるような風味は私の心を震わせた。胸がどきどきした。
私の未来とスターバックスの未来が見えたような気がした。
引用:本書
ハワード氏は、あちこちにあるコーヒースタンドで、人々が行きつけの店をつくり、バリスタと会話を楽しみながらエスプレッソを飲んでいるシーンを見て
顧客との絆が、スターバックスに圧倒的に欠けていることに気づくのでした。
その後、経営陣との意見の違いからハワード氏は一度スターバックスを退職し、コーヒーバーを展開させますが、数年後スターバックスを買収し、本格的にCEOになったことで、スターバックスエクスペリエンスの実現に向けて奔走するのです。
写真:本書
スターバックスが愛される理由は、感情にアクセスする感動体験が散りばめられているからだと思うのです。
...ほっとしたい時につい寄りたくなってしまう、スターバックスに来るとワクワクする...
そう思わされるのは、デザイン性の高い店舗であったり、季節ごとに様変わりするオファリングボード、心地よいMusic、従業員とのつながり、コーヒーの香りであったりするのかもしれません。
(数年前ある店舗で見かけて目を奪われたオファリングボード)
ハワード氏は、イタリアで心を動かされた経験を、具現化する事でスターバックスを成功へと導いたのです。
ー商人が成功するかどうかは、物語をいかに語ることができるかにかかっている。売り場に足を踏み入れた時に見たり、聞いたり、嗅ぎ取ったりするものが感情を導き、商品を素晴らしいと思わせる。私はずっと直感的にそれを理解していた。
引用:本書
③ルーツを受け入れ自分を理解する
ハワード氏は言っています。
「本物のリーダーシップへの旅のはじまりは、自分を理解分析することだ。」
ハワード氏は、N.Yブルックリンの荒れ果てた公営アパートで育ちました。
父親は、無学の退役軍人。家族を養うためにブルーカラーの仕事を30ほど転々とし、年収は200万円以下だったそう。
ハワード氏が7歳の時、仕事中に腰と足を怪我した父親は職を失いますが、当時ブルーカラーの仕事には労災保険も健康保険もなかった。
「チャンスもなく、尊敬も得られない。」と愚痴をこぼす父親が惨めで、幼少期からコンプレックスだったといいます。
(2015.銀座にて)
しかし、父親が亡くなる時の友人の言葉に気付かされるのです。
「もしもお父さんが成功していたら、君をここまで掻き立ててくれるものは無かったのではないか。」
思い返すと父親は、家族に対して責任感があり正直であったにも関わらず、世の中の仕組みに押しつぶされてしまっただけだったんだ...。
それまでのハワード氏は、自滅への意味をわかりすぎるくらいわかっていて、いつも失敗を恐れていたのですが
父親のことを認めることで舵取りを変えるのです。
”自分のルーツに誇りを持とう”
今までの努力は、間違いなく人生経験のお陰なのだと。
ー両親に対する扱いは不当で、誰もがもっと敬意を持って扱われるべきだと強く感じた。
ー痛ましいのは、父が達成感を抱くことも、仕事に意義を見いだすこともできなかったことだと私は考えている。
引用:本書
(2018.麻布十番にて)
④関わる人(従業員)にチャンスを与える
ハワード氏の苦い人生経験は、スターバックスの企業理念の動機になりました。
”自分の父親が生涯働けるチャンスを得られなかったような会社を作る”
それは、従業員が大切にされ、尊敬され、出身地・肌の色・教育のレベルを問わない会社。
ハワード氏はアメリカの企業として始めて、パートタイムの従業員に健康保険の権利とストックオプションを与えました。
(2017.スターバックスジャパン本社の下にて)
現在、日本のスターバックスのアルバイトでも一定の条件(1年以上の就労、週20時間以上の勤務など)を満たせば健康保険に加入できます。
また、アルバイトとしては異例で、独り立ちまでの研修は約80時間、
人事考課は年に3回用意されていて、昇給もあります。
自信を持って働き、成長を実感できる環境が整っているのです。
世界中どこのスターバックスに行っても、従業員が楽しく使命感を持って働いているように見える根幹には、チャンスを与えてくれているスターバックスへの愛、そこで働いている自分への愛、があるからなのです。
ー従業員を大切にすることによって、スターバックスは魅力的な職場となり、優秀な人材を引きつけることができた。さらに従業員との間に信頼を築くことができ、結果として株主たちにとって長期的な価値を創り出すことになった。
引用:本書
(まさにスターバックスエクスペリエンス!)
⑤原点回帰をする勇気
今や90カ国以上、約30,000店舗を展開する大企業に成長したスターバックスも、もちろん万事順調だったわけではありません。
2007−2008年には、株価が40%下落するピンチに陥ります。情報漏洩、従業員550人の大量解雇、スターバックスの信頼の貯蓄は著しく無くなってきていました。
それは、短期間で店舗拡大を推し進めてしまった代償ともいえました。
スターバックスブランドのコモディティ化が進み、お客が離れてしまったのです。
(2017.六本木一丁目にて)
原因はいくつも考えられました。
効率性を重視し、自動エスプレッソマシンを導入したせいで
店舗から”挽きたてのコーヒーから立ち上る重厚な、豊かな香り”が失われてしまったこと。
店舗デザインの簡素化。コーヒーの香りを邪魔するチーズが使われたフードの提供。従業員の育成に目が届かなくなってしまったこと。
何よりも大切にしてきた、ロイヤリティが失われ始めたことに気づくのです。
写真:本書
ハワード氏は『もう一度原点に立ち戻り、従業員・コーヒーの質をあげよう』と、全米のスターバックス7,100店舗を一時閉店し、一斉に研修の時間にあてることを決断します。
しかしそれには、1日で6億円の損失が見込まれていることと、スターバックスの品質の低下を自分たち自身が認めていると考えらてしまう危険をもはらんでいました。
研修後、すぐに結果は出ませんでしたが、社運をかけて原点回帰を実践していった甲斐があり
2009年の利益は、1年前の−7億円から比べて大きく増益し、165億円となり周囲を驚かせました。スターバックスは危機から脱したのです。
ーコーヒーを完璧なものにする以上に、お客様のために私たちスターバックスで働くもの全員に必要な、仕事に対する情熱や献身を取り戻さなくてはならないと確信していた。これから先の長い道のりを進むには、まず一歩下がるしかなかったのだ。
引用:本書
写真:本書
誠実さ
『スターバックス再生物語 Onward』を8年ぶりに読んで改めて感じたことは、とにかくハワード・シュルツという人は、一貫して誠実であろうという努力を惜しみなくしてきた人である、ということです。
お客様に、株主に、コーヒー栽培農家に、従業員に、関わる業者全てに対して。
『たとえコストがかかっても倫理的に行動する』というフィロソフィはスターバックス創業当初から根幹にあります。
ハワード氏は、人の心を動かすスピーチ力に長けているのはもちろんのこと、
行動で示して周囲の人を安心させることを忘れません。
だからこそ、スターバックスに魅せられる人が多いのだろう、と感心させられました。
(2015.東銀座にて)
☆おまけ「イスラエルにスターバックスはない」
こんなに熱い文章(?)になってしまったのも、私がスターバックスでアルバイトしていたうちの1人だからである。
(久しぶりに訪れた際に社員さんが描いてくれた)
大学4年間のスターバックスでのアルバイトは、楽しくて楽しくて仕方なかった。
私は『1日を有意義に使える』という理由で、朝番を好んで週3-4で担当していた。
真冬なんて、まだ空も真っ暗で、鳥も起きていないなか店舗に向かうのである。
マネージャーと2人でOpen作業をして、6時間ほど働いてもまだ昼の12時!(これは毎回清々しい気分になった)
...コーヒーの香りを纏って、眠気で半目になりながら大学に通っていた。笑
(駅の改装で、開店・閉店作業を2回ずつ経験した)
オファリングボードの作成や、ペストリー(フード)陳列の考案、
時にはグループで作戦を練って、新商品の販売促進をしたり...とマーケティングに少しでも携わっていることが嬉しく、やりがいに繋がっていた。
そんな、思い入れのあるスターバックスが駐在先のイスラエルに1軒も無いことを知った時は、とてつもなく寂しい気持ちにさせられた。
なぜ、先進国のイスラエルに、ユダヤコミュニティの支援者がいるはずのイスラエルに、スターバックスが無いのか。
写真:『The grande coffee plan that failed』(Times of Israel 2014.8.13)
正確にいうと、2001年にイスラエルの都市”テルアビブ”に6店舗を展開させたものの、僅か2年で撤退してしまっていたのである。
一説には、既存のカフェがイスラエルに浸透しすぎていて、スターバックスの文化を根付かせることができなかった、と言われている。
イスラエルで有名なコーヒーチェーンといえばAroma Cafe
写真:『The grande coffee plan that failed』(Times of Israel 2014.8.13)
また、イスラエルは2000年に発生した第二次インティファーダから、情勢が不安定だったため
当時ユダヤ色が強いと言われていたスターバックスが、テロを警戒したのでは、という説もあるのである。
以前お世話になったイスラエル人のワインツアーガイドさんは
「スターバックスはイスラエル人に気に入られなかったのさ!」と得意げに語っていた。
(tzora wineryにて)
「経営の問題からの撤退」という発表のみにとどまったスターバックスの姿勢もあり、
"イスラエルからスターバックスが消えた問題”については
もはや、都市伝説のように語られているのである。
【参考】
・ハワード・シュルツ/ジョアンヌ・ゴードン『スターバックス再生物語 Onward 』(徳間書店、2011年)
・本田 健『ユダヤ人大富豪の教えⅡ〜さらに幸せな金持ちになる12のレッスン〜(大和書房、2006)
・武田 知弘『世界を変えたユダヤ商法』(ビジネス社、2019)
・Bill George『スタバCEOが"惨めな父"を受け入れるまで』(PRESIDENT 2017年12月4日号)https://president.jp/articles/-/24185?page=1
・森井久恵 『店舗でもデジタルでも考え方は同じ。スターバックス コーヒー ジャパンCMOに聞く、心を動かす体験の作り方|Experience Insights #2』(Cx Clips 2020.4.13)https://cxclip.karte.io/topic/experience_insights_02/
・『The grande coffee plan that failed』(Times of Israel 2014.8.13)
https://www.timesofisrael.com/the-grande-coffee-plan-that-failed/
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。トダラバ♡
著・写真 がんちゃん
いいなと思ったら応援しよう!
