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多様性は寒川を救えるか?@さむかわの明日を創るフォーラム

志柿 俊朗(植物病理学。東京大学特任研究員)

現代の諸問題を解決するには真に新しいアイデアが必要です。しかし、そのアイデアは限られた人だけが発信しています。社会の構成員すべてから様々なアイデアを掘り起こせば、いままで考えもしなかった新しいアイデアが生まれるかもしれません。その材料は人々の中にある多様性です。

多様性は地球上の生物の進化の過程でも常に活用されてきました。現代人は自然から切り離された環境に慣れきってしまっていて忘れがちですが、本来人類の文化は生物的多様性と切り離せないものです。

文化的、生物的多様性を守り、活用することが、困難な問題を解決するかもしれません。また、地方自治体がその土地にふさわしい文化・社会を創ることは多様性の尊重に他なりません。多様性を寒川から世界へ発信しましょう。

世界は人類史上かつて経験したことのない危機に直面しています。問題は気候変動、社会システムの崩壊、人口爆発、生物絶滅など多岐に亘ります。国連はその解決策として2030年までの目標としてSDGs (Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)を推進していますが、その実現のためのアイデア創出にはこれまでのような専門家任せでは不十分なことが認識されています。

それでは目標達成のためのアイデアはどうやったら出てくるのでしょうか。ヒントは多様性にあります。我々一人一人が幅広い文化的体験を受け入れ、建設的な話し合いの場を持てば、イノベーションを創出できるはずです。

女性、未成年、社会的弱者、シニア、外国人など、ややもすればメインストリームになれない人々の声の中に驚くべきアイデアが潜んでいるかも知れません。

また日本では近年、平成の大合併により、多くの市町村が消滅し、それによって地域文化の多様性が失われつつあります。幸い寒川町は独立を保ちましたが、今、寒川独自の文化やその強みを考え直さなければ町の魅力はなくなり、将来の人口減少が加速する結果になりかねません。地域的な多様性のなくなった国家では創造性が失われ、国家間の競争でも不利になります。

ICT Information and Communication Technology (情報通信技術)とゲノミクス
私のライフワークは食糧安全保障と植物遺伝資源の保護です。また、多様性の活用によって社会の諸問題解決に役立てることも私の役割だと思っています。実は私は2 年前までパプアニューギニアというオーストラリアの北にある熱帯の国で農業の研究員をやっていました。6年間の任期終了を前に考えたのは日本に帰国した際、どの町に住むのが自分のライフワークの実現に最も適しているかということでした。そこで、ネットで全国の市町村を調べ、農業の伝統と基盤がある、大消費地に近い、よそ者でも受け入れてくれる寛容性、行政面積が小さい、研究機関との連携がしやすい、等の条件から寒川町が浮かび上がったのです。寒川町はイノベーションで地域の発展を推し進める、日本のモデル自治体になる可能性を持っています。

タラノア対話
Sago Treeこの講演会は一年間にわたり全6回のシリーズで行います。今回の講演では私の専門とからめて、なぜ社会的・生物学的な多様性が我々の直面する問題の解決に重要なのか、寒川は日本を変革するモデル都市となれるかを、皆さんの考えも取り入れながらお話しさせていただきたいと思います。私の講演の後で簡単なグループ討論を考えております。これには国連や日本政府でも採用されているタラノア対話を取り入れます。これは相手を非難することなく対話を進めるという簡単なルールに基づいています。

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