社会教育・生涯学習入門(凱風)

社会教育・生涯学習入門(凱風)

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  • 社会教育・生涯学習入門(凱風)

    このマガジンは、(仕事柄)お話ししたり、書いたりすることの多い「社会教育・生涯学習」についてできるだけわかりやすく解説しようとしたものです。これまで発表してきたもの(ここでは草稿段階のものを掲載します)や研究ノート(講義録)のようなものが中心となりますが、初めての方にも「おもしろく」読んでいただけるようなものを集めました。 背景は、新型コロナ研究と対応に尽力されている感染症研究者・水谷哲也先生(東京農工大学)の「アマビエ」です。敬意を表する意味で使わせていただきます。

最近の記事

学校一斉休校は正しかったのか?(ちょい読み)

連休明けの5/6に刊行いたしました。 https://honto.jp/netstore/pd-book_30964683.html 水谷哲也・朝岡幸彦編著『学校一斉休校は正しかったのか?ー 検証・新型コロナと教育』(筑波書房) 第1章 学校一斉休校は正しかったのか 朝岡幸彦・岩松真紀(草稿)*引用は書籍からお願いいたします。 1 学校一斉休校はどのように評価されたのか  私たちが生きる「この世界」(2020年〜2021年の世界)における喫緊の課題が、新型コロナウイルス感

    • 口伝(くでん)論(2)ーきつねに騙される力

      (『ESD研究』2013年2月 通巻9号 東京農工大学農学部環境教育学研究室・水資源計画学研究室・共生教育研究室、所収) 写真=K.Koyama  かつて日本人は「キツネに騙される」と思い込んでいた。内山節は1965年を境に日本人はキツネに騙されなくなったと述べている(内山、2007)。確かに日本人にとってキツネは「ある程度そのしぐさなどに感情移入することが可能で、同時に人間とはかなりちがった能力を有している」不思議な動物の最たるものであったといえる。キツネには特別な能力が

      • 【書評】野元弘幸編著「社会教育における防災教育の展開」(日本教育学会『教育学研究』第86巻第4号・2019年12月)

        いま、社会教育学研究において喫緊の課題とされることは、公民館・図書館・博物館等の社会教育施設の所管を教育委員会から「特例」として首長部局に移管することを認めた、第9次地方分権一括法の評価と対応である。社会教育推進全国協議会(社全協)や図書館問題研究会(図問研)などの社会教育関係団体がいち早く反対声明を公表する中で、この問題をもう一つの側面から評価する視点が本書にはある。 2018年現在、全国には9万23館の社会教育施設(うち1万3993館が公民館、3360館が図書館、1287

        • 【書評】山名淳・矢野智司編著「災害と厄災の記憶を伝える − 教育学は何ができるのか」(図書新聞・2017年9月23日付)

          山名淳・矢野智司編著「災害と厄災の記憶を伝える − 教育学は何ができるのか」勁草書房 4000円+税  あの日から六年がたった。東日本大震災と福島第一原発事故に、おおくの日本人が向き合わざるをえなかった。その中には、教師や教育学者といった教育に関わる人たちもいる。「教育学は何ができるのか」というサブタイトルに、本書を執筆した教育哲学者たちの向き合い方が集約されている。共同研究の出発点が阪神・淡路大震災(1995年)に関わる記憶の伝承と教育の問題であり、「厄災の教育学」(矢野

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        • 社会教育・生涯学習入門(凱風)
          8本

        記事

          口伝(くでん)論(1)ー人は言葉以外からも学ぶ

          多様な教育・学習の方法を学ぶ 学校を中心に展開されている定型教育は、教育方法としては比較的に新しいものであるといえます。学校誕生以前の教育は、非定型教育・不定形教育などとも呼ばれ、「社会に埋め込まれた学習」と考えることができます。こうした教育・学習方法は現代社会にも多く存在し、教育の本質を考えるうえで重要な役割を果たしているとも考えられます。 ここでは、「口伝(くでん)」をはじめとした学校以前の教育方法に注目するとともに、unlearnなどの現代教育を乗り越えることが期待

          口伝(くでん)論(1)ー人は言葉以外からも学ぶ

          学校存続の意義と“ふるさと”の未来(朝岡幸彦・石山雄貴、『月刊社会教育』2018年9月号No.748の原稿の草稿)

          はじめに  いま学校の存続をめぐって、地域は大きく揺れている。これまでにも地域の過疎化と子どもの減少を理由に、僻地校を統廃合する動きは見られた。しかしながら、いま私たちが向きあっている学校統廃合問題は、平成の大合併による周辺地域(旧町村部)の急速な人口減少と「増田レポート」に代表される消滅可能性都市という予測などを背景に、総務省が各自治体に策定を求めた公共施設等管理計画(二〇一四年)のなかで進められているものである。これに、学校教育法の改正(二〇一六年)による小中一貫の「義

          学校存続の意義と“ふるさと”の未来(朝岡幸彦・石山雄貴、『月刊社会教育』2018年9月号No.748の原稿の草稿)

          「自治体戦略二〇四〇構想」と社会教育をめぐる課題(『月刊社会教育』2019年9月号 No.760の原稿の草稿)

          はじめに  総務省は、自治体戦略二〇四〇構想研究会を立ち上げ、二度にわたって報告書(第一次報告二〇一八年三月、第二次次報告=六月)を公表している(二〇四〇構想)。高齢者人口がピークを迎える二〇四〇年に向けて、①市町村行政のフルセット主義の見直し、②都道府県と市町村の自治体行政の二層制の柔軟化、③東京圏全体のサービス供給体制の再構築、④多様な働き方ができる受け皿づくり、⑤ICTを活用した自治体行政システムの標準化・共同化などの基本方向(第一次報告)を前提として、①スマート自治

          「自治体戦略二〇四〇構想」と社会教育をめぐる課題(『月刊社会教育』2019年9月号 No.760の原稿の草稿)

          「新しい生活様式」のもとでの社会教育施設「再開」ガイドライン− 市民や子どもの「学びの場」をどう保障するのか

          (『住民と自治』2020年7月号に掲載された原稿の草稿) 「私たちの目の前にあるのは、命か自由かの選択ではない。命を守るために他者から自由に学び、みずから自由に表現し、互いに協力し合う道筋をつくっていくこと。それこそが、この緊急事態を乗り越えていくために必要なのだ、と私たちは考える。」(日本ペンクラブ声明『緊急事態だからこそ、自由を』(抜粋)、2020年4月7日 一般社団法人日本ペンクラブ会長 吉岡忍)  公民館における「他者から自由に学び、みずから自由に表現」することが

          「新しい生活様式」のもとでの社会教育施設「再開」ガイドライン− 市民や子どもの「学びの場」をどう保障するのか