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【短篇】小さな大きな変化 ~地域図書館の新しい風~


第一章:古い図書館、新しい司書

「また来てくれたんですね、中村さん」

ベテラン司書の山本さんが、新入りの中村舞に声をかけた。
舞は大手書店チェーンで10年間、児童書売り場のマネージャーを務めてきた。今年、縁あって郊外の小さな市立図書館に転職してきたばかりだ。

「はい。実は気になることがあって...」

書架の間を歩きながら、舞は丁寧にメモを取っていた。

第二章:新しい発見

職員会議室。舞は緊張した面持ちで立ち上がった。

「実は、この図書館には素晴らしい児童書がたくさんあるんです。でも...」 「でも?」
と館長。

「お子さんたちが本と出会うきっかけが少ないように感じます。書店での経験では、子どもたちは自分の"好き"から本の世界に入っていきます」

舞は続けた。
「例えば、恐竜が好きな子には科学の本を、お絵かきが好きな子には美術の本を。そういう"入り口"を作れないでしょうか」

第三章:アイデアの実現

「中村さん、このアイデアはすごいわ」
山本さんが、舞の企画書に目を通しながら言った。

それは「君の"好き"からはじめよう」という企画だった。

  • 趣味や関心から本を探せる「ワクワク本マップ」の作成

  • 読書通帳の導入(子どもたちが読んだ本を記録)

  • 月替わりの「発見コーナー」設置

「書店での経験を活かしつつ、図書館だからこそできることを考えました」

第四章:変化の兆し

実施から2ヶ月。

「ねぇ、今度は何の本読もうかな」
「僕、プログラミングの本も面白かったよ!」

休日の図書館は、子どもたちの声で賑わっていた。

「中村さん、児童書の貸出数が30%も増えましたよ」
館長が嬉しそうに報告する。

「でも、まだ始まりですね」
舞は新しいアイデアを温めながら、子どもたちの様子を見守った。

終章:広がる可能性

夕暮れ時の図書館。最後の利用者が帰った後、舞は書架の整理をしながら考えていた。

プロフェッショナルの視点は、場所が変わっても必ず活きる。書店で培った経験は、図書館という新しいフィールドで、また違う形で花開いた。

「次は、お年寄りの方々のための企画も考えてみようかな」

窓の外では、夕日が図書館に温かな光を投げかけていた。


この物語から学べること:

  1. 異なる業界の経験は、新しい場所で価値ある視点となる

  2. プロフェッショナルとは、経験を活かしながら新しい価値を生み出す人

  3. 小さな変化から、大きな成果は生まれる

  4. 組織の成長には、新しい視点を受け入れる柔軟さが必要

  5. 利用者目線と専門知識の組み合わせが、サービスを進化させる


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